KANGEKI2022年9・10月合併号Vol.72

旅芝居ささえびと第4回がんこ座代表取締役・井口光史さん「何よりも、お客さんが来やすい劇場にすること」

劇場:大衆劇場 がんこ座取材日:2022年6月18日
旅芝居ささえびと 第4回 がんこ座代表取締役・井口光史さん 「何よりも、お客さんが来やすい劇場にすること」

駅に着いたら電話をください~送迎バスはお一人から

大阪府泉佐野市にあるがんこ座は、1階が居酒屋「旬彩がんこ屋」、2階が大衆演劇場「がんこ座」というユニークな建物です。取材班が井口社長と約束した10時半より少し早く到着すると、居酒屋のスタッフさんが「社長は今、お客様の送迎に行っているんですよ」。

しばらく待機していると、がんこ座社長・井口光史(いぐち みつちか)さんが帰ってきました。

社長 井口光史(いぐち みつちか)さん

バスから降りてきたお客様のグループは、「社長、ありがとう」と親しげに言葉を交わしています。インタビューは、まず送迎バスのことから聞いてみました。

 

井口さん自ら、毎日運転されているのですか?

井口

はい。第一に、お客さんが劇場に来やすい環境を作ってあげたら、きっと来てくれると思いまして。近くの駅が、泉佐野駅・りんくうタウン駅・羽倉崎駅と3駅ありますけど、3つの駅から劇場まで、送迎バスを出しています。駅に着いて劇場に電話して呼んでいただいたら、お客さんが一人でも行きます。どの駅からも徒歩で来れない距離ではないんですけど(※)、やっぱりバスがあったほうが良いだろうと。

※泉佐野駅から徒歩14分、りんくうタウン駅から徒歩14分、羽倉崎駅から徒歩16分です。by取材班

 

1人からでもバスを出してくれるのは、とても来やすくなりますね。毎日何時に迎えに行かれるのですか?

井口

いえ、最初の頃は時刻を決めてやっていたんです。でも、定刻通りにバスを出していると、お客さんからの電話が入ったその時間に迎えに行けないんですよ。それでお客さんからお叱りを受けたことがきっかけで、じゃあ時間を決めないで、駅に着いて電話をいただいた方から順番に行こうと。

 

なんと!

井口

運転するほうは大変なんです(笑)。一日の間に何回も行かなきゃいけないので。でも、がんこ座が来やすい劇場であれば、もっと来てくれるだろうと。

がんこ座の送迎バスを運転する井口さん。お客さんの待つ駅と劇場を、その日の電話の数だけ往復します
 

お客様は安心だと思います。近くの駅まで行けば、ここへちゃんと連れて来てくれるのですから。

井口

電話すれば迎えに来てくれる、来やすい劇場や、ということがお客さんの間に浸透して、皆さん来て下さるのじゃないかと思います。

2カ月の突貫工事で劇場が誕生

 

改めて、劇場の成り立ちを振り返ります。「がんこ座」は2017年1月に始まりました。

井口

今年で6年目です。2月に5周年の大会をやりました。早いですね~。

がんこ座ツイッター(@hlHaLK7LGy105v6)より。2022年2月17日に行われた5周年の大会
貸し座布団の上には、1周年記念と3周年記念の座長大会の手ぬぐいが飾られています
 

井口さん自身、もともと大衆演劇が大好きと伺っています。

井口

私の地元は和歌山なんですが、子どもの頃から、祖母が大衆演劇が好きだったんですよ。学校から帰ってきたら、私は必ずすぐに劇場に連れて行かれていました。ほとんど毎日のように。

そのうち自分も面白いなあと夢中になって、好きで観るようになりました。たしか小学校2年生か、3年生の頃ですね。それが4年生になったら、少年野球をするようになって、あまり劇場に行かなくなりました(笑)。

それからは、しばらく大衆演劇から離れていたんですけれども、引退して自分の時間ができた頃に、近くに劇場ができまして。子どもの頃に行ったことあるなぁ、懐かしいなぁと思って、また、ちょくちょく行くようになりました。

 

ご自分で劇場を作られたきっかけは?

井口

もとはうちの息子の考えです。『大衆演劇と飲食店とを、並行させたら面白いんちゃう?』って。息子は和歌山で飲食店をやっているんですが、この地域でも飲食店をする場所を探していて、ここを見つけました。

ここ、前はステーキハウスだったんですよ。いま劇場になっている二階は、肉の加工をするところでした。

がんこ座外観
 

意外な前身です!

井口

その肉の加工の機械を取り出せば、ほとんど潰さずに劇場にできるスペースがありました。私も、飲食店とコラボした形だったらちょっと面白いかなあと思いまして。

木の温かみが印象的な、劇場エリアの入り口(2階)
居酒屋エリア(1階)。カウンター席とテーブル席があり、一人で来るのも、友達同士で来るのもおすすめです
 

背景幕や道具は、ゼロから揃えられたのですよね。

井口

そうなんです。しかも、ここでやろうかという話が決まってからオープンまで、二か月くらいの突貫でした。息子に言われて、私がここを見に来たときは、もう業者を呼んでいたんですよ(笑)。『早くせなあかんから、先呼んどいた』って。だからバタバタですよ。

背景幕や照明は、最初は東京の篠原演劇企画さんにお願いして、手配してもらいました。1月1日が杮落しで、劇場がなんとか出来上がったのが12月の28日か29日ぐらいです。ギリギリ。よく出来たなと思いました(笑)。初日を後にしないといけなくなるんじゃないかと思った(笑)。

 

超突貫工事でしたね!

井口

しかも、それまでは舞台を客席から観る側でしたから、表ばっかり見ていて、裏が全然わからないでしょ。楽屋とか。それで興行師さんと一緒に、浪速クラブ、高槻千鳥劇場、朝日劇場に行って、楽屋の作りを見せてもらいました。

大きな劇場のように完璧には行かないですけど、参考にさせてもらって、たとえば鬘を置くための場所とか、劇団が使いやすいようにしなきゃいかんと。

 

その甲斐あって、劇団さんからも、がんこ座は過ごしやすい劇場だと評判です。

井口

オープンした後になって、劇団さんから『こういう風にしてくれたら使いやすい』ってリクエストを聞いて、それで初めてアッとわかったこともたくさんあります。たしかにそうやなあと。そうやって、ちょっとずつ改善してきました。

ひと月間、ここでやってくれるんだったら、劇団さんにはやっぱり気持ちよく公演してもらうというのが一番良いことなので。

 

公演された皆さん、がんこ座の海老フライがお気に入りだと聞きます。

井口

でかい海老フライ、うちの名物料理ですから(笑)。

名物・海老フライ定食1350円。迫力の海老フライがどーんと2本
劇場の入場券で、ドリンク一杯と交換できるのも嬉しいポイント

次ページ:お客様の声で「ほな1回計画しましょか」です!

アトムプリント Tシャツなど各種衣類へのオリジナルプリント
アトムボックス 衣装ケース メイクボックス
役者さんにプレゼントしよう!劇団プレゼント 販促・舞台グッズ