一見劇団密着取材!古都乃竜也座長インタビュー
お芝居も舞踊も一生懸命やれば観てくださる
大先輩との共演が実現
古都乃竜也座長から沢田ひろしさんに依頼され、初共演が実現したとのことですが。
そうなんですよ。先月の新開地劇場の大会でご一緒させてもらった時に、ゲストに来ていただけませんかとお願いしたところ、快く引き受けてくださって。
共演のお芝居を選ばれるのも悩まれたと思います。
はい。2日間で4本、どんなお芝居をお願いしようかと考えました。
今日の『刺青奇偶』の鮫の正五郎は、僕も過去にさせてもらったことあるんですけど、先輩の姿を見た方が勉強になると思うので、来てくださると決まった時に、どうしても一緒にさせていただきたかったお芝居でした。
実際に共演されていかがでしたか。
やばかったですね。出てきたらもう鮫の正五郎じゃないですか。沢田さんが出てきた瞬間、『あの、鮫の正五郎さんですか?』って聞きそうになりました(笑)。やっぱりすげー!ですね。出そうと思っても出ないですね、あの迫力は。僕、もう中へ入ろうかなと思ったくらい。
今までと違う感じでしたか?
緊張感がグッと高まりましたね。舞台に出るまでどういうふうに持っていったらいいのかなって、イメージトレーニングしなかったんです。稽古も口立てだけで、通しではやってない。その時の場面に合わせてやろうと思って、いくつか言葉を足しましたね。
今日、ご覧になられた方は皆さん良かったと言っておられました。
だと良いんですけどね。とにかく緊張しました。
あるものをきっちりやる
今月は昼夜お外題替えで、たくさんお芝居をかけられたと思いますが、劇団としてお芝居の数はどれくらいになるのでしょうか。
常にやってるのは100本くらいと思います。やってないのを入れたら200本くらい。全然やってなくて忘れているのもあると思うので、わからないですが。
今日のお芝居のように、台本に忠実に、しっかり筋を守ってやるというのを大切にしておられると思いますが
基本、脱線したアドリブはしないように心がけています。ちょっと堅苦しくなってるかなと思った時は、多少崩しますが。台本のあるお芝居はそれをベースでやります。基本的にきっちりやる・あるものをその通りにやるという感じです。
手応えあった関西公演
3年ぶりの関西公演でしたが、3ヶ月いかがでしたか。
やっぱり3年は長いと感じましたねー。前に来てくださった方もおられましたが、半分はほぼ初見やと思います。今回、高槻千鳥劇場、八尾グランドホテル、浪速クラブと回らせていただきました。
千鳥劇場が初めてでしたが、行けて良かったです。高槻のお客様が浪速クラブにも来てくださって、ありがたかったですね。
今回、京都方面のお客さんに見えてもらいたいねと興行師さんが言ってくださって、ならば高槻にって。ママさんにも良くしてもらいました。
1人1人の持ち役を徹底
3年経って若手メンバーの成長が顕著でした。
お芝居って主役と相手役だけじゃできないんですね。うちは、みんなどの役をつけても、捨てることはないし、真面目にやってくれてる。1人1人の役が持ち役になっていて、出てるだけの子っていないと思うんです。
難しい芝居を簡単には出来ないけど、それなりに出来ているとすれば、間違いなく若い子の成長です。
今日のお芝居でも、最後の場面の若い衆の集中力が高かったです。
最近特に思いますね。コロナになって変わったかな。踊りにしても。頼もしいですね。
両座長が指導されるのでしょうか。
教えることはほぼないです。もちろん稽古はしますけど。個々の努力だと思いますよ。みんなお兄ちゃんになったって言うと失礼かもだけど、明らかに成長してますね。
中でも花形の方々が、落ち着いた役を堂々と演じておられますね。
みんなお芝居が好きだからだと思います。そういう意識がないと変わらないと思うんです。
意識の変化は両座長の影響では…
僕は基本そんなにストイックな方ではないです。ただ、お芝居は真面目にするものだと教わりました。上手くなくても真面目に一生懸命しなさいと…。それが常に目指していることです。僕はそんな影響力ないので、やっぱりみんなの意識の変化だと思いますよ。
座長としては嬉しい変化ですね
嬉しいですよー!舞踊ショーももちろん大事です。お芝居があって舞踊ショーがあって、どちらもしっかりやれば喜んでくださるというのが、わかりましたね。
関西ではよく舞踊の方が…と言われますけど、やっぱりお芝居だと。
いやあ、ほんと芝居好きですよ、みなさん。真剣に見てくださいますし、あと、男のお客さんが多いかな。やってよかったと思いましたね。
みんな役割がある
これからのことを踏まえて、悩んでいることは。
悩まないようにしてるんです。どうしようどうしようって思っていたら、出来なくなってしまうので、何か出た時に1つ1つ処理していこうと、前向きに思うようにしています。
大夫元が亡くなられて、何もかも背負うようになった今は、特にそのように考えられるようになられたのでしょうか。
僕らも頑張ってるつもりでしたが、母がどれだけ動いてくれていたかわかりました。母がいなくなって1年、なんとか持った。もう1年頑張ろうって、言っています。
若い子たちも全員持ち役がある。
翔太郎はお客さん対応やトラックの手配、優太郎は照明全般から設置など全部やってくれます。大弥は花形として舞台頑張っていて、一番若い洋太もどんどんよくなってきてます。
隆太さんがいてくださるからお芝居が締まるし、音響、食事、着付けなども入れて、全部姉兄弟と家族で役割分担してやっています。
みんな頑張らないとというスイッチが入った。母が大変だったのを見てるからじゃないですかね。
「お父さん」がしたい
今日は誠にありがとうございました。最後に、舞台以外のことをお聞きします。今、ハマっているものはありますか。
それ聞かれるんですけどねー。僕、趣味ないんですよね。何かあるかなって考えてもないんですよね。息子のことくらいかなあ。
なるほど…では、オフの過ごし方を教えてくださいますか。
オフは大体ゲストに行っているので、まるっきり休めるのは移動の日だけですね。それも今までは子供の転校の手続で、教育委員会と学校を回って終わりです。
今は、子供が卒業したので無くなりました。その時は大変だったけど、寂しいですね。お父さんしたいです。楽しみは子供が大きくなることですね。
取材メモ
浪速クラブ千穐楽。遅れて駆けつけましたら、劇場内は満員御礼!通路側に補助席が出され、最後列には立ち見の方も。舞台をぐるりと取り囲むお客様を前に、ラスト舞踊「相撲甚句」が始まりました。別れと感謝が詰まったこの歌は、大衆演劇の千穐楽の舞台と重なるところが多すぎて、聞くたび・観るたびに涙腺が緩められてしまいます。
浪速クラブの舞台いっぱいに並んだ一見劇団一行の晴れ姿と、客席の熱狂。
「お芝居も舞踊も一生懸命やれば観てくださる」。竜也座長の言葉通り、この先「相撲甚句」を聞くたびに思い出すに違いない、旅芝居マジックな光景でした。
プロフィール
一見劇団座長古都乃竜也
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劇団情報
一見劇団
初代・人見多佳雄により旗揚げ。初代と太夫元・紅葉子の 息子である一見好太郎と古都乃竜也の兄弟座長コンビが 二枚看板として劇団を率いる。 現在は関東・東北を中心に巡業を行う。月に一本は新作狂言を作るなど、 演技を追求した本格的なお芝居がみどころ。
一見劇団公演予定
- 2024年12月石岡健康センター(茨城県)
12/1〜12/24昼