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KANGEKI2021年10月号Vol.62

旅芝居ささえびと第1回よしかわ天然温泉ゆあみ支配人小野田圭さん

劇場:よしかわ天然温泉 ゆあみ取材日:2021年9月5日
旅芝居ささえびと 第1回 よしかわ天然温泉ゆあみ支配人 小野田圭さん

劇団情報ギッシリの「かわら版」を発行

小野田圭おのだ けいさん

この5か月、埼玉県吉川市のセンター「よしかわ天然温泉ゆあみ」(以下、ゆあみ)の動きから目が離せなくなっています。

同施設では2018年から大衆演劇公演を行っていますが、2021年6月から、「ゆあみもさく座かわら版」の発行をスタート。

かわら版の内容は、劇団員全員のプロフィール、劇団のアピールポイント、座長のおすすめ食事メニュー、日常スナップなど劇団情報が満載です。月が変わると「まだ今月のかわら版、出ないの?」と催促されるほどの人気アイテムになっています。

名物のかわら版は、取材時点で6月号、7月号、7月増刊号、8月号、8月増刊号、9月号を発行。一つ一つに思い出の詰まった力作

また同時期に、劇団とコラボしたイベント企画も始まりました。支配人の小野田圭(おのだ・けい)さんは、劇団やお客さんへの愛のあるツイッターでも人気者です。大きな変化を迎えた、ゆあみへ伺いました。

ゆあみ もさく座

転機は5月末「覚醒したのかもしれません」

 

小野田さんは、長年、ゆあみにお勤めなんですか。

小野田圭さん(以下 小野田)

私はもう、20年います。

 

20年!施設の顔のような存在なんですね。

小野田

主(ぬし)みたいなものです(笑)。ゆあみがお芝居を始める前はビンゴ大会とかをやっていて、私が司会をやってました。だから、みんなでわいわいやるのは、もともと好きだったのかもしれません。

 

2018年10月に大衆演劇公演が始まりました。

小野田

うちの運営会社が変わって、湯本グループが親会社になったんです。親会社が以前から『行田・湯本天然温泉 茂美の湯』(埼玉県行田市)で大衆演劇をやっていたので、じゃあ、ゆあみでも10月からお芝居やろうねって。それまでは大衆演劇っていう言葉すら、私は知らなかったです。

でも大衆演劇が始まっても、自分の中ではあくまで『仕事』でしたね。今までの業務の他に、大衆演劇関係の業務が乗っかってくるわけじゃないですか。正直に言って、そのときは自分がやりたいことだっていう風にも思ってなかったです。

なのでこの3年間は、もちろん基本的な活動はしていたんですけど…。正直な話、今年の6月から、急に今の形になったと思うんですよ。外から見たら、いきなり、なんか動きがおかしいな?っていうくらいの勢いになったんじゃないかと(笑)。

 

今年、何があったのでしょう。

小野田

一つ、転機があるんですよ。5月に劇団鯱さんが来たんです。鯱さんは今回うちで2回目の公演だったんですけど、1回目のときは朝陽政次座長とよく打ち合わせをさせてもらっていて、宣伝のポップを作ったり、自分なりにやっていたんです。でも、今回はそれができなかったんですね。

というのは会社の体制が変わって、私がフリーでいられる時間が無くなっちゃったんです。コロナ禍なので、人員制限の部分もあって。すると、楽屋に顔も出せないし、お芝居を観ることもできなくて。

ようやく月末に政次座長のところに挨拶に行けました。政次座長はすごく気さくな方だし、お話もさせていただいて、自分の中でも本当に大好きな劇団さん、大好きな座長さんなんですけど、『今回なかなか顔出せなくてすみません』って話したんです。

そしたら政次座長は、実は劇団の中では、今回の支配人、塩対応じゃない?嫌われてしまった?と心配していたと。『そうじゃないんです、今月はこういう事情があって、時間がなかったんです』と説明したら、『それを聞いて安心したよ、言ってくれれば良かったのに』って言って下さいました。

 

劇団さんのほうも寂しいと思われていたんですね。

小野田

コロナ以前は、劇団さんが外出するときに顔を合わせたりすることもあったんですけど、今は劇団さんも楽屋から寮まで直行直帰みたいな生活になりました。

なので、本当に顔を合わせる機会がなかったんです。こちらの仕事の事情だったんですけど、政次座長は『言ってよ、そんなの』とおっしゃってくれて…。そのことが、自分の中ですごい悪い事したなあ、これじゃダメだと思いました。

そのとき政次座長に約束したんです。次に鯱さんが来てくれたときは、私はもっとマシになってるはずですよって。そしたらおっしゃってくれたのが、『何でも本気でやればいいんだよ。一生懸命やりなよ、本気でやれば絶対返って来るから』って。

その時点で頭の中にはかわら版のアイディアがあったので、実はこういうの作ってみたいんですってお話したら、『ああ、そりゃみんな喜ぶよ』って。すごく嬉しかったですね。

 

聞いているだけで、心に刺さるお話です。

小野田

そして翌月、6月の藤間劇団さんから、かわら版を作り始めました。藤間智太郎座長にも色々勉強させていただきました。

やっぱり座長を張る方とお話するのは、すごい勉強になります。自分を大きくさせてもらっている感じがしますね。今までの自分だったら、かわら版作りやイベント企画なんてやっていないと思うんですよ。なんでしょうね、何か覚醒したのかもしれない(笑)。

ただ自分も、『仕事』って思ってたらできないんですよ。自分の上司にかわら版作りなさいよって言われたら、できない。自分が趣味で作ってるようなものなんです。

 

6月くらいから、ゆあみ公式ツイッターのテンションもいっぺんに変わったと感じていました。てっきり、中の人が替わったのかと…。

小野田

そう思いますよね、絶対(笑)。これまでツイッターは、その日の担当の社員が演目を上げるというツールでした。でも、ただ演目を上げるだけ、変更事項を上げるだけっていう、最低限の発信しかしてなかったんです。だけど、これももっとやったら面白いんじゃないのって思って、やり始めました。



かわら版を通して、お客さんの劇団愛に感動

 

6月から始めた「ゆあみもさく座かわら版」、話題沸騰になりました。

記念すべき第一号。
劇団員全員のプロフィール、座長に聞きましたコーナー、座長おすすめメニュー、スナップなど、4ページに内容が詰まっている
小野田

6月号は初めてだったので、今見ると作りがすごく粗いんですが、藤間劇団さんのご協力で作ることができました。

 

かわら版のアイディアはどのように生まれたのでしょう。

小野田

藤間劇団さんは、前月の5月が行田公演で、続く6月がうちでした。関東に来られるのは本当に久しぶりだったんです。

行田はかなりお芝居のお客さんがついている施設ですが、ゆあみは3年前にお芝居を始めた施設なので、お芝居好きな地元のお客さんはまだまだ少ないんですよね。

その人たちに、初めての劇団さんのことを少しでも知ってもらおうと。じゃあ、劇団さんを紹介できるものをちょっと作ってみようかなという発想です。

 

座長や役職のある人だけでなく、座員全員のプロフィールがわかるのが嬉しいです。

小野田

お客さんにとって、座長や副座長や太夫元の名前と顔は一致しやすいと思うんですけど、他の座員さんって初めてだと名前と顔が一致しないんですよね。

お客さんだけでなく、うちのスタッフも最初はそうです。なので、この形にしました。6、7、8、9月号と作って、今のところ、どの劇団さんも全員にプロフィールを書いてもらっています。

 

楽屋の様子や稽古風景がわかる、スナップコーナーも楽しいです。

小野田

スナップは、特に照明さんとか裏で頑張っている方にもスポットを当てたいという思いがありました。

智太郎座長にお話したら、『それは嬉しい』と言って下さって。裏方さんは、どの劇団さんでもぜひ紹介してあげて~と喜ばれることが多いですね。

 

小野田さんお一人で作っているのでしょうか。

小野田

いえ、他のスタッフと相談しながらです。かわら版を作りながら、スタッフの中でもどんどん盛り上がっていったんですよ。

初めに考えたのは、劇団紹介、劇団のプロフィール、あとはゆあみでのイベントを載せようかと。ただ、それで試しに作ってみたら面白くなかったんです。

そこで副支配人に、『これさー、作ったんだけど面白くないんだよ。これじゃあ喜んでもらえないと思う』って相談しました。

そしたら、『スナップ写真とか入れたらどうですか』とか、『座長がゆあみの食事メニューで好きなものを載せたら』とか、色々意見が出てきました。

 

ゆあみのスタッフさんの中で、相談されて作ってらっしゃるんですね!

小野田

1人じゃ考えられることは限られてますし、アイディアはみんなに聞いたほうが出てきます。
ただ、どうしても自分がやりたくなったときは、バッと思いつきで言っちゃうときもありますけど(笑)。お客さんからの反響も大きくて、本当に喜んで下さるんだなと。

 

続く7月号の劇団駒三郎、8月号の劇団美松は、月初めのかわら版に加えて、月末に「増刊号」が出ました。増していく情熱にビックリしました。

「増刊号」は月末に発行。写真のみで構成。7月増刊号ではたくさんのゲスト公演を振り返った
8月増刊号では劇団員の誕生日公演を大きく掲載するなど、その月によってページ構成が異なる
小野田

それを言っていただいて、ありがたいです。かわら版がお客さんに喜んでもらえて、どんどん自分のテンションも上がっていったんです。

かわら版に載せる写真を、お客さんからたくさん提供いただくので、お客さんと写真のやり取りをするんですよね。その中で、お客さんの劇団愛ってすごいんですよ。ものすごく感じました。

 

わかります!

小野田

それで7月20日を過ぎたくらいに、副支配人と話していて、『うちの7月の思い出っていうことで、写真だけ載っけるやつ作ろうか?』ってポロッと言ったら、『それ面白いですよ』って。そこから慌てて、ツイッターでお客さんに『写真をください』ってお願いしました。

お客さんから、また写真をバーッと頂くことができて。公演残り5日ぐらいで、なんとか7月増刊号ができました。お客さんの中にはちゃんとファイリングしてくれている方もいるみたいで、また喜んでもらえたんだなーと。

 

8月増刊号では、写真の種類がさらに増えています。

小野田

すごいボリュームになりました。というのは、自分が大衆演劇に対して本気でやり始めて、3か月目じゃないですか。お芝居や舞踊を観る時間も増えて、ああ、良いなあって思うようになって。自分の目で舞台を観て、これを入れたい、あれも入れたいっていうのが出てきちゃったんです(笑)。

藤川真矢さんの誕生日公演のこのシーンの写真が欲しいとか、ラストショーの『田原坂』をどうしても入れたいなーとか。ツイッターで『この演目の写真をお持ちの方いませんか?』って呼びかけて、提供していただいて、じゃあこれを使おうってなった後に、時間差で『使って下さい』って方もいらっしゃいます。むげに断りたくないんです、これは気持ちの部分なので。

なのでお写真使って下さいというお客さんは、基本的に皆さん、なるべく写真を載せたいなと。

 

ギッシリの紙面には、お客さんと小野田さんの気持ちが詰まっているんですね。

小野田

頂いた写真を、これも、これも使いたいって思ってはめこむと、思いのほか入んないぞって(笑)。でも小さくしちゃうと、画像がつぶれちゃうじゃないですか。じゃあやっぱりこれがギリかな~…とか考えているのが楽しいんですよね(笑)。

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