木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第34回葉山花凛編前編~嵐瞳劇~(3/4)

Ⅰ
葉山花凛は、本名を岩田 桜(いわた さくら)という。 誕生日は1997年(平成9年の丑年)2月28日で星座は魚座、血液型はB 型で、現在28歳である。
2月28日が誕生日の人は……。
気さくで知性豊かな親しみやすい性格だが、実は負けず嫌いの努力型であ る…といわれている。人間関係をうまく処理する能力があるので、共同作業を通じて成功を収めることが多い。 物事を、直感的に察知する能力や豊かな良識があり、とっさの対応ができるシャープな人である。そういった気質のおかげで、逆境にあっても始終気配りを忘れず、意欲を失うことはない……とか。(「誕生日大全」より)
※
桜は、四国は愛媛県松山市の温暖な地に生まれ、幼少期をそこで過ごした。
松山市といえば、正岡子規、夏目漱石、司馬遼太郎など文学人が愛した趣のある町並みと、日本最古の温泉として名高い「道後温泉」があることで、あまりにも有名な地である。
家族は、父と母、長男、次男、そして長女である桜の5人であった。 岩田家が松山市で暮らしていたのは5年程度であって、その後は家庭の事情もあって、伊予郡砥部町に引っ越した。
桜は砥部町立砥部小学校に入学、バトミントンに興ずる明るい少女であったが、彼女が4年生になったとき岩田家は激震に見舞われるのである。 両親の離婚であった。桜達兄妹は、両親のどちらについていくのかを選ばされた。
長男は父親、次男は母親。桜は父親か母親かと迷ったのではあるが、桜の胃袋は母親の料理に捕まれていたのである。それほど、母親の料理は美味しかった。
離婚後、母親はその料理の腕前を活かして、老人ホームの給食室で働いた。 二つ違いの兄も桜も中学校に入り出費が増加。母親は働き先を3つに増やし、家族を守った。
桜は、中学校でもバトミントンを続け、部長として県大会でも活躍した。忙しくなった母親の料理の手伝った。家族がおいしそうに食べている姿に充実感を持つようになった。
そんな中、母は桜にデザートを作ってくれた。「バナナのカップケーキ」。その味は気絶するほどおいしかった。こんなケーキを作りたい、こんな味を出したいと心から思った。
いつしか桜の夢は調理人となった。 高校も調理料のある松山城南高等学校(現・松山学院高等学校)を考えたが、私立の高校は現在の家庭の経済状況では無理があった。しかし(母と別れた)父が援助してくれて、志望の高校に入学を果たしたのである。
高校を卒業すると「調理師免許」を取得することができた。 しかし、クッキーやケーキ類のデザート系の授業はなかった。桜は母の作った「バナナのカップケーキ」の味が忘れられず、独学でデザート系の製作に取り組んだ。 家で作ったケーキやガドーショコラを学校に持って行くと評判は上々、学友達は取り合って食べてくれた。
「高校を卒業したらパティシエの専門学校に行きたい」父に相談したら、入学金等、諸々の費用についての援助を申し出てくれた。もちろん桜自身もコンビニのアルバイトなどで入学の準備をしていた。
2015年(平成28年)、高校卒業と同時にパティシエになるための専門学校、松山市湊町にある「河原製菓専門学校」に入学した。