KANGEKI2021年11月号Vol.63

木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第10回寿かなた前編(4/4)

劇場:スパリゾート雄琴 あがりゃんせ
木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇! 第10回 寿かなた 前編(4/4)

恵は、長野県諏訪市にある看護学校に通い始めた。准看護師は、専門性を持たず広く オールマイティに学ぶ。 2年で卒業である。

1年目は、学科を中心に、教室で授業を受けるが、2年目からは、実習が中心になる。 人の命を預かる仕事なので、教官の指導は、とても厳しい。

その厳しさには、恵は平気だったが、ただ、学校に行きながら、自分の生活も維持していかなければならない。そこでバイトを2つ掛け持ちでやった。

1つは精神科の開業医、もう1つはデイサービスである。1週間を休みなく働いた。そんな生活が2年間続いた。看護の勉強とバイト、夢中で駆け抜けた看護学生の 時代だった。

学校から「卒業予定書」が看護師試験会場に送られている時に、恵は看護学校を晴れて卒業。看護師試験をうける。 一発合格!

いよいよ新米の准看護師の誕生である。 お世話になったデイサービスの会社に、1年間「お礼奉公」をして就職である。

寿かなた
(2020.6.7 あがりゃんせ劇場)

勤務先はすぐに決まった。安曇野のある病院の人工透析科であった。 人工透析とは医療行為の一つで、腎臓の機能を人工的に代替することである。普通は「透析」と呼ばれている。

腎不全を患った患者が、尿毒症になるのを防止するには外的な手段で、血液の「老廃物除去」「電気分解維持」「水分量維持」を行う必要がある。その医療を行うのが恵の仕事である。

仕事を始めてみると、恵の看護師仲間での評価は良くはなく、辛辣な仲間に「恵はナースにはむいていない」と言われたこともあったが、周りのサポートでなんとか続いた。

腎臓に疾患のある患者に共通して言えることは、食べすぎや運動不足といった、長年の生活習慣が原因になることが多いので、恵は、患者に普段の生活についての注意をしながら、寄り添った。

そして、3年の月日が流れ、恵の身にとんでもないことが起きる。

さて、その時、恵はどうしたのか。

(次号に続く)

寿かなた
(2020.6.25 あがりゃんせ劇場)

プロフィール

小野直人

小野直人おの なおと

生年月日 1953年

1953年 滋賀県大津市生まれ。日本大学・農獣医学部卒業。
小野牧場オーナー、総合学習塾 啓数塾塾長、構成作家(テレビ、ラジオ)を経て、現在は、あがりゃんせ劇場の木戸番として、多くの大衆演劇の劇団や幅白い大衆演劇のファンと交流をもつ。「KANGEKI」で「木戸番のエッセイ」を連載中。

劇団情報

劇団寿

2013年8月、黒潮劇団に所属していた寿翔聖が、新潟県の三条東映にて旗揚げ。「お客様に笑顔になっていただきたい」をモットーとし、少人数ながら太鼓ショーやオリジナルのお芝居などバラエティ豊かな舞台を展開し、ファンをつかむ。2017年9月に寿美空が若座長襲名。こどもたちの成長にも期待がかかる。

劇団寿公演予定

劇場情報

スパリゾート雄琴 あがりゃんせ

滋賀県大津市苗鹿3丁目9-5

スパリゾート雄琴 あがりゃんせ公演予定