旅芝居女優名鑑第8回座長藤間美香~花組むらさき~(2/6)
第2章
兄とともに立役として鍛えられる
大衆演劇の子役は、学校に舞台にと大忙し。美香も毎月転校を繰り返しながら舞台に立っていました。
ある時、兄ののぼるが劇団に戻ってきて、1日交代で舞台に出ることに。
「兄が朝から学校に行って最後までを授業を受け、その次の日は3時間目くらいで帰る。兄が最後まで授業を受ける日は、私が3時間目で帰ってきて、舞台に出る。私が最後まで授業を受ける日は、兄が3時間目で帰ってきて舞台に出る…というふうに、毎日どちらか1人が舞台に出るようにしたんです」
と言うことは、同じお芝居でも日によって子役が違う、つまりダブルキャスト制だった?
「そうですね。2人ともどの役も出来る。でも兄も私も学校が嫌いだったので、このやり方は割と早く終わりましたが(笑)」
なぜ学校が嫌いだったのでしょう。
「大人ばかりの世界から、いきなり子供の世界に行かされても話が噛み合わないんです。ゲームやテレビとか、知らない話題ばかり。同世代の子と話が合わないんです。
加えて私は極度の人見知りなので… 化粧したら誰にでも話しかけることができるんですけど、化粧を落としたら無理。いまだにお店で注文することにできないんですよ(笑)」
普段とは違う自分になれる。そんな舞台が、美香にとっては生きやすい場所だったのかもしれません。
「小さい頃から舞台が好きで、他のことはあまり考えなかったですね。ずっとこの仕事をしていてよかったと思っています。
兄と交代でやっていたので、兄が怒られているのを横から見て『あ、これしたらあかんのや』って覚えました。ずる賢い子供だったんです(笑)。
子供の時の方が大きな失敗はしてなくて、中途半端な年齢になってからの方がやらかしましたね(笑)。
覚えているのでは、兄との相舞踊『棒縛』で、サイズの合わないかつらをかぶっていて、ぽーんと飛んでったことがあります。大爆笑ですよね」
兄と交代制だったこともあってか、娘役より立役が多かったそう。
「基本、立役でした。娘役も演ってたことは演ってたんですけど。今は妹が娘役をするようになったので、月の半分以上は立役。私も立役の方が好きですね」
あまり興味がなかったという舞踊の方は…
「基本的なことは祖父(二代目南條すゝむ)に教えてもらい、あとは見様見真似で覚えました。舞踊はあまり好きではなくて、ショーも出たくなかったんです。
お芝居ぽく踊ればなんとかなるかな?と、お芝居の感覚で踊るようになってから、少しずつ好きになっていきました。
石川さゆりさん、島津亜矢さんなど、お芝居仕立ての落ち着いた曲が好きですね。
大きく変わったのは妹が出るようになった時です。同じ舞台に立つ以上はライバルなので、彩姫が踊るんやったら私も踊る!と、頑張れるようになりました。その点は妹に感謝ですね(笑)」
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