大衆演劇豆辞典

大衆演劇にまつわるあれこれの言葉。
お芝居の中に出てくる言葉から、大衆演劇独特の言葉まで、知っておくと大衆演劇がより楽しめます。このページでは「ま」行・「や」行・「ら」行・「わ」行の用語について解説します。演目や題材については演目豆事典をご参照ください。

  • まく
    1. 舞台において幕が開いてから、休憩や芝居終了のため幕が閉じるまでの間。幕間をはさんで二幕四場のような使い方をします。歌舞伎では段という言い方をします。
    2. 劇場において、間を仕切るために使われる大きく重い布です。大黒幕ホリゾント幕等様々な種類があります。
  • 幕間
    まくあい/まくま

    二幕以上の舞台の場合、間の休憩時間を指します。この間は文字通り休憩になることもあれば、役者さんが登場して口上を述べたり、客席を廻って前売り券や劇団グッズの販売を行ったりすることもあります。

  • 股旅
    またたび

    侠客博徒、芸人や芸者が各地を旅することです。股旅物とは、そういった侠客や博徒を主人公とした演目で、大衆演劇における人気ジャンルです。三波春夫さんによると、昭和4年(1929年)に書かれた長谷川伸の作品「股旅草鞋」に由来するそうで、疲れをマタタビの実を食べていやしながら旅を続ける様を表したものだそうです。

    江戸時代には統制が厳しく、勝手に地元を離れることは困難であり、また明治以降でも旅行には大きな費用と勇気が必要でした。そうしたしがらみから自由な股旅物が人々に受けたのはそういった面があるからかも知れません。

    三度笠に、しまの道中合羽、股引に脚絆(きゃはん、すねの部分に巻く川や布製のもの)といったいわゆる「股旅姿」は股旅物の定番です。

    股旅姿
  • 俎帯
    まないたおび

    花魁が手に持つような、前の部分に大きくたらした帯です。

  • 間夫
    まぶ

    遊女の情夫や本当の恋人を指します。

  • 廻り舞台
    まわりぶたい

    舞台に設置された、回転式の床のことです。大掛かりな施設なので、設置してある劇場はあまり多くなく、センターにはありません。それはつまり、同じ芝居でも場所によって演出が変わってくるということでもあります。江戸時代には人力で回しており、今でも古い劇場では人力です。

  • 身売り
    みうり

    娘を遊郭などに売ることです。多くの場合は年季奉公という形であり、年季が明けるか、身代金を払うことができれば自由の身となれましたが、実際にはそこにいたる前に亡くなる事も多くありました。

    花魁などの高級遊女の場合は、大店の主人などに身代金を支払ってもらって遊郭を辞め、その妻となる「身請(みうけ)」が行われることがありました。

  • 見得
    みえ

    役者さんが重要なセリフを言うときなどに、ポーズを決めてぐっと客席をにらむことです。大衆演劇では「」をきめるタイミングにあたります。

  • 見切れる
    みきれる

    役者さんや小道具など、本来は見えては行けないものが見えてしまうことです。

  • みかじめ料
    みかじめりょう

    やくざや侠客が、縄張りの中で営業している店から取り上げる営業料。

  • 身投げ
    みなげ

    川などに行われる投身自殺を指します。

  • 三波春夫
    みなみはるお

    昭和時代から平成にかけて活躍した演歌歌手・浪曲師です。「世界の国からこんにちわ」や「チャンチキおけさ」などで有名ですが、「俵星玄蕃」や「沓掛時次郎」などの大衆演劇でも使われる題材を歌い、大ヒットさせた人でもあります。その歌謡曲と浪曲を融合させた「歌謡浪曲」は舞踊ショー歌謡ショーでも人気の高い唄となっています。

  • ミニショー
    みにしょー

    20分から30分程度の短いショーです。

  • 無宿
    むしゅく

    江戸時代、人別帳からはずれた人間を指します。無宿とは家が無いという意味で、アウトロー扱いでした。

  • メイク
    めいく

    大衆演劇の役者さんの舞台化粧は、自分で行うのが原則です。このため大きな化粧道具を自分で持ち歩き、自分なりの方法を身につけてメイクをする必要があります。しかもショーと芝居の間に手早く行うのですから、それも手早く行えなければなりません。そんな座長さん達のメイクの様子はこちらでご覧下さい

  • 明治時代
    めいじじだい

    明治天皇が即位した1868年から、1912年の崩御までの期間です。江戸時代に比べると少ないですが、それでも様々な演目が明治時代を舞台としています。武士は士族となり、江戸は東京となり、多くの制度が変わりましたが、まだ江戸時代の名残が残っていた時代です。

  • 面積
    めんせき

    大衆演劇の舞台となる江戸時代に使われていた面積の単位には以下のようなものがあります。反や坪は現在でも使われることが多いです。

    勺(しゃく)
    0.033平方メートル程度です。
    合(ごう)
    0.33平方メートル程度です。
    坪(つぼ)
    3.3平方メートル程度です。山林などの場合には歩(ぶ)と言います。
    畝(せ)
    30坪(歩)、つまり約99平方メートルです。
    反(たん)
    10畝、つまり約991平方メートルです。ただし布地の場合の反は、幅9寸5分の布の長さが3丈(じょう)以上のものを1反と数えますが、用途によって微妙に長さは異なります。
    町(ちょう)
    10反、つまり約9910平方メートルです。
    畳(じょう)
    畳一枚の広さ、江戸など関東で使われる江戸間なら2尺9寸×5尺8寸(880×1760mm)、京都など関西地方で使われる京間なら3尺1寸5分×6尺3寸(955×1910mm)が基本となります。
  • もぎり
    もぎり

    劇場の入り口などで、チケットの受け取りを行う係。木戸番とも言います。

  • 森の石松
    もりのいしまつ

    清水次郎長の子分で、喧嘩には滅法強いがどこか抜けているキャラクターです。「江戸っ子だってねえ、寿司を食いねえ」というセリフは有名です。

  • 矢場
    やば
    的屋ともいいます。弓矢をつかって的に当て、商品がもらえる江戸時代の遊び場所です。客の放つ矢をかいくぐって 落ちた矢を拾う矢取女という遊女もいるなどあまり健全な場所と思われていませんでした。そのため「ヤバい」という言葉の発祥となったと言われています。
  • やま
    大衆演劇の芝居に置ける盛り上がり場所、見せ場のことです。ここをどう見せるかで役者や劇団の評価が変わると言っても過言ではありません。ここをもりあげることを「山をあげる」といいます。
  • 山台
    やまだい
    高さ1尺4寸(約42cm)の台。役者さんが腰掛ける場所などに使う、大道具の一つです。
  • ゆき
    大衆演劇の舞台で降る雪は、多くは紙を三角形に切ったものです。しかしそれが不思議と情感をかもし出します。
  • 遊郭
    ゆうかく
    遊女を集め、男性の遊興施設となった店が集まる場所。幕府によって公認された場所を指し、江戸の吉原、京都の島原、大阪の新町、長崎の丸山などが有名です。華麗な見た目と悲しい運命が交錯する場所として、様々な演目の舞台となっています。公認されていない場所は岡場所(おかばしょ)と言います。
  • 遊女
    ゆうじょ
    遊郭で客の相手をする女性。娼妓。多くは身売りによって遊女屋に売られた存在でした。花魁のように出会うことにすら大金がかかる高級遊女から、わずかな金で買われる端女郎までおり、大きな格差もありました。また公認された遊郭にいない遊女としては、風呂屋の湯女(ゆな)、茶屋の茶屋女、宿場の飯盛女(めしもりおんな)、私娼である夜鷹(よたか)などがいます。
  • 寄場
    よせば
    江戸時代、比較的軽い罪を犯した者達を働かせた場所で、更生や就業支援の意味もあったため、近代的な刑務所のさきがけとも言われます。人足寄場(にんそくよせば)ともいいます。寄場送りといえばつかまって、寄場に送られることを言います。火付盗賊改の支配下にあり、鬼平こと長谷川平蔵宣以の発案でつくられました。
  • 四つ綱
    よつづな

    劇場の四隅に綱をかけ、その上を綱渡りするというケレンの中でも大技です。

  • 夜鳴き蕎麦
    よなきそば
    江戸時代、夜間に町を回った蕎麦の屋台です。一杯12文から16文であることが多いです。
  • 与力
    よりき
    大衆演劇の芝居に登場する与力とは、奉行所の役人のうち、奉行の下にあって同心の上にあたる、比較的身分が高い役職です。馬に乗ることが許される、銭湯で早朝のみ女湯に入れるなどの「特権」を持っていました。江戸の三男(力士、火消しの頭、与力)といわれるいい男の象徴でもありました。

  • 落語
    らくご

    江戸時代から伝わる、演者の語りを聞かせる演芸です。文七元結や牡丹灯籠など、落語が元になった大衆演劇の演目も意外とあります。泣かせる人情噺や怪談が上演されることが多いようです。

    また逆に大衆演劇の世界を落語化したものもあります。六代目桂文枝(桂三枝)さんの創作落語、「コテコテ劇場 男の花道」はいわゆる「クサい芝居」の大衆演劇界を題材とした作品です。この作品を演じるにあたって、文枝さんは実際に劇団の方から指導を受けたそうです。

  • ラストショー
    らすとしょー
    その回の公演の最後を飾るショーです。ミニショーなどとくらべ、大きく盛り上がるショーが繰り広げられます。
  • レイ
    れい
    一部の劇場では、劇場の売店で、造花製のレイを売っていることがあります。これはショーの際に役者さんの首にかける、一種のお花の代用として使われます。お花とくらべると比較的安価です。
  • 浪曲
    ろうきょく
    浪花節(なにわぶし)とも言い、明治時代に始まった演芸で、基本的に講談を語り、盛り上がる部分では唄を歌うものです。桃中軒雲右衛門や二代目広沢虎造が知られます。講談と同様に題材の多くが大衆演劇でも演じられており、大衆演劇のルーツの一つとなった節劇は、浪曲にあわせて役者さんが演技を行うものでした。
  • 老中
    ろうじゅう

    江戸幕府において、将軍を補佐するメンバーで、現在の内閣のような存在でした。徳川家に昔から仕える譜代の大名しか就任できませんでした。庶民にとってはとてつもない権力者です。

    最も上席の老中は勝手掛老中とよばれる財政担当の老中で、老中首座とも呼ばれます。

  • ロビー
    ろびー
    劇場入り口から客席までの間にある、やや広くなっている場所です。役者さんへの花やポスター、別の公演の予定など、意外と見所はあります。終演後には送り出しが行われることもあります。

  • 若年寄
    わかどしより
    江戸幕府において、老中に次ぐ高官です。旗本や江戸城内、江戸のインフラなどを統括していました。若いのに年寄りっぽい人ではたぶんありません。
  • 笑い
    わらい
    大衆演劇にもかかせない要素です。ショーの合間のショートコントやくすぐり、口上、そして芝居の中のセリフにアドリブも。笑いがあるから涙が引き立ち、涙が有るから笑いも引き立つのです。

参考文献

  • 「芝居通信別冊 大衆演劇座長名鑑2003」オフィス・ネコ(2003年)
  • ぴあ伝統芸能入門シリーズ「大衆演劇お作法」ぴあ(2004年)
  • 木丸みさき「私の舞台は舞台裏 大衆演劇裏方日記」メディアファクトリー(2014年)
  • 宮本真希「大衆演劇における『お花』とは何か―見せることの意味―」(2013年)
  • 鵜飼正樹「大衆演劇はグローバル化の時代をどう生き抜くか?」(2011年)
  • 「江戸時代の1両は今のいくら?―昔のお金の現在価値― 」 日本銀行金融研究所貨幣博物館