旅芝居女優名鑑第4回美穂裕子「いないと困る」と言われる女優になろう(3/6)
第3章 女優として花開く
一気に役が回ってくる
芝居では女中や子分役ばかりだった裕子。5年くらい経った頃、転機が訪れます。
私にはいわゆる綺麗どころのお嬢さん役が回って来ませんでした。歳の近い二代目先生の娘さんには良い役がついて、私は子分や女中ばかり。 そんな時、幹部さんから「いい役をつけてやる」と教えてもらったのが「おしん故郷に帰る」。初めて主役をやらせてもらいました(現在は「野に咲く花のように」というお外題で上演)。
そして25か26歳になった頃かな、座長の身内の女優さんが次々やめて、一気に役が回ってきたんです。
女房役やおばあさん役、三枚目、どんどん役が回ってきて。出番が増えると、お客さまにも覚えてもらえるようになりました。 広島のご夫婦が応援してくださって、初めて着物を作ってもらいましたね。
役者は声
劇団大川では発声も徹底的に鍛える方針でした。
色々な役がついて、色々な声を覚えてから、お芝居が楽しくなりました。 声って大事やと思うんですよ。お婆さんの時のしゃがれた声、優しい人の時のフワッとした声、意地悪な人の声、毒婦の声、全部違う。
海に連れて行かれて「あー」とか「うぉー」とか言わされました。「声潰すまで出せ」って、スポ根漫画みたいですよね(笑)。
最近では「お吉物語」が、裕子にとって大切な1本に。
以前、二代目先生が「お前はお吉を演ったらいい」と言ってくれてたんです。劇団には無いお外題だったんですが、紅大介総座長が教えてくれて、2018年に初めてオーエス劇場で演りました。
こんな面白い役があるんやって思いました。全幕違うんですよね。序幕は芸者で、次にやさぐれて、最後は落ちぶれて…。習って良かった、演らせてもらって良かったと思うお芝居ですね。
ところで今更ですが「美穂裕子」の芸名の由来は?
座長のおじさんが付けてくれました。
私の本名が「美穂」なので、それを苗字にして、椿裕二座長の一番弟子だから「裕二」の「裕」をとって「美穂裕子」。 でも私「りん」とか「ラン」とか、もっと役者っぽいキラキラした名前がよかったので、なんで裕子やねん~って思いました(笑)。もうこの名前でずっと来ているので変えませんけどね(笑)。