KANGEKI2022年1・2月号Vol.65

木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第12回真珀達也~三桝屋座長~前編4/4

劇場:スパリゾート雄琴 あがりゃんせ
木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇! 第12回 真珀 達也 ~三桝屋座長~ 前編 4/4

待ち合わせは、劇場の前。 夏の日差しの片側が暗くなり、夕立になりそうな空模様、遠くで雷鳴が轟いた。 祐希は、雷に目をむけ「何か起きそうだ。」と独り言を言った。 祐希18歳の夏である。

待ちあわせ場所は熊本の山鹿市にある『寿楽園』である。

看板には「三桝屋」座長市川謙太郎とある。 当時、祐希は「大衆演劇」については門外漢であった。

事実、「三桝屋」も市川謙太郎も知らない。大衆演劇に誘ってくれた友達がその辺を察して、芝居が始まるまでの休憩時間の間に、簡単に説明をしてくれた。

座長 真珀達也ましろ たつや
(2021.11 あがりゃんせ劇場)

「三桝屋」の前身は、「市川市二郎劇団」であると、話を始めた。 「市川市二郎劇団」は、平成30年に結成65周年を迎えた伝統のある老舗劇団で、市川市二郎の名跡は、約100年の伝統を持つ。

「市川市二郎劇団」では、代々、座長は市川市二郎である。 もともと、初代の市川市二郎は、寂しいことではあるが、芝居の最中に舞台で死んでしまった。遺言をうけて、その時の二代目をしていた市川市二郎は、急遽、一座を率いることになるが、石炭から石油へのエネルギー革命による筑豊の斜陽化にともなう不況のあおりを受けて、残念なことに劇団は、解散してしまう。

そして、二代目の市川市二郎は、二代目の樋口二郎劇団のところに客分として入り、共に活動をするのである。いわゆる2枚看板であった。

そこで市川市二郎は、ファンであった光子と結婚する。そんな折に、初代の市川市二郎以上の人気と、大衆演劇界の後押しもあって、二代目の市川市二郎は、初代の市川市二郎を名乗ることになる。

それで、二代目は息子の市川市二郎(市川よしみつ)になった。よしみつには兄弟がいる。 よしみつの下が、かずひろ、えいじ、そして、けんたろうとつづく。

当時、二代目の市川市二郎(市川よしみつ)が、市川市二郎劇団の座長をしていて、市川かずひろは「劇団華」を、そして市川英儒は「優伎座」を率いている。

そして、平成12年から座長をしていた市川けんたろうのもと、平成16年(2004)に、「市川市二郎劇団」から「三桝屋」に改名されている。

と、「大衆演劇」通の友達から色々と説明があったが、いよいよその「三桝屋」の公演が、始まる。

座長 真珀達也ましろ たつや
(2021.11 あがりゃんせ劇場)

ブザーがなり、まずは芝居がはじまる。祐希の期待がいやがおうにも高まる。

芝居は古典的な「笑いあり涙ありの人情芝居」であったが、大衆演劇の芝居の魅力を十分に満喫した。

次は舞踊ショーである。 影アナで座長の紹介があって、舞台の中央に飛び出す謙太郎、艶やかな女形だった。

祐希はハッとした。
「なんだ、この美しさは」
祐希の美しさに対する感覚は、常人の域を超えている。 この女形には感動を超えて、憧れすら感じた。

それから何回か劇場に足を運んだ。 送り出しの時に、座長とも握手もした。そんな瞬間の喜びを今でも覚えていると祐希はいう。

座長も、この青年が気になっていた。 「きっとこの世界に興味があるのであろう」 そして座長は考えた。 あの青年は、年も若い。タッパもある、声もいい、顔もいい。これは役者にぴったりではないか。

大衆演劇の役者が持つべき3大要素は、「1声 2顔 3姿(所作)「である。
「うちの劇団で、役者をやってくれないかなあ」

そんな思惑もあって、座長と祐希の話し合いが、何回も持たれた。 しかし祐希にはⅭⅮデビューの話が秒読みの状態にある。 「どうする、祐希!」雷鳴を伴った天の声がする。

(続く)

プロフィール

小野直人

小野直人おの なおと

生年月日 1953年

1953年 滋賀県大津市生まれ。日本大学・農獣医学部卒業。
小野牧場オーナー、総合学習塾 啓数塾塾長、構成作家(テレビ、ラジオ)を経て、現在は、あがりゃんせ劇場の木戸番として、多くの大衆演劇の劇団や幅白い大衆演劇のファンと交流をもつ。「KANGEKI」で「木戸番のエッセイ」を連載中。

劇団情報

三桝屋

平成30年(2018)に結成65周年を迎えた伝統ある老舗劇団。 市川市二郎の名跡は、約100年の伝統を持つ。 平成16年(2004)に「市川市二郎劇団」から「三桝屋」に改名。 劇団オリジナルのお芝居も多く、劇団のお芝居と伝統を大切に受け継いでいる。 主役=座長にとらわれず、「みんなが主役」をつとめ、若い座員達の成長と活躍も目が離せない。 令和3年(2021)に真珀達也が新座長を襲名。

三桝屋公演予定

劇場情報

スパリゾート雄琴 あがりゃんせ

滋賀県大津市苗鹿3丁目9-5

スパリゾート雄琴 あがりゃんせ公演予定