KANGEKI2021年5月号Vol.58

木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第5回咲之阿国編~劇団あやめ貴妃~

木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇! 第5回 咲之阿国編 ~劇団あやめ貴妃~

大衆演劇の劇団の多くは座長とその家族で構成されている。
役者の家系に生まれた、いわゆる幕内の人間が過半数を占める中、一般家庭から役者になった人もいる。
何がきっかけでこの世界と出会い、日々過ごしているのだろうか?

劇場オープンから5年、木戸番兼劇団のお世話係を務めてきた著者が綴る実録エッセイ。
第5回は劇団あやめ 貴妃 咲之阿国(しょうの おくに)編です!

はじめに

劇場に携わる木戸番の仕事というのは、劇場の運営や管理また劇団の生活面のお世話など、多岐にわたるが、まずは芝居や舞踊ショーを観にきたお客様の受け付けをすることから始まる。

「あがりゃんせ劇場」の場合は、受付席の後ろが、直接劇場である。 芝居もはね、舞踊ショーも終わりに近づくと、木戸番は場所を移動して劇場に入りお客様のお見送りをするのが慣例である。

慣れてくると、舞踊ショーの終わりが、時計を見なくても“曲”で分かるようになって、スムーズに体が動く。

その曲だが、劇団によって、また日によってもまちまちであるが、多いのは、「一本釣り」「じょんがら女節」「無条件」「アジアの海賊」なのであるが、『祭り』で終わるところも多い。北島三郎の名曲である。

この名曲を、筆者は、2018年1月7日、京都競馬場で聞いた覚えがある。北島三郎の持ち馬である「キタサンブラック」の引退式であった。 「キタサンブラック」は、2017年のJRA賞の年度代表馬で、獲得賞金18億7683万3000円は、JRA歴代2位である。その引退式に、オーナーの北島三郎自らが歌ったのである。

「キタサンブラック」のおじいさんは、「サンデーサイレンス」というアメリカの馬で、サンデーサイレンスにはたくさんの子供がいた。 「スペシャルウィーク」「サイレンススズカ」「ステイゴールド」そして、あの「ディープインパクト」も子供のひとり(?)である。また、「ブラックタイド」もその兄弟である。

「サンデーサイレンス」にすると、その息子に「ブラックタイド」がいて、その孫に、「キタサンブラック」がいる。つまり、「キタサンブラック」は3代目なのである。

あがりゃんせ劇場

筆者は、その引退式の「キタサンブラック」のはれがましい勇姿を見ていて、大衆演劇の役者の顔が頭に浮かんだ。 大川竜之助、沢村千代丸、大日向忍である。

大川竜之助はもちろん初代大川竜之助の孫。沢村千代丸は、紀伊国屋章太郎の孫、大日向忍は、大日向満の孫である。

競馬の競争馬と大衆演劇の役者を一緒にする気はさらさらないが、やはり「ディ―プインパクト」の子は、走るのである。「キタサンブラック」の子も走るであろう。

確かに、大衆演劇の3代目は、芝居も踊りも、他の役者とはちがうと思う。 芸の中に、きらめきがある。
繊細なしぐさの柔らかさの中に強さをかねそなえ、また、大胆な動きの中に見せる、きりっとした目線の先のやさしさをかもしだす雰囲気、それがファンを心をつかむ。(あくまでも、これは、筆者の個人的な意見であるが、・・。)

誰が教えたのであろう。教えて、教えられるものではない。 これを、DNAがなせる技と言うと乱暴だが、ほかに言葉が見つからない。

今回のエッセイでは、このDNAが重要なカギになるので、このDNAについてこだわってみたい。
DNAとは、どんなものであろうか?

人間の体には、60兆の細胞がある。

どこでもいい、60兆の中の1個を取り出してみる、その1個の細胞の中を覗いてみると、中には核があり、さらにその中には遺伝を司る染色体がある。ミクロの決死圏である。

この染色体には、遺伝の情報をもつデオキシリボ核酸「DNA」が納められている。

このDNAが二重らせん構造になって存在し、DNAによって親から子に遺伝情報が伝えられる。

つまり、親が涼しい二重だと子もきれいな二重で、親が踊りがうまいと、子も上手いのだ。親が高身長のイケメンだと、子もすらっとしたイケメンなのだ。 キタサンブラックの子も、数年後には有馬記念で走る定めなのだ。

大日方皐扇座長とその息子の忍は、二人で踊っているとまったくシンクロしている。

龍美麗総座長の芝居は、2代目の南條隆座長のそれである。 大衆演劇の世界、そんなことを挙げていると枚挙にいとまがない。 明らかに大衆演劇の血も遺伝するのであろう。

しかし、それは「腹からの役者」のことである。しいて言えば、幕外の一般の役者には、当てはまらない。

とはいうものの、こんな例もある。
かつて九州に『大衆演劇にこの人あり』といわれた役者に、殺陣で名が通った樋口二郎がいた。彼は「腹からの役者」ではなかった。もともと筑豊の炭鉱の工夫だったと、伝記では紹介されている。

ということは、どこに「大衆演劇」の才能の原石が眠っているかはわからないのである。
このエッセイは「腹からの役者」ではなく、つまり大衆演劇の家庭から生まれてない役者にスポットを当てようとスタートした。

あがりゃんせ劇場

御存じのとおり、現在の大衆演劇はお芝居と舞踊ショーとに分かれた構成になっている。 お芝居は、座長が主役で、めだつ存在であるが、舞踊ショーは、各役者の力量が試される所である。艶やかな女優の踊りを心待ちにしているファンも多いが、なかでも筆者はふたりの女優の踊る姿が脳裏に焼き付いている。 ひとりは「腹からの役者」の大日方皐扇で、DNAの申し子である。父は大日方満である。

皐扇が息子の忍に稽古をつけている時の一声であるが、
「おどりは、想いや感覚で踊るものではなく、確かな技術の積み重ねや!」といった言葉が忘れられない。持って生まれた才能にあぐらをかくことなく、不断の努力を惜しむなということであろう。

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