KANGEKI2021年8月号Vol.60

木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第7回錦はやと~劇団錦座長~(後編3/4)

木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇! 第7回 錦はやと ~劇団錦座長~ (後編 3/4)

本来的に言えば、三桝座にもどるのが筋であろうが、無理を言って心機一転、違う劇団に入った。二代目南條隆会長のところだった。現在は南條隆とスーパー兄弟であるが、 龍美麗も三代目南條隆もパンパースをはいている時代である。博行は25歳になっていた。

錦博行は改名して「錦はやと」となり、南條隆に宣言する。
『3年たって、劇団ができないとは、この世界から、足をあらうこと!』

背水の陣で、ある。

そして、団員として、南條隆劇団に入ったはやと、裏方として働くまさみ、生まれたばかりのカムイ、3人の生活がスタートする。

もともとOLだったまさみは、急な生活の変化と人間関係についていけず、リアタイヤをしたが、母親はまさみもカムイも家に入れてくれなかった。 この事件ではやとは決意を新たにした。 ただ南條隆座長には、3年先に劇団を作りたいとは言っていたが、母親との約束については黙っていた。

このシリーズでは、劇団の創設については、その資金面と劇団員の確保の苦労をご紹介しているが、今回も壮絶なものがあった。 それに今回は時間的な余裕もない。きっちり3年間である。

時間はすごい勢いで過ぎていく。3年間という期限も残すところ6ケ月という時期に、劇団も分岐点を迎える。

その分岐点において、劇団として、はやとにもう少し留まってほしいという。 もっともな申し出ではあるが、母親との約束の時間が迫っていた。 博行は「男としてどうしても劇団を立ち上げたい」と、南條座長相手に何回も説得を試みた。

座長も、自らの劇団が問題をかかえているにもかかわらず、快諾してくれた。この恩返しは、立派な劇団を作ることだと、心に刻んだ。

心遊會「第忠臣蔵」 錦はやと(右)葵好太郎(左) 2020.7.21羅い舞座京橋劇場