読者投稿第9回しっとりと心を動かされる春陽座のお芝居
読者の皆様に思いを語っていただくコーナー
第9回はひよさんに春陽座の魅力について寄稿いただきました！
優雅で上品。
じんわりと人の心を打つ。
主人公ばかりでなく、登場人物みんなに優しさがあって、それをきちんと聞かせてくれる。
春陽座さんの芝居は、私にとってそんな時間です。
2012年秋の東京公演で。
その優しいお芝居に惹かれて、かれこれ9年ほど、舞台を拝見しています。
いつかの口上で、澤村新吾初代がおっしゃっていた。
「悪役、たとえ悪い親分にでも、ちょっとだけいいところがある、これが春陽座の芝居でございます」
■登場人物が優しい
2018年11月、心座長のお誕生日公演。
はるばる夜行バスで向かった和歌山県・ぶらくり劇場！
お芝居は「桐の木」でした。
大衆演劇ファン必修のテーマ、【生みの親と育ての親】。
貧しいながらも愛情いっぱいに育てられた子を、生みの親が返してくれと言いに来る…
ストーリー上、どうしても悪者になってしまう生みの親。
けれど春陽座さんは、生みの親夫婦の心の優しさ、道理をきちんと描いてくれた。
「どうかわしらを他人とは思ってくれるな。いつかこの子がお嫁に行く日が来たら、祝言の末席にわしら夫婦も加えておくれ」
最後はみんなが幸せになり、客席は泣き笑いで幕が閉じる。
最初に拝見した時、生みの親の心情のリアルさに感じ入りました。
子どもは取り返したい。けれど、今まで育ててくれた夫婦を踏みつけて、自分たちだけ幸せになれない…
春陽座さんの「桐の木」は、このテーマの一つの正解、最高の【落としどころ】を描いてくれたと思えました。
■心座長&かなさんという宝
そして春陽座さんには、至宝と言えるペアがいます。
まずは、二代目座長の澤村心さん。
「毎日が初演」と評されるほど、手を抜かれることのない座長さん。初演の芝居でも、お馴染みのお外題でも、同じように心をこめて演じられる。
純粋で情け深いお父さん（「八つき子」）、愛情たっぷりの片岡源五右衛門（「内匠頭切腹」）…心座長の演技をとおして、素敵な人物に何人も出会いました。
いついかなる時も上品で、穏やかで。
春陽座の名前にぴったりの方だと、舞台を拝見するたびに思わされます。
そして女優の筆頭、澤村かなさん。
「最高のヒロイン」だと勝手に思っています。
その美しさ、演技の上手さ、華やかオーラは、客席の涙腺をうるうるに刺激しまくりで。 「あんた、あたし治るよねえ、治りたい！」（「刺青奇偶」のお仲役）とかなさんが叫んだ瞬間、観客はお仲の幸福を願わずにいられません。
暖かい情が溢れる心座長、華そのものであるかなさん。
この上品な一対が春陽座の柱なのだと思います。
2020年は、7月のやまと座で名作「槍供養」に泣かされ、11月のぶらくりで「坂田藤十郎 お梶の遺言」（心座長お誕生日公演！満席のため補助席に着地）の上品×艶に酔いました。「大人がしっとりと心を動かされる」そんな春陽座芝居が大好きです。
■最後に
寄稿のお話をいただいた時、この号には新作「残菊物語」の特集が掲載されると聞きました。Twitterで見かけた時から気になっていた一本で、今から読むのが楽しみです。
上品な春陽座芝居×涙の残菊物語=想像するだに良さしかない。
特集記事も、未だ観れていない芝居も、出会える日を心待ちにしています！
ひよ様
春陽座さんのお芝居の魅力がたっぷり詰まった寄稿文、本当にありがとうございます！
ひよさんが書かれている通り、お芝居を通じて届けられる優しさや温かさは、劇団名に込められた「春の日差し」そのものですよね。
お芝居のタイトルをたくさん挙げてくださってありがたいです～
人情劇、歴史もの、名作もの、どれも春陽座さんらしい…と漠然とした言い方になってしまいますが、それ以外言いようがないような。それくらい確固たる世界、優しいけれど強いものを感じます。
紹介してくださったセリフも熱く真に迫っていて、それぞれの人物像が浮かび上がってくるようで、お芝居の情景を想像するのも楽しかったです^^
今回取材させていただいた「残菊物語」は初代澤村新吾さんの自信作とのこと、主役はもちろん澤村心座長と澤村かなさんで、まさに「しっとりと大人が心を動かされる」春陽座ならではのお芝居でした。
取材ページにたっぷりご紹介…しておりますが、2時間を超えるお芝居なので、たっぷりとは言えほんの一部です（笑）。お楽しみいただけると幸いです！
カンゲキスタッフ
