KANGEKI2021年9月号Vol.61

旅芝居女優名鑑第5回高野花子この振り幅を見てほしい!芸道24年・フリーで羽ばたく(5/6)

取材日:2021年8月7日
旅芝居女優名鑑 第5回 高野花子 この振り幅を見てほしい! 芸道24年・フリーで羽ばたく(5/6)

第5章
どの役も「私」。
夢は衣装作りを副業に

どんな役もよりらしく

今年で芸道24年になる花子。これまで演じた中で好きな芝居は?

お芝居でどれが1番とかはないです。役だったら、そんなにストーリーに重要に絡む役じゃなく、ただ噂話だけしにくる長屋のおかみさんとかが好きですね。

例えば「地蔵の卯之吉」の茶店の娘。お茶を出して「あんたが地蔵の卯之吉さんだね。だったら…」と、これくらいの軽い絡みが好きなんです。娘役は長らくやってませんけど(笑)。

おっかさん役も、良いと言ってくださる方もありますが、責任重大すぎて。意地悪なのも似合うと言われます。なんででしょう(笑)。

「恋の高岡」
高慢な商家の女将を演じる花子
(2021.8.8@梅南座)

毎日お芝居で大活躍。2役出ることも多い。

立ち役もどんどんやらせてもらいます。2役も初めはオタオタしていましたが、もうしません(笑)。3役やる時もあります。

私が演る以上、どの役も結局「私」がベースになるんですよね。例えば怒る時は、私の中の怒りの感情を強く出しているわけで。全く別人にはなれず、どれも私です。そんな中で化粧や衣装でも工夫して、老若男女どの役もよりらしく見えるように考えます。

本当に毎日色々な役を演っているので、ぜひこの振り幅を見に来てください(笑)。

「信州一羽鴉」
左より葉山萌香、高野花子
(2019.8.9 明生座)

衣装作りを副業に

フリー4年目。ますます役幅を広げ、全力投球で舞台に立つ花子に、もう1つ、情熱を込めて手がけている仕事がありました。

衣装や小物を作るのが好きで、時間に余裕のある公演先にはミシンを持って行きます。舞台がお休みの間は家でずっと作ってましたね。

休み中に仕上げた着物や帯。
腕はもちろん仕事が早い!

もとから得意というわけではなかったんです。
「明日まで出来るようにしといて」が口癖の先輩が、個人舞踊の直前に着物の袖にほころびがあったので「これ縫って!」と言ってきて「出来ません」と言うと「明日から出来るようにしといて!」出たー(笑)

で、この仕事は縫い物も出来ないといけないんだと、見様見真似で始めたのがきっかけです。

また別の先輩から肌襦袢を縫ってと頼まれた時、別の襦袢を借りて、それを手本にどこをどう縫うのか考えて作りました。

力作の着流し。
光沢のある生地にモノトーンの上品な色使いに流れるような花模様が美しい

完全に独学です。最初はめちゃめちゃ失敗しました。でも自分が着るものなので、着付ける時に工夫して着ればいいし、失敗を重ねて裾引きなども縫えるようになりました。でも和裁に詳しい人が見たらダメ出しされるかも…(笑)。

のめり込んだら止まらない。研究熱心なところは舞台に対する姿勢と同じ。

今では劇団の群舞の衣装なんかも縫わせてもらっています。この衣装作りを副業に出来たらというのが、私のささやかな夢ですね。

手製の裾引きで舞う 高野花子
(2021.8.8@梅南座)

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