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KANGEKI2022年4月号Vol.67

舞台裏の匠たち第4回「夢の中にも照明が出てくる」劇団炎舞投光橘みつおさん

劇場:オーエス劇場取材日:2022年2月7日
舞台裏の匠たち 第4回 「夢の中にも照明が出てくる」 劇団炎舞 投光 橘みつおさん

大衆演劇の舞台を支えるスゴ腕の方がたを紹介するシリーズ、第4回は劇団炎舞の投光(照明担当)橘みつおさんです。

劇団炎舞に裏方として入団して32年になるというみつおさんは、人呼んで「光の職人」。役者の動きにピタリ!と呼応する正確無比な照明は、お客様のみならず同業の間でも定評があり、劇団の魅力を引き出す大きな力になっています。

2月公演のオーエス劇場にて、終演後の休憩時間を拝借し、みつおさんならではの照明の工夫について伺いました。

橘みつおさん

1. 大衆演劇と劇団との出会い

きっかけは姫路のスナック

 

まずは入団のきっかけから教えていただけますか。以前SPICEのインタビューで、スナックのママさんに勧められてと言っておられましたね。

橘みつお(以下 みつお)

そう。その時、トンネル工事で、姫路の飯場に寝泊りしとって、たまの休みに行ったんです。姫路の駅前のね。そこのママさんに『今、健康ランドに可愛い男の子の女形がいるから観に行ったら』って教えてもらって…橘炎鷹座長のことなんやけどね。

座長 橘炎鷹たちばな えんおう
(2022.2. 11オーエス劇場)
 

それが劇団との出会いだったのですね。

みつお

大衆演劇なんて全然知らなかったし、観たこともなかったんやけど。その月に何度か観に行って、劇団のみんなと喋るようになって、当時座長やったボス(橘魅乃瑠・炎鷹座長の父)から良かったらやってみんかーって誘われて。役者は無理だけど裏方やったらやってみたいですって。

 

では初観劇から翌月にもう入団されたという

みつお

うん。面白そう、やってみたいなあって、特に気負いはなかったね。独り身だし、これまでも住み込みで働いたこともあったし、旅にも慣れていたから。

 

初めて大衆演劇お芝居やショーを観て、どういうところに惹かれましたか

みつお

やっぱりボスがね。あーかっこいいなあって。

ボス 橘魅乃瑠たちばな みのる
(2016.10.19 羅い舞座京橋劇場)

2. 全くの独学。試行錯誤で機材もカスタム

照明担当になる

 

裏方の仕事は、具体的にどんなことから始められたのですか

みつお

はじめは幕引きとかいろいろ。着付けまではしてないけど、着物をたたんだりとかは、やってたね。それからすぐに照明担当になった。ボスのお母さんがやってたのを、引き継いでね。

昔の投光機は手元で操作出来るから、座ってでも出来たんだけど、今のは操作レバーが機械の上にあるでしょう。だから座っては出来ないんよ。

2本の大型スポットライト。
通常はこの真ん中に小型のLEDライトが設置され、3本のスポットを操る
みつおさんの立ち位置。座布団など柔らかいものの上に立つと足が楽なんだそう
 

引継ぎの時、操作について教えてもらったりは

みつお

ううん、全然。最初から任されて、自分で考えてやってる。

 

では全く独学で!
このスポットライトはいつから使っておられるのですか

みつお

これはね、10年くらいかな?4台め。使いやすいよ。

 

色のフィルターがたくさんありますね

みつお

これだけ大きいと本当は1台に1人ずつ付くの。でも1人で2台ともやらないかんから、こう、スポットの真ん中に立ってね。操作するのにこっち(左側のスポットのフィルターの操作部)を内側に向けてる。外側にあったら手が届かないから。

よく見ると、フィルターの表面の形状が違います。

右側(舞台下手)のスポット
こちらがみつおさんが入れ替えた左側(舞台上手)のフィルター。
色フィルターを反転させ、操作レバーを内にむけている
 

えっ? では、これはもともとこういう形ではなくて、みつおさんが入れ替えたのですか?

みつお

そう。だからこうして紐で縛っておかないとグラグラするの。こっち(右側)のやつはちゃんとレールに入ってるけど、こっち(左側)のは入ってない。

みつお

あとね、照明を外さず出来るのは『これ』があるから。これがあったら人間を外さない。これがなかったら、できない。

「これ」とは、操作レバーに延長線のようにくっつけられた針金のこと。

赤で囲んだ部分がみつおさんが付けた針金

自分で勝手につけた(笑)

みつお

2台同時に動かすと、どちらか絶対外す。こっちを動かしてると、片方がグラグラするでしょ。でも、これ(針金)を持つと安定させられるから、絶対外さない。これがあるからちょっとはマシなのが見せられるかな。だからこれは俺の命(笑)。

この針金があれば手元に近い位置で操作ができる
2本のスポットライトを自在に操作するみつおさん。使いやすいようにカスタムされた機械はもはやみつおさんの身体の一部のよう。
 

このレバーにぶら下げられているのは

みつお

これは『重り』ね。機械がぬくもったら勝手にレバーが降りる時があるから、こうして重りをつけてるの。劇団の道具箱に入ってたのを適当に付けただけ(笑)。

レバーが温まったら降りてくるのを防ぐ「重り」。どこの鍵かは分からない(笑)
水色のポーチは工具箱。
常に細かい調整をしている
箱の中身はスペアのライト。
9ヶ月で交換。1本なんと5万円!(へへ~~っ)
みつお

本当はもう1本LEDのスポットがあるんやけど、ここでは電圧が足りないので2本だけ。いつもは3本でやってる。

スポット3本のセッティング
(2022.3.12 紀の国ぶらくり劇場)

次ページはさらに照明の工夫に迫ります!

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