KANGEKI2023年3・4月合併号Vol.76

舞台裏の匠たち第8回羅い舞座京橋劇場棟梁・岸本健司さん「幕間を一秒でも短くする」

劇場:羅い舞座 京橋劇場取材日:2022年12月10日
舞台裏の匠たち 第8回 羅い舞座京橋劇場棟梁・岸本健司さん「幕間を一秒でも短くする」
開場前の10時半、まだ薄暗い劇場

取材日の朝。取材班は大阪市・羅い舞座京橋劇場へ到着し、受付のスタッフさんに声をかけました。
「棟梁の岸本さんはもう来られていますか?」
すると、
「今日はまだ、姿は見かけていないですね。でも、さっき、定式幕(開演時と終演時に用いられる三色縦縞の幕)を閉めてくれた人がいたので、たぶん岸本さんが出勤されているのだと思います」


姿は見えねど、仕事の痕跡だけがそこに。まるで忍者みたい?!
――と思った矢先、岸本さんがひょっこり迎えに来てくれました。昼の部の準備前に、お話を伺いました。

羅い舞座京橋劇場棟梁 岸本健司(きしもと けんじ)さん

もとは大衆演劇以外の舞台の裏方

 

岸本さんには、KANGEKI雑誌版2017年3月号にも登場していただきました。もともとは、大衆演劇以外の舞台の裏方をしていらっしゃったんですね。

岸本健司さん(以下 岸本)

そうです。舞台関係の仕事を始めたのは、さかのぼると1995年になります。2年程空いている時期もありましたが、2010年頃までは、大衆演劇の世界で言う『商業演劇』の裏方をやっていました。

35歳で、その会社を辞めまして。次は舞台とは違う仕事に就こうと思っていたんですが、なかなか仕事が見つからなかったんですよ。

飲食店をやっている友達が新しい店を出したので、お祝いに行った席で、友達に仕事を探しているっていう話をしたら、『舞台の仕事を10年以上もやっていたんだから、辞めてしまったらもったいない。もう一回やってみたら?ちょうど、この店の向かいが大衆演劇の劇場をやってるから』と勧めてくれまして。それなら行ってみようかと思いました。羅い舞座京橋劇場とは別の劇場さんです。

 

巡り合わせで、大衆演劇に出会われたのですね。

岸本

その劇場さんで3年ほど勤めた後、2012年11月3日、京橋劇場のオープン初日からここに来ました。

羅い舞座京橋劇場
 

大衆演劇の棟梁として働き始めて、今まで関わられていた舞台との違いなど、驚かれたことはありますか。

岸本

商業演劇だと、演者さんは演者さんで、裏方に大道具、音響さん、照明さん、衣装屋さん、靴屋さんなどが集まっています。それぞれ会社も別です。

でも大衆演劇は、演者さんが照明も衣装も、基本全部やるじゃないですか。劇場によっては道具方がいない所もあって、僕がやっている仕事も全部劇団さんがやる。このことには、ちょっとびっくりしましたね。大衆演劇は、昔からずっとこのやり方でやってきたと聞いて、僕自身、舞台に携わる仕事をしていたのにまったく知らなかったので、驚きました。

あとは、毎日違う演目というのが、やっぱり大きな違いですね。商業演劇だと、一つの演目で20日間~一か月近くやることもありますから、本番の半年以上前から企画が動き出します。舞台道具も、色々打ち合わせがあって、制作の中身が固まったら制作作業に入って、作るのに一か月くらいかかったり。

 

毎日違うことをやる、大衆演劇のサイクルの早さは、岸本さんに合っていたのでしょうか。

岸本

合っているかどうかは考えたことがないけども、そういうのもありかなと(笑)。

昼の部開演直前、劇団メンバーと打ち合わせ

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