かんげき2023年5月号Vol.77
舞台裏の匠たち第9回鈴成り座棟梁粟田順一さん「気がついたら15年。今でも日々、勉強です」
大阪市西成区・鈴成り座には、妖精のような棟梁がいる――という話を聞きました。
舞踊ショー中に大入りのタペストリーを貼り出すとき、暗闇にまぎれてサッと貼り出す。ピンスポが当たり、ワッと劇場が沸く頃には、後ろ姿を残して去るのみ。
徹底した裏方ぶりと手際の良さが、ひっそり舞台を支えます。 このたびKANGEKIの強い取材依頼に応えていただき、鈴成り座棟梁、初登場です!
粟田順一さん。朝11時前に出勤し、夜10時頃まで鈴成り座の舞台裏にいます。つなぎの作業服がトレードマークです。
仕事だけが見える。まるで妖精!?
普段、表には出ないと聞きました。
粟田順一さん(以下 粟田)
一切、出ないようにしています。僕は、裏方なので。たまに、見せ転換をしてくださいと劇団さんに言われても、断っています。どうしてもの場合は、劇団さん自身で見える部分の転換をやってもらって、僕は見えないところで手伝います。
徹底しているのですね…!大入りのタペストリーを出すときも、本当にさりげないです。
粟田
大入りは、たいてい座長の個人舞踊のときに出します。なので、座長が花道に行ったときとか、お客さんの目が座長に集中している間に掛けたいですね。昔は暗転しているときにも掛けていたんですけど、今は暗いと見えないので(笑)。
自分は表に出る役割ではないから――と、ストイックな粟田さん。まずお仕事に密着取材します!
密着!棟梁の仕事レポート
鈴成り座の舞台裏は、コンパクトな空間に、大量の道具が収納されているのに驚きます。体を横向きにしなければ歩けないほど。
粟田さんはスイスイ歩きます。膨大な道具の在りかが、おおよそ頭に入っているそう。 12時開演。この日は一部ミニショーからでした。
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