かんげき2023年5月号Vol.77

舞台裏の匠たち第9回鈴成り座棟梁粟田順一さん「気がついたら15年。今でも日々、勉強です」

劇場:鈴成り座取材日:2023年2月11日
舞台裏の匠たち 第9回 鈴成り座棟梁 粟田順一さん 「気がついたら15年。今でも日々、勉強です」

大阪市西成区・鈴成り座には、妖精のような棟梁がいる――という話を聞きました。

鈴成り座

舞踊ショー中に大入りのタペストリーを貼り出すとき、暗闇にまぎれてサッと貼り出す。ピンスポが当たり、ワッと劇場が沸く頃には、後ろ姿を残して去るのみ。

徹底した裏方ぶりと手際の良さが、ひっそり舞台を支えます。 このたびKANGEKIの強い取材依頼に応えていただき、鈴成り座棟梁、初登場です!

棟梁 粟田順一あわた じゅんいち

粟田順一さん。朝11時前に出勤し、夜10時頃まで鈴成り座の舞台裏にいます。つなぎの作業服がトレードマークです。

仕事だけが見える。まるで妖精!?

 

普段、表には出ないと聞きました。

粟田順一さん(以下 粟田)

一切、出ないようにしています。僕は、裏方なので。たまに、見せ転換をしてくださいと劇団さんに言われても、断っています。どうしてもの場合は、劇団さん自身で見える部分の転換をやってもらって、僕は見えないところで手伝います。

 

徹底しているのですね…!大入りのタペストリーを出すときも、本当にさりげないです。

粟田

大入りは、たいてい座長の個人舞踊のときに出します。なので、座長が花道に行ったときとか、お客さんの目が座長に集中している間に掛けたいですね。昔は暗転しているときにも掛けていたんですけど、今は暗いと見えないので(笑)。

自分は表に出る役割ではないから――と、ストイックな粟田さん。まずお仕事に密着取材します!

密着!棟梁の仕事レポート

鈴成り座の舞台裏は、コンパクトな空間に、大量の道具が収納されているのに驚きます。体を横向きにしなければ歩けないほど。

粟田さんはスイスイ歩きます。膨大な道具の在りかが、おおよそ頭に入っているそう。 12時開演。この日は一部ミニショーからでした。

ミニショー終わり。
照明を片付けます
お芝居『畦倉重四郎 第六話』の第一景の準備。お白洲の背景は、ミニショーの白い背景幕の後ろにあらかじめ用意されていました
立て掛けてあった台部分を倒して固定し、
縁の下が描かれた板を付け、
階段を付けて奉行所のセット完成
「ゴザは斜めに一つずつ」
劇団メンバーと最終確認しながら。表では配役アナウンスが流れます
表から見た第一景
一景終わり。チョンと柝が鳴ると、粟田さんが動きます。座長も含め、劇団メンバー全員と一緒に場面転換
表から見た第二景
表は二景進行中。お客様の笑い声が聞こえる中、幕を隔てて三景の準備
粟田さんの足元は常に足袋。二景→三景は、わずか40秒で幕が開きました
表から見た第三景。後ろの小屋は、粟田さんが作ったもの
この日最後の転換です。一景と同じお白洲の場を再び設置
道具が多いので、全員急ぎ足!
表から見た第四景
芝居が終わり、表では口上挨拶が始まります。裏では粟田さんが芝居の片付けをしています
お白州の背景を残したまま、舞踊ショー用の白い背景幕を引きます
ショー中は、幕の開け閉めを行います。鈴成り座の定式幕は、ロープを引っ張る仕組みです
定式幕用のロープと重し
中割り幕は手で開けます。これから座長の個人舞踊
座長の舞踊を見つめる粟田さん
この白い縄は何だろう?と思っていると
複数の幕をカーテンのように、まとめておくための道具でした
下手側の小さな鏡。出番直前の役者さんたちは、これをのぞいて化粧をチェックします
ラストショー。一公演お疲れ様でした!

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