KANGEKI2021年2月号Vol.55

木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第2回美月凛(紀伊国屋劇団)後編

木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇! 第2回 美月凛(紀伊国屋劇団)後編

大衆演劇の劇団の多くは座長とその家族で構成されている。
役者の家系に生まれた、いわゆる幕内の人間が過半数を占める中、一般家庭から役者になった人もいる。
その「外からの役者」たちは、何がきっかけでこの世界と出会い、どのような思いで飛び込み、日々過ごしているのだろうか?
劇場オープンから5年、木戸番兼劇団のお世話係を務めてきた著者が綴る実録エッセイ!

美月凛みづき りん


新人女優は大変

さて、大衆演劇の役者や女優も、立派な芸能人である。 凛も芸能人の仲間入りをするわけである。プライベートはありそうで、ないかも。

あがりゃんせ劇場のお客様は、芸能人である役者の私生活のネタが大好物である。新しい劇団が入ると、座長をはじめ劇団員について、詳しく知りたいと思っている人が多い。 「座長はいくつ?」「この二人は、夫婦やな」「この子供のおじいちゃんは、この人?」 など、いろいろ聞いてくる。

木戸番としては、彼らの井上公三(芸能レポーター)である。もちろん、座長や女優が私を信用して話した劇団の深い話については、知っていても知らない振りをしている。

しかし、日を追うごとに、お客様の劇団に対する探究心はますます深まる。噂話好きのファンが、聞きかじりのネタを推測で話を盛り上げる。 中にはとんでもないガセねたもあって、間違った情報が広まり、困ったこともあった。

あがりゃんせ劇場

どこかの女性アイドルグループが「会いに行けるアイドル」ということで一世を風靡したが、大衆演劇の役者は随分前から一緒に写真も撮れるし、握手やハグもできる。贔屓のお客様とは時間外に食事もできるし、飲みにも行ける。お客様が、役者に人生相談をしているところを見たこともある。

確かに、一部のファンと劇団はお互いにいい意味で依存し合っているのかもしれない。常に相手がいなければならないような、親友以上の関係にも見てとれる。

ところで、一般のファンが知りたいことは、まずは「いくらもうてはんの?」(給料はいくらもらってるの?)、「劇団って儲かるの?」である。さすがに関西人である。

もちろん、劇団によってもキャリアによってもちがうが、新人だと女優の場合、OLの1/3ぐらいだと予想される。 とはいうものの、住むところもあるし、日常の光熱費もかからない。3度3度の食事もあてがわれている。 心配するのは、携帯代ぐらいのものである。

しかし、必要経費として衣装代はかかる。 踊りも総踊りのときは「番」と呼ばれる劇団からの支給の着物でいいが、個人踊りになってくると「番」だけでは、気が済まない。

着物は高い。女優たちは、着物代や衣装代を安い給料のなかからチマチマ貯めて、安いものでも高そうに見えるものを買う。かつらはもっと高い。根性を決めてかかる。

劇場に行ってみると解るが、劇団のなかでも男性連中は、つまり、座長をはじめ花形や若い役者は「おはな」がいっぱいつくので、着物も比較的容易に買うことができる。また、ご贔屓のお客からプレゼントもある。しかし新人女優はそうはいかない。

あがりゃんせ劇場

大衆演劇のファンの90%が女性である。女性はいつくになってもイケメンが好きである。 好きな役者には、おはなとしてレイをプレゼントする。現金をピンでとめる。言い方が直接的過ぎるが、貢ぐ。貢ぎ続ける。貢ぐだけのお金をもっている。そんなお客様を総称して「ご贔屓さん」とよんでいる。私は個人的に親しみをこめて「太客」と呼ばせてもらっていますが…。

この「ご贔屓さん」なしでは、劇団の運営は難しいであろう。劇団に「ご贔屓さん」は大切だし、「ご贔屓さん」にとっても劇団は心のよりどころである。つまり、現状はウィンウインの関係である。 わたしは親しくなった太客さんたちに聞いてみた「なんでそんなに貢の?」 答えは大まかに、3つに分かれた。

「お客の前で、舞台で恥をかかすわけには、いかん」「いい役者になってほしい、つねにかっこいい役者でいてほしいから」「高額のおはなをつけると喜ぶ。その喜ぶ顔がみたい」 誰も、それが私のプライトだといわんばかりであった。わたしが当初、予想していたものとはずいぶん違い、色恋とは違う世界のようだ。

太客さんは、誰も気持ちのいい女性で、やさしい。きっと太客を追ってみると「情熱大陸」が1本できそうである。ディープで見ごたえのあるものが出来そうだ。

あがりゃんせ劇場

そういった「ご贔屓さん」とまではいかないが、最近は女優にもおはなをあげる傾向にある。その女優たちには共通点がある。

平成の生まれで八頭身とはいかないまでも、とにかくスタイルがいい。身長も160㎝をはるかに超えて、ゆかた姿や着物姿は外国人のそれ。昭和の女優とは役割が違う。 ほとんどは『立ち役』である。きれいな男役である。

ファンのお客も若い女性が多い。まさに宝塚の世界である。宝塚の役者は近寄りがたい。それがいいところでもある。しかし、大衆演劇の女優は気さくである。フランクである。フランク永井である。 踊りも従来の演歌にあわせて、というのとは違う。ヒップホップやジャズダンスで、本当にキレよく踊るフランク永井である。

例えば、あがりゃんせ劇場にあがった女優でいうと、龍魔裟斗(スーパー兄弟)、小林真佐美(小林劇団)、初音きらら(あやめ劇団)、颯天 蓮(正舞座)、遅れて、さくら(劇団殿下)なども有望であると思う。

あるベテラン女優は言う。だんだん男とか女とは関係なくなって、真の芸がものを言うし、新しい踊りのノリを大切にする時代に入ってきそうだ。大衆演劇も徐々に変わりそうである。

 

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