KANGEKI2022年3月号Vol.66

木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第13回真珀達也~三桝屋座長~後編

劇場:スパリゾート雄琴 あがりゃんせ
木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇! 第13回 真珀達也 ~三桝屋座長~ 後編

大衆演劇の劇団の多くは座長とその家族で構成されている。 役者の家系に生まれた、いわゆる幕内の人間が過半数を占める中、一般家庭から役者になった人もいる。 何がきっかけでこの世界と出会い、日々過ごしているのだろうか? 劇場オープンから5年、木戸番兼劇団のお世話係を務めてきた著者が綴る実録エッセイ。

第13回は三桝屋座長 真珀達也(ましろ たつや)編の後編です!

座長 真珀達也ましろ たつや

 

前編はこちら

稲吉祐希(真珀達也)にとって、プロの歌手になることは子供の時からの憧れをこえて悲願に近かった。 その夢が、手に届くところまで来ている。CDもできている。プロダクションも決まった。

いくら憧れている市川謙太郎座長の誘いでも、CDデビューはもう断れないところまで来ている。
断れば自分の信用に傷がつく。

最後の話し合いの時が来た。
「自分は芝居も踊りもしたことがない。それでもいいのでしょうか?」
「そんなことはこちらで面倒をみる。大丈夫だ」

そして座長の最後の言葉があった。
「君には大衆演劇の一流役者になる可能性を感じる。だから一緒に、日本一の劇団を作ろう」

一流役者、日本一の劇団、この言葉で祐希は落ちた。

祐希はプロダクションに詫びを入れて、晴れて「三桝屋」の団員となった。
19歳の春である。

いよいよ九州を離れる時が来た。座長が、広島から北九州まで車で迎えに来てくれた。 祐希にとっては、北九州から広島までの4時間は、人生を決める濃密な時間であった。

座長 真珀達也ましろ たつや

広島に到着すると、すぐに劇団と合流する。
祐希は、どんな人間に対しても物怖じしない性格である。先輩の座員たちとも、すぐに打ち解けた。

劇団は集団生活をしている。いわば強大な家族である。
その頂点に座長がいる。座長の指示は絶対である。

今日から祐希も新人の役者である。
同じ役者といっても腹からの役者(親が役者)の場合は、3歳から子役に出たりして時間をかけて立派な役者になるが、座長は祐希については、19歳という年齢を考え、実践でどんどん鍛えていく方針をとった。

次の日から先輩の指示で下働きがはじまる。

先輩方の化粧前の整理や着物、帯、履物の準備など、一日追い回される。
その間に、着物の着方を覚え、化粧については基本だけを教えてもらい、後はひたすら自分の顔を使っての練習である。

大衆演劇の役者の修行は、着物、化粧、そして、かつらと続く。
数か月の修行の終わりが見えてくると、座長から芸名をもらう。 祐希は、晴れて「真珀達也(ましろ たつや)」となって、本格的に役者としての仕事をする。 つまり、舞台で芝居をし、踊るのである。

そして、デビューの日がやってきた。

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