KANGEKI2021年2月号Vol.55

木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!美月凛(紀伊国屋劇団)後編(3/4)

木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇! 美月凛(紀伊国屋劇団)後編(3/4)


舞台デビュー

いよいよ、デビューである。 デビューは故郷のお隣、三重県のユーユーカイカンであった。 入場のアナウンスが、流れる。お客さんが入る。 お芝居での凛は、親分が連れている子分の役。 楽屋での化粧前で自分でもいなせが決まっていると思った。もちろん台詞はない。 芝居が始まった。これは段取りが決まっている。周りが上手いので、結構楽しめた。

そして、舞踊ショーである。 オープ二ングの総踊りである。 オリンピック音頭。 このイントロ、何回聞いたか。 踊りの段取りは覚えた。考えてみるとズブの素人である凛を、劇団の先輩は辛抱強く教えてくれたものである。ひたすら感謝。 観客の目は、本当に怖かった。 踊りは一瞬で終わった。いいも悪いもない。終わった。

その後、お芝居にも台詞がついた。町娘、暴漢に襲われる。
「人殺し~!」そして死んだ。

美月 凛

踊りも、みんなで踊る総踊りから、2人で踊る相舞踊、そして、個人踊りとなった。 しかし、実際、凛は何もわからなかった。

澤村舞の稽古を受ける。舞を真似た。そっくり真似た。足の運び、手の動き。そっくりに真似た。 舞は言う。1.2.3.4.の演歌のテンポとリズムに合わせて踊るだけではない。 歌詞の内容を理解して、流れを作り、情緒を手のしぐさに伝える。そして舞は口癖のように言う。『帯』の位置がスムーズに動いて、上下してはいけない。そして「軸を感じるのよ。体感を意識するのよ」。だめだ。これは難しい。

その上、演歌には当然、恋の歌が多い。楽しい恋ではない。 こんなことなら、もっと恋をしておけばよかった。きつい失恋の経験しておけばよかった。いっそのこと、不倫もしておけばよかった。しまった、しまった、島倉千代子。 凛はちょっぴり、後悔した。

雄馬は言う。踊りは頭で考えるのではなく、感じるのだ。 「凛、わかるか、感じるのだ。」 この台詞、どこかで聞いたことがある。あっ!ブルース・リーだ。「アチャー!」

凛は考えた。それなら、あたしは「蝶のように舞い、蜂のように刺す。」そんな踊りをしてやる。

左から美月凛、つばさ天晴
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