KANGEKI2021年3月号Vol.56

旅芝居女優名鑑第2回辰己小龍(5/6)

取材日:2021年2月9日
旅芝居女優名鑑 第2回 辰己小龍(5/6)

毎日がスペシャルな今。
仕事に誇りを持って

女性も前に出る時代

1ヶ月何の身入りもなかった日々。
素顔で歩いたら誰も気づいてくれない日々。
そんな頃と比べたら毎日がスペシャル!と、小龍。

女の子たち、自分を売り出してるなーって。
いい時代です、みんなに応援していただけて。
夢がありますよね。
夢がなければしんどくてやっていけない世界ですから。

うちの劇団では裏方は女の子の仕事で、みんなでワイワイ喋りながらやっています。
女の子たちに言うんです「自分に値打ちを持ちなさい」と。

仕事をいい加減にしたら、自分の値打ちが下がる。
自分の値打ちは自分で出す。
たとえ仕出しの役でも、私が演ったら仕出しじゃなくなるって!

左より辰己花、辰己小龍、辰己満月 (2018.11.11梅田呉服座)

受け継いだことを自分もまた

自分が父と母に憧れたように、自分も娘たちの憧れの存在でありたい。
それが女優・辰己小龍の1つの行動指針でした。

厳しく教えると反発するけど、憧れの人の言うことなら聞きますよね。
私がそうでしたから。
「あなたのお母さん素敵だね」と言われると自慢になるでしょう?

長女を役者にという思いを持っていましたが、今彼女は別の夢を持ち始めました。それがどうなるかわからないけれど、仮にでもこの世界に進ませてしまったら、他の道が断たれてしまう。
だから自分の夢を娘に託すのはやめようと思いました。

子供たちに伝えるために残してきた資料や映像。それは誰に。

私が父から学んだと言いながらも、間に入ってくださった先輩がいて、支えられてきました。
だから私も、若い子たちに引き継いで行こうかなって。
どの子がどう羽ばたくかわからないけど、それこそ我が子と思って大事に大事に…。

小龍の夢は劇団の若手が成長すること

この仕事をやり続けて、お客様に喜んでもらうこと。
私が父や先輩方からもらったものを、若い子たちに伝えること。
それが今の私の夢で目標です。

辰己小龍(2017.9.20@朝日劇場)

 



辰己小龍の個人舞踊『かもめはかもめ』は、印象的な舞踊の1つ。

真っ白な合羽に、ザッパーンと大きな波模様。
三度笠にも、波模様。

三度笠を足でからげたり、合羽をひるがえしたりする一連の股旅の所作が、なんとも優雅でエレガント。

結んだ赤い草鞋に決意が見える。
股旅ゆえの寂しさ、孤独。

それでいてどこまでも強く、揺るぎない眼…

女性ならではの股旅舞踊だ、と思いました。

2020.8.6@羅い舞座京橋劇場

「『泣いているより、涙を堪えて笑っている方がかわいそうに見えるやろ』と父が昔言ってました。
お客様の中には私のことを座長になれなくて、身を引いてかわいそうって思ってくださる方があるようです。それで得をしたり損をしたり…笑」(小龍)

脚光を浴びることはないと思いつつ、ひたむきに歩み続けた芸の道。

辰己小龍のような女優たちが歩いた後に、ひと筋の道がくっきりとあり、キラキラ輝きを放っています。

白地の裾に波模様が描かれた合羽。
曲を聞いて考えたと言う。

次はラストページ「写真で綴る辰己小龍」です!

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