かんげき2025年1・2月号Vol.94

木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第33回英昇龍編後編~優伎座~(3/4)

劇場:スパリゾート雄琴 あがりゃんせ
木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇! 第33回 英昇龍編 後編 ~優伎座~ (3/4)

名前も山崎健斗から「英 昇龍(はなふさ しょうりゅう)」と変わる。

市川姓を名乗るのは、血筋が通じている家族だけである。座長の弟子は市川英儒の「英」をいただいて英(はなぶさ)を名乗るのである。

今の時代、コンプライアンスや人権問題もあって新人も褒めて伸ばすが、ちょっと前、ほんの20年ほど前の大衆演劇の世界は未だ未だ封建的で、新人の育て方も、見て覚えろ、一回で覚えろ、文句を言うな、もちろん、手も足も出る。

座長自身はやさしかったが、厳しい先輩も多く、なんどもドロンしようかと考えた。が、家には帰れない。耐えた。ひたすら耐えた。そんな修業時代、ファミリー劇団であった「優伎座」の中で唯一、他人であった昇龍の働きを認めてくれたのも、座長であった。

そしてデビューである。岐阜の東洋健康ランドでの芝居であった。それから16年、役者一筋。今日も「あがりゃんせ劇場」の舞台に立ち続けている。

筆者は、前々から聞きたかったことを、昇龍に聞いた。
「昇龍は、なんでエースというの?」
「劇団の肩書きについて、みんなで話したとき、座長、副座長、若座長、そして花形も二人いた。どうしよう?そんなとき、誰かが『昇龍はサッカーでエースストライカーをやっていたから、エースは、どう?』みんなが『いいね』と言ったのでエースに決定した。というわけですね」
「なるほど」

英昇龍はなふさしょうりゅう