木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第11回寿かなた~劇団寿~後編(4/4)
※
今回で、4回目のあがりゃんせ劇場の登場であるが、ますます魅力的になっている。 若座長として、自信を深めた美空、あの無口な男の子だった福丸もひとまわり成長して、ひとりで舞台を務めている。
さて、寿かなたであるが、役者から看護師、そしてもう一度役者の道を歩いている。
筆者は思う。 彼女は、常に人に寄り添う、そんな仕事をしてきた。 彼女にとっては、人に寄り添うという点で、女優も看護助手や看護師も同じである。
女優は人の心の琴線に寄り添い、看護師は傷んだ身体に寄り添うものである。
彼女の心情は「人に寄り添う」こと、 この心情をもって、努力を行っているから、今の「かなた」がある。
その努力だか、筆者は「かなた」には、努力ができる才能があると思う。 大概の人は途中で努力を諦める。努力の才能が乏しいのである。 努力の才能がある人だけが、たゆまぬ努力ができるのだ。
かなたには、持って生まれた努力を楽しむ才能がある。
※
今日も、夜のラストショーが始まる。あがりゃんせ劇場の楽屋は舞台から遠い。 そでの控室で女将が気をもむ。 美空が入る。彩圭が入る。福丸が入る。かなたが遅れている。女将の声が飛ぶ。 かなたが、相棒と二人三脚でそでに入る。かなたの心の相棒は、何と言ってもナイチンゲールだろう。
女将が、かなたの背中をそっと叩く。 座長の軽やかなステップが響く。客席が、わく。
7時半、今日も終わった。
また、明日もかなたの女優道の戦いはつづくだろう。
プロフィール
小野直人
生年月日 | 1953年 |
---|
1953年 滋賀県大津市生まれ。日本大学・農獣医学部卒業。
小野牧場オーナー、総合学習塾 啓数塾塾長、構成作家(テレビ、ラジオ)を経て、現在は、あがりゃんせ劇場の木戸番として、多くの大衆演劇の劇団や幅白い大衆演劇のファンと交流をもつ。「KANGEKI」で「木戸番のエッセイ」を連載中。
劇団情報
劇団寿
2013年8月、黒潮劇団に所属していた寿翔聖が、新潟県の三条東映にて旗揚げ。「お客様に笑顔になっていただきたい」をモットーとし、少人数ながら太鼓ショーやオリジナルのお芝居などバラエティ豊かな舞台を展開し、ファンをつかむ。2017年9月に寿美空が若座長襲名。こどもたちの成長にも期待がかかる。