舞台裏の匠たち第4回「夢の中にも照明が出てくる」劇団炎舞投光橘みつおさん

そう。その時、トンネル工事で、姫路の飯場に寝泊りしとって、たまの休みに行ったんです。姫路の駅前のね。そこのママさんに『今、健康ランドに可愛い男の子の女形がいるから観に行ったら』って教えてもらって…橘炎鷹座長のことなんやけどね。

大衆演劇なんて全然知らなかったし、観たこともなかったんやけど。その月に何度か観に行って、劇団のみんなと喋るようになって、当時座長やったボス（橘魅乃瑠・炎鷹座長の父）から良かったらやってみんかーって誘われて。役者は無理だけど裏方やったらやってみたいですって。

うん。面白そう、やってみたいなあって、特に気負いはなかったね。独り身だし、これまでも住み込みで働いたこともあったし、旅にも慣れていたから。

やっぱりボスがね。あーかっこいいなあって。

はじめは幕引きとかいろいろ。着付けまではしてないけど、着物をたたんだりとかは、やってたね。それからすぐに照明担当になった。ボスのお母さんがやってたのを、引き継いでね。

昔の投光機は手元で操作出来るから、座ってでも出来たんだけど、今のは操作レバーが機械の上にあるでしょう。だから座っては出来ないんよ。

ううん、全然。最初から任されて、自分で考えてやってる。

これはね、10年くらいかな？4台め。使いやすいよ。

これだけ大きいと本当は1台に1人ずつ付くの。でも1人で2台ともやらないかんから、こう、スポットの真ん中に立ってね。操作するのにこっち（左側のスポットのフィルターの操作部）を内側に向けてる。外側にあったら手が届かないから。

そう。だからこうして紐で縛っておかないとグラグラするの。こっち（右側）のやつはちゃんとレールに入ってるけど、こっち（左側）のは入ってない。

あとね、照明を外さず出来るのは『これ』があるから。これがあったら人間を外さない。これがなかったら、できない。

2台同時に動かすと、どちらか絶対外す。こっちを動かしてると、片方がグラグラするでしょ。でも、これ（針金）を持つと安定させられるから、絶対外さない。これがあるからちょっとはマシなのが見せられるかな。だからこれは俺の命（笑）。

これは『重り』ね。機械がぬくもったら勝手にレバーが降りる時があるから、こうして重りをつけてるの。劇団の道具箱に入ってたのを適当に付けただけ（笑）。

本当はもう1本LEDのスポットがあるんやけど、ここでは電圧が足りないので2本だけ。いつもは3本でやってる。