旅芝居ささえびと第8回橘劇団マネージャー・鈴木優子さん劇場・劇団・お客さんから信頼される”スーパーマン”
「橘劇団」に行くと、長いポニーテールをひらり翻し、お客さんを案内する鈴木さんの姿があります。笑顔を交わしつつ、手は素早く予約表を確認。劇団の「窓口」と「裏方」を両方務める、THE・シゴデキなマネージャーは、楽屋でも動き回っていました。
着付けをし、鬘を整え、着物を畳み、その間に炊事。「取材、私で良いんでしょうか?」と言う鈴木さんに、取材班は粘り強くオファーし、このたび登場していただきました。
取材日の朝には、橘劇団の子役・橘蓮斗さんの小学校入学式がありました。午前中は劇団員総出で入学式に出かける中、マネージャー・鈴木優子さんは池田呉服座の楽屋に残り、子どもたちと一緒に待機していました。
「今日はよろしくお願いします」と取材班と挨拶を交わす間も、子どもたちが「優ちゃん」と鈴木さんの手を引きます。
開演時刻は13時。12時半になると、木戸に立ちます。
お客さんに鈴木さんの評判を聞くと、「なんでもできる人。木戸も、予約の窓口も、着付けも完璧です」。 裏で表で走り回る、マネージャーの仕事に取材班が密着。芝居の間に、これまでのお話を伺いました。
美容師時代、30分でしていた着付けを3分でやる
橘劇団に長くいらっしゃいます。
はい。だいたい20年になります。
元は何をされていたのですか。
美容師です。生まれは北海道なんですが、東京に出てきて修業して、新宿で自分のお店を出していました。
お店を持っていたのですね!
あるとき浅草大勝館(※編集部注 2007年閉館)の社長が、東京中の美容室に、橘劇団の招待状を送ってくれたことがあって、それで初めて大衆演劇のことを知りました。招待の日は空いていたし、ちょっと行ってみようって行ったら、ハマりました。
いまの座長がおいくつぐらいの頃でしょうか?
私が知り合ったとき、三代目は14歳でした。
本当に昔からご存じなのですね。
そうですね。観劇に通ううちに、太夫元の北條寿美子先生と仲良くなりました。こんな商品ない?とか美容関係のお話をするうちに、楽屋を手伝うようになりました。三代目の着付けをしたり、総座長の奥さんがいないときは総座長の着付けもしたり。
でも、美容師としてやっていた着付けと全然違います。成人式でも30~40分かけて着付けるものを、3分で着付けなきゃいけないので、最初はどきまぎしました(笑)。それでも一応、基本は分かっているので、飲み込みは早いほうだったと思います。
その頃から、総座長の奥さんには本当に良くしていただいています。総座長の奥さんがいるから、いるようなものです。そう言うと総座長が怒るんですけど、俺は何なんだって(笑)。
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