旅芝居女優名鑑第7回澤村かな～春陽座～フォトコレクション（6/6）

「お千代物語」のお千代（澤村かな）は、客席後方から登場します。

暗がりの、誰の視線もない中で、お千代の演技は始まっていました。

ようやく帰ってきた故郷（舞台）を見つめて、首を上げる。身支度を確かめ、ハンドバッグと紙袋をひょいと持ち直して、少し早足で花道に向かう。ここでピンスポットがくるりと回り、嬉しそうに息を弾ませるお千代を照らす…。

最後列から一連の流れを見ていて、これだけでもお千代がどんな人間か、伝わりました。

「主演が嬉しいのではなく、この役はお前が良いだろうと選んでくれたことが嬉しい」

自分からは前に出ず、与えられた役を懸命に務め、見えないところでも演じ続けるかなさんは、実は職人気質かもしれない…そんなことを思いました。

花が暗闇でも香るように、控えめにして際立つ。そんな女優さんです。