KANGEKI2023年1・2月合併号Vol.75

木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第22回寿珠里~劇団寿~前編(2/3)

劇場:スパリゾート雄琴 あがりゃんせ
木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇! 第22回 寿珠里 ~劇団寿~ 前編(2/3)

夜の部になると、いろんなお客さんが来るのであるが、整理番号の1番は常に常連であるUさんが入手する。

彼の場合は、立命館大学の経営学部を卒業としたあと製薬会社に就職。 プロパーとなる。 プロパーとは病院や医者に自社の薬を紹介したり、売上げたりする仕事である。

ある日、Uさんが営業中に知り合った医者に、日本ではまだまだ珍しかった「人工透析」についての紹介を受けた。

興味を持った彼は「人工透析」の取り扱い資格獲得のために看護学校に通った。 結局、Uさんは看護師になって「人工透析」について、各病院を回って普及に務めたのである。

その「人工透析」の普及は成功し、彼のおかげで各地に「人工透析」は浸透した。 彼はそのノウハウを医療器械の販売に使って成功した。 彼は医療従事者というよりも、実業家だと私は思っている。

あがりゃんせ劇場

整理番号の2番を死守する(?)Tさん。彼の場合は京都大学の法学部を卒業したあと、日本でも有名な商社に就職。 そこで彼は、非鉄金属の営業をすることになる。非鉄金属とは亜鉛や鉛、錫などである。彼は専ら錫を求めて、世界と取引した。

インドネシアやマレーシア、中国などの錫を、相場変動リスクを避けながら大量に輸入した。その錫を日本の製造会社に販売する。その錫が、はんだやブリキ板、缶詰になるのである。

そのあと、会社生活の最後の10年間、彼は監査部で会社全体のコンプライアンスや社員が働きやすい職場づくりのための機能改善を押し進め、会社の為に尽くした。

この二人については、まさに昔のコマーシャルにあった「24時間働けますか?」を地でいった、サラリーマン生活であった。

Uさん、Tさんと私は不思議と仲がいい。お互いを認めている。 しかし、時として、個人の主張が反発した場合は大変である。

いったん意見が違うと、だれも自分の意見を曲げない。昭和20年生まれの男である。声も大きくなる。そんな時に仲裁に入ってくれるのが女性である。元看護師、元高校の音楽の先生、元保育園の先生である。男達は結局助かっている。

そんな大衆演劇のファンが、あがりゃんせ劇場には集っている。

あがりゃんせ劇場

さて、いまでは、Uさんは、午前中は家庭菜園でアマチュアファーマーとなり、野菜づくりに精を出し、夕方からあがりゃんせに来る。一日に1万歩歩き、ファーマーとアスリートの二刀流をこなしている。

Tさんは、大衆演劇の舞踊ショーでペンライトでリズムを表現し、一般のお客さんからは「指揮者」と呼ばれている。

UさんもTさんも22歳で、サラリーマンとしてのスタートをきっている。 同じように、22歳でスタートをした若い役者もいる。 劇団寿に入った22歳の「寿珠里」である。

寿珠里ことぶき じゅり
2022年8月30日 瓢箪山劇場

毎朝あがりゃんせ劇場の受付で挨拶をするが、そのたびに私は違和感を覚える。

普通の女優とは違うのである。

なにが違うのか。おいおいご紹介しましょう。

彼女はどのような役者人生を選択したのであろうか。 まずは彼女の今までの人生を振り返ってみよう。

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