KANGEKI2022年7月号Vol.70

特別公演劇団美山座長里美こうたインタビュー

劇場:梅田呉服座取材日:2022年4月26日
特別公演 劇団美山 座長 里美こうた インタビュー

四代目座長として、役者として。
あふれる思いを今語る

座長 里美こうたさとみ こうた

副座長になりたかった

 

この度は四代目座長襲名おめでとうございます!座長になるように告げられた時の気持ち、座長になってから変わったところはありますか。

里美こうた座長(以下 座長)

僕自身は特に変わったことはないのですが、周りの目が変わったと思います。今までは大丈夫なことでも、座長になってからは許されないこともあり、気を抜かないようにしないとと思います。でも自分自身は本当、変わらないですね(笑)。

 

座長になりたいと思っておられなかったそうで…

座長

僕の夢は副座長になることだったんです。それは座長(里美たかし総座長)がいたから。座長になるなんて全く頭になくて、副座長が憧れでした。

若座長時代はお客様から『若座長では一番だね』って言ってもらえたんですけど、じゃあ座長の一番は?って。今度は座長の一番になれるように頑張ろうと思っています。

左より 里美こうた、里美たかし

上演3時間!里美版「中村仲蔵」秘話

 

お芝居「中村仲蔵」を取材させてもらいながら、だいぶアホやなと…あのすみません、これは褒め言葉です!!つまり、この方はどんだけお芝居が好きなんだろうと感じ入ったという意味でです。

座長

その通りです。まんまです(笑)。

 

このお芝居を選ばれたのは。

座長

最初はうちの花形(里美花太郎花形)が持ちかけてくれたのがきっかけです。カップル祭りのネタにどうかって。そしたらタイミングよく去年の12月にテレビ放映されて、花形のお父さん(扇子家玉四郎座長)がDVDに録ってくれまして、それを大空さんに送ったらものすごく感動して『あんたこれ誕生日に絶対やるべき!』って。僕も改めて観て、これはやりたい!と。

 

里美版としてオリジナルストーリーや演出がたくさんありましたね。

座長

はい、まず登場人物はみんなの名前にして、自分の人生に置き換えて作りました。

 

それぞれが仲蔵への思いを語るセリフは、アドリブでしょうか。

座長

はい、アドリブです。台本は僕が書きましたが、あの部分はみんなに思ったことを言ってとお願いしました。みんな頑張って作ってくれて。お芝居のセリフなのか本当のことなのかは?です(笑)。

 

見どころがたくさんありますが、あえて挙げるならどの場面に思い入れが強いですか?

座長

みんなの見せ場を作れたところです。そのせいでって言っちゃいけないんだけど、結果、どんどん長くなって3時間に(笑)。カットすることも出来たんですが、口上もみんな出てなかったので、その分、作りたかったんです。

やりたいこと盛り込みまくりの舞踊ショー。揃えた道具も半端ない!

 

ショーもすごく盛り沢山で、明日からすることないのでは?と思うくらいでした(笑)

座長

石見神楽(いわみかぐら)のお兄ちゃんたちにお願いして、この日のために島根から来てもらいました。大蛇は3体ならうちにもあるんですけど、みんな回る時間がなくて。前日に打ち合わせして、立ち回りを入れたり、昼夜でも演出を変えています(すごい!)。

島根県より石見神楽チームとの共演
 

椿裕二座長(劇団大川)が、こうた座長に向けて歌っている「花道一人旅」の語り部分が、新しくなっていましたね。

座長

僕が若座長の時に録音していただいてたものから、今回またお願いして、座長バージョンを作っていただきました。この曲は、自分の祭りでも必ず踊りたいし、踊っています。観ている人はまたかって思っておられるかもですが(笑)、これだけはどうしても。

椿裕二座長が歌う「花道一人旅」で踊る里美こうた
 

ラスト舞踊も、旅立ちと感謝に溢れたこの日にぴったりの曲ですね。

座長

『カイト』という曲です。先月の公演地の湯守座で、お風呂でちっちゃい子供たちがわーって来て、『兄ちゃん何してるの?何踊るの?』と言われたので『何が好き?』って聞いたら『カイト』って教えてくれたんです。どんな曲なんだろうと思って聞いたら、ものすごく好きになって。

きれいな青空が浮かんだので、紗幕で空のイメージにして、照明のかずまさんが『シャボン玉きれいじゃない?』って教えてくれて、取り寄せました。そこしか使わないのに(笑)。

ラスト舞踊「カイト」
 

本当にわずかの時間の演出のためにたくさん道具を揃えられたのですね!

座長

紗幕も1分、シャボン玉も数分飛んだだけ(笑)。

 

背景幕もたくさんで、これだけの仕込みを、ほぼパーフェクトにされたわけですね!

座長

トラブルがないように準備しました。今月の12日から舞踊の稽古、22日からお芝居の通し稽古をして、23、24日。その間、荷物(移動の準備)もあるので、その時間も取って、前日の25日はいよいよ全部合わせて。『美3』の3人舞踊が昼夜あったので、それを全部合わせたら朝6時(笑)。

かーくん(カムイ)はホテルへ帰って、大空さんはホテルを予約してなかったので一緒に舞台で寝ていました(笑)。

左よりカムイ☆龍虎、里美こうた、宝海大空

「美3BOYS」の絆

 

お三方は本当に仲が良いのですね。

座長

何ヶ月も前から台本とショーの曲を送って。こういう無茶ぶりはこの2人だから言えることです。カムイくんは松井誠さんの大舞台が入っていたし、大空さんも毎日の舞台で大変な中、こちらに来てくれました。

 

「美3BOYS」はプロダクションの企画でたまたま集められて、それまでは全く接点はなかったのですよね。

座長

そうです。

 

そこから仲良くなられたのでしょうか。

座長

稽古のおかげですね。13~14歳の頃、1年通して普通に休めたのは年に2回。でも苦とは思ったことはなかったし、それが当たり前でした。

毎月の『美3』の稽古で顔を合わせるので、喋らなきゃいけなくなる(笑)。かーくん(カムイ)だけは色々な人と喋ってたけど、僕と大空さんは人見知りなので全然喋らない(笑)。かーくんがおらんかったらずっと喋ってなかったかも(笑)。

年末は全部稽古で、その間、みんなでボーリングに行ったりして遊びました。でも喋るのは結局舞台の話だったり(笑)。3人のうち誰が欠けても嫌だし、何かあれば、絶対助ける。何も出来なくても声をかける。2人もそうしてくれます。

 

結果的に素晴らしい出会いだったのですね。

座長

はい。今となっては運命だったと思います。

左より カムイ、里美こうた、宝海大空

いろいろな役を演じられるようになりたい

 

とにかくお芝居が好きな座長ですが、そのエネルギーの源というか、座長の役者魂に火をつけるのはどんなものが挙げられますか。

座長

十代の頃から歌舞伎が好きで、そこから色々な舞台を観たくなって、劇団新幹線なども行きました。幕間も無くしてお芝居を途切れないようにするようになったのは、劇団新幹線の影響ですね。僕が作るものはできる限りそうしてます。お客さんとして見た時、ダレないなって思ったので。

 

一昨年浪速クラブで拝見した「誠の武士道」、また「港の星空」など、どんでん返しのストーリーが印象深かったです。

座長

『誠の武士道』、懐かしいなー(笑)。そう、その時はそういう展開が好きでしたね。この人が?というような人が真犯人とか。

 

座長がこれまで演じられたお芝居の中で、特に気に入っているものはありますか?

座長

今回の『中村仲蔵』は演るなら作り替えないといけないので、最初で最後です。後は『最後の忠臣蔵』。これも大空さんに教えてもらったんです。大空さん、映画とかよう見てるんですよ(笑)。自分にはまだまだな役なのですが…。

 

つっころばしからどんどん骨太な役をされるようになっていますね。

座長

色々な役をやってみたいと思います。この間の副座長との二人祭りの時『港の星空』では次郎長を演らせてもらいましたが、普段の自分の役じゃないんです。

二人祭りの時は、普段しない役をさせてもらう機会が多くなりましたね。『中村仲蔵』も、次に出来る機会があれば、大空さんがやっていたお春とか、謎の侍とか、いずれは伝九郎もやってみたいです。

座長 里美こうたさとみ こうた

いつか大舞台で

 

これからの夢、やってみたいことをお聞かせください。

座長

以前に総座長が新歌舞伎座でやった時(劇団美山里美たかし座長20周年特別公演/2018年)に、いずれこういう舞台でやってみたいと思いました。『美3』の時にもやったことがあるんですけど、拍手が違うんですね。大舞台ならではの拍手の音が。

 

構想中のお芝居はありますか?

座長

今まだないんですけど、例えば『道頓堀物語』。大空さんが教えてくれたものですが、こんな風に色々なものを教えてくれる人が欲しいですね。

悪役、三枚目、おじいさんなど、どんな役でも演じられるようになりたいです。脇役がしっかり役作りをしないと、主役が目立たない。ちょっと質問とはずれてしまいましたが。

 

いえいえ!4月22日のお芝居「婚霊」での、座長が演じられた村長役のこしらえがすごくて(怪しい老人にしか見えない)、登場された時、誰かわかりませんでした(笑)。そういう役作りの中で、手応えを感じられたものはありますか。

座長

「忠臣蔵」ですね。うちの古いお芝居で、僕は浅野内匠頭役を演らせてもらうんですけど、昔は苦手だなって思っていた役が、好きになってきましたね。

座長 里美こうたさとみ こうた

私物はキャリーケース2つ

 

ここまでお話を伺って、本当に舞台漬けであることが伝わってきました。舞台以外の趣味や、旅行で行ってみたいところはありますか。

座長

あまり考えたことないですねー。普段のものにあまり興味がないもんで、服とかも一番ダサいと言われるんですよ(笑)。着れたらいい、夏は涼しく冬はあったかければいいって感じなので。

 

そういえば、先ほど副座長も「うちの劇団は舞台道具ばかりで私物が少ない」とおっしゃってましたが…

座長

僕はキャリーケース2つ。夏になったら1個になります(笑)。それで全部ですかねー。

座長 里美こうたさとみ こうた

いろいろあって今がある

 

6歳で入団してから20年という月日の中で、辛かったこと、役者をやめたいと思ったことはありますか。

座長

自分がうまく出来なくて悔しくて泣いたことは何度もあります。でも、舞台を辞めたいと思ったことは一度もないです。

一昨年、劇団を出た時も、舞台が理由で出たわけではないんです。やめるという感覚じゃない。でも、居る場所じゃないって思ったんです。周りではなくて、自分自身の思いとしてです。でも、勝手な言い方になってしまうかもですけど、そこから劇団がガラッと変わったのではないかなと思います。

1ヶ月後には帰ったので、やらせじゃないかとか憶測が飛び交いましたが、もちろん違います。みんなが大変だったのも知っていますし、自分が正しいとは言いません。一度は崩れたけれど、また少しずつ積み上げて積み上げて、今のこの形が出来上がってきた。

色々なご意見をいただきます。僕自身も色々なことを考えることができた。初めて何もしない1ヶ月を過ごし、初めて自暴自棄になりました。

色々なことを経験して、色々なところに頭を下げました。その時に、色々な人に優しい言葉をかけてもらって、本当に『中村仲蔵』じゃないですけど、色々な人が助けてくれて、諭してくれて、やっと戻ることが出来て、今に至ります。

中村仲蔵(里美こうた)
 

そのまま去るのも戻るも覚悟のいることだったと思います。その後の舞台を拝見する側のわたしたちも、そのただならぬ覚悟を受け取らせてもらっているように思います。

座長

ありがとうございます。これからもこの劇団で、みんなで色々なことに挑戦していきたいです。挑戦するには目標を見つけないといけないですから。ありがたいことに教えてくれる人がいてくれます。

『中村仲蔵』でも、大空さんに教えてもらって増やした場面があるんですよ。増えすぎて、聞かなきゃよかったって思いましたが(笑)。

座長 里美こうたさとみ こうた

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