お芝居小屋探訪其の二十八松原の大衆演芸場美山(長崎県大村市)オーナーは元役者地域の憩いの場に
九州旅客鉄道(JR九州)「佐世保駅」から大村線の電車で約1時間、「松原駅」が最寄り駅。徒歩3分、閑静な住宅地を抜けるとすぐ「松原の大衆演芸場 美山」が見えてきます。
もともとカラオケBOXとしてオープンしたのは約17年前。
時代の変化からお客様の足が遠のき、大衆演劇役者の経験があったオーナーが劇場としての再出発を決意。2021年7月に大衆演劇の劇場としてオープンしました。公演劇団は2ヶ月ごとに入れ替わります。
それでは早速ご案内~!
目次
1.劇場エントランス
2.受付エリア
3.劇場内
4.オーナー美山豊さんインタビュー
元役者が試行錯誤で劇場作り
以前は大衆演劇の役者さんをされていたそうですね。
はい。40歳くらいまで普通の仕事をしていて、そのあと劇団のお手伝いをして、本格的に役者になったのは48歳くらいから3年ほど。50歳になったら身を引こうと、年を取ったらモテなくなるわと思ってね(笑)
役者を辞められてからは?
しばらくサラリーマンをして、お金を貯めて、ここでカラオケBOXを15年経営していました。僕と同じような年代の人たちがお客さんだったから、みんな年取ってだんだん来なくなってね。10人減っても新しいお客さんは1人しか増えなくて、更にコロナが追い討ちになった。
そんな時に、昔役者だった劇団担当のスタッフが、ある座長を連れて来てくれて『公演をする場所がないからここでやらせて欲しい』ってことで、やろう!って流れに。そこから試行錯誤ですね。
なるほど!その出会いから劇場が出来たのですね。
劇場を建てるのは長年の夢だったんです。僕が舞台に立つより、上手で綺麗な役者さんの舞台を観る方が人生楽しいですよね。そこで、15年運営していたカラオケBOXを改装するとき、小さいけど花道と下手の通路も作りました。
役者さんの寮は10DKくらいの広い一戸建てがあるので、そこで暮らしてもらってます。
お客様に来てもらうために
劇場オープンからもうすぐ1年ですが、どんな1年でしたか。
うちは30人で大入りで、夜は予約制で15人以上集まれば開演します。人気の劇団さんが来てくれると嬉しいけど、お客さんが少ないと申し訳ない気持ちになりますね…
『あんたたち公演しに来たんやろ、適当にしてくれ』っていう発想は僕にはないから、毎日がプレッシャー。わざわざこんな遠くまでトラックで来てくれてさ、狭いところでやってくれてるから。
経営のためじゃなく、劇団さんに『お客さんよく入ってくれたな』って喜んでもらうために頑張って送迎もしてます。
僕一人の問題じゃなく劇団さんがいるから、来たい人が来ればいいっていう考えは出来ないですね。
お客様を呼ぶ宣伝活動が一番大変だと思います。
4月までの7ヵ月間は毎日なんらかのサービスをしていました。月曜は1,000円デー、火曜はうどん、水曜は小さい寿司、木曜はラーメン、金曜はおはぎ、土曜はカレーライス、日曜はお菓子とホットコーヒー。
それを『劇団からのプレゼント』って銘打って。仕入れや用意も全部僕からなんだけど、劇団さんに花を持たせたいからね(笑)。毎日大変だから5月から辞めましたけど…色んなことをするのが好きな器用貧乏です。
また、劇場の知名度を上げるために軽トラの宣伝カーを作りました。スピーカーを付けて回ってます。これから派手なペンキで目立つように塗ろうかなって考えたり…僕の車はこの軽トラと10人乗りの送迎車だけ。
この間も着物置き場になるように場所を増築しました。色々試してます。
オーナーの1日の仕事
劇場の仕事はお一人で全てやっておられるのですよね。
毎日の朝5時に起きて掃除機掛けたりテーブル拭いたり、お客さんを迎えに行ったり…片道10kmを2往復。寮のゴミ捨てや掃除、飯炊き、企画、運営、全部一人でやってるから、お客さんが自分でしてくれることは任せてます。
ドリンク代の支払いはタッパーに入れるシステムで、もうここに入れなさい!って(笑) 食べ物の持ち込みも自由です。
(化粧前が目に入り)あの…この化粧前はどなたが使うのですか?
僕よ。小さい劇団で人出不足の時には俺も舞台に立つんです。(見たいです!)そんな見るようなもんじゃないよ…ただ人手不足の時は応援のためですね。
長崎のみんなに大衆演劇を観てほしい
地元の方が多いですが、遠方でも電車で来られるので便利ですね。
長崎県の市町村の中でほとんどの町の人口は減少してるけど、大村市は県内で唯一人口増加の町。新幹線も通るし、空港が近いし、長崎の真ん中で便利だからね。来た人はみんな楽しかった!って帰ってくれる。1000円ちょっとで楽しめる、こんな施設はないですよ。ぜひとも大村市には大衆演劇を日本の文化として育てて欲しいですね。
今日はお話を聞かせていただきありがとうございました!最後に読者の方にメッセージをお願いします。
今まで色んな仕事をやってきたけど大衆演劇の仕事が一番楽しいです。色んなことを経験した僕が楽しいと思う世界だから、きっと長崎の人も子どもから大人までみんな楽しんでくれると思うんです。
幅広い世代、若い家族連れにもまずは来てもらって、良い悪いはあとで決めればいいことだから、まずは来て舞台を観て欲しい。
若い人たちはスマホとか画面ばかりだけじゃなくて、生の舞台を観て、世の中にはこんなのがあるんだって色んな知識を入れてほしいですね。
5.基本情報
松原の大衆演芸場美山
〒859-3928 長崎県大村市松原1-556-6
電話 0957-47-6818(固定)/ 080-3278-0065(携帯)
アクセス
- JR大村線「松原駅」から徒歩3分
- 長崎自動車道「大村IC」または「東そのぎIC」より7分。専用パーキングあり
営業時間
- 11:30~22:00
開演時間
- 昼の部 開演 13:00~
- 昼カラオケ:開場11:30~開演時間まで・終演後~17:00
- 夜カラオケ酒場:18:00~22:00
料金
- 昼 劇団公演 ¥1,500(前売り券¥1,300)・飲食持込OK(持込料 無料)
- 夜 カラオケ酒場¥1,000(ソフトドリンク付き)・飲食持込OK(持込料 有料)
座席数
- 65席
飲食
- ドリンク(お茶・ジュース・瓶ビール等)のセルフサービス販売あり。
座席予約
- 電話受付あり
6.最寄駅からのアクセス
7.周辺情報
劇場のご近所カフェ「tateto×poet」
劇場から歩いてすぐのところにおしゃれなカフェを発見♪
インスタ映えスポット「千綿駅(ちわたえき)」
松原駅から1駅の「千綿駅」は撮影スポットとして有名。途中下車してぜひ!
取材メモ
魅力的な外観に惹かれ大阪からの遠征。大村線の電車は1時間に1本のみ。都心部から離れ、行きものんびり帰りものんびり…。海を見ながら電車の音を聞きながら、これぞまさしく究極の癒し旅…!
たどり着いた劇場では熱いお芝居と壮大な群舞に心を打たれ、「最高…」を嚙み締めざるを得ませんでした。
そしてまた、オーナーはじめお客さんも皆さん温かく「遠いとこから遥々よう来たなー」とまるで自分が人気者になったかのような、賑やかなおもてなしを受けました^^ (笑)
また必ず帰ってきたくなる夢の国でした♪
劇団情報
おおみ劇団
平成13(2001)年旗揚げ。おじである近江飛龍座長(近江飛龍劇団)のもとで 子役から経験を積んだおおみ悠総座長がのれん分けで独立。 平成29(2017)年1月よりおおみ達磨が若座長から座長に昇進。 おおみ総座長は座長のサポートに回り、新たな劇団作りに励んでいる。