KANGEKI2021年8月号Vol.60

旅芝居女優名鑑第4回美穂裕子「いないと困る」と言われる女優になろう(3/6)

取材日:2021年7月6日
旅芝居女優名鑑 第4回 美穂裕子 「いないと困る」 と言われる女優になろう(3/6)

第3章 女優として花開く

一気に役が回ってくる

美穂裕子
(2020.6.14 梅南座)

芝居では女中や子分役ばかりだった裕子。5年くらい経った頃、転機が訪れます。

私にはいわゆる綺麗どころのお嬢さん役が回って来ませんでした。歳の近い二代目先生の娘さんには良い役がついて、私は子分や女中ばかり。 そんな時、幹部さんから「いい役をつけてやる」と教えてもらったのが「おしん故郷に帰る」。初めて主役をやらせてもらいました(現在は「野に咲く花のように」というお外題で上演)。

そして25か26歳になった頃かな、座長の身内の女優さんが次々やめて、一気に役が回ってきたんです。

女房役やおばあさん役、三枚目、どんどん役が回ってきて。出番が増えると、お客さまにも覚えてもらえるようになりました。 広島のご夫婦が応援してくださって、初めて着物を作ってもらいましたね。

左より大川忍、美穂裕子
(2017.5.23 梅南座)

役者は声

劇団大川では発声も徹底的に鍛える方針でした。

色々な役がついて、色々な声を覚えてから、お芝居が楽しくなりました。 声って大事やと思うんですよ。お婆さんの時のしゃがれた声、優しい人の時のフワッとした声、意地悪な人の声、毒婦の声、全部違う。

海に連れて行かれて「あー」とか「うぉー」とか言わされました。「声潰すまで出せ」って、スポ根漫画みたいですよね(笑)。

最近では「お吉物語」が、裕子にとって大切な1本に。

以前、二代目先生が「お前はお吉を演ったらいい」と言ってくれてたんです。劇団には無いお外題だったんですが、紅大介総座長が教えてくれて、2018年に初めてオーエス劇場で演りました。

こんな面白い役があるんやって思いました。全幕違うんですよね。序幕は芸者で、次にやさぐれて、最後は落ちぶれて…。習って良かった、演らせてもらって良かったと思うお芝居ですね。

「お吉物語」終演後。
お吉の扮装のまま、涙も残ったままでお見送りに立つ美穂裕子
(2018.8.28 オーエス劇場)
鶴松役の椿裕二座長も
目に涙いっぱい浮かべて

ところで今更ですが「美穂裕子」の芸名の由来は?

座長のおじさんが付けてくれました。
私の本名が「美穂」なので、それを苗字にして、椿裕二座長の一番弟子だから「裕二」の「裕」をとって「美穂裕子」。 でも私「りん」とか「ラン」とか、もっと役者っぽいキラキラした名前がよかったので、なんで裕子やねん~って思いました(笑)。もうこの名前でずっと来ているので変えませんけどね(笑)。

美穂裕子
(2021.7.2遊楽館)

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