KANGEKI2021年1月号Vol.54

木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第1回美月凛(紀伊国屋劇団)前編(3/6)

木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇! 第1回 美月凛(紀伊国屋劇団)前編(3/6)


生い立ち~つばぜり合い

美月凛(以後、凛)は、1985年(昭和60年・6月)、美濃の国、現在の岐阜県岐阜市の町の印刷屋さんの3人きょうだいの長女として、生を受ける。
3つ上に、兄(義則)と4つ下に、弟(幸保)がいる。

生地の岐阜市は、風光明媚な土地で、霊峰 金華山の頂きには岐阜城がかつての栄華を今に伝えているし、ふもとにはとうとうと流れる長良川が、住民の生活と観光を担っている。目を転じれば、駅前広場には、美濃の誉れ、岐阜の名付け親でもある金色の織田信長公の像が、凛の成長を見守っていた。

その信長の思いが通じたのか、凛は子供の時から、負けず嫌いで、短気、せっかちで、プライドが高いところなど、凛は信長に似た性格をあやかった。 また、近所の人には、容子ちゃんは「竹を割ったような性格」なので、男3兄弟だったらよかったのになど、訳のわからないことも言われた。

地元の保育園、小学校とすすみ、凛も中学生になり、クラブ活動は兄貴の影響もあって「剣道」部に入部。 「剣道」はかっこいいと思っていた。

この「かっこいい」という言葉は、凛にとって生きる上の心情であり、美学である。つまり剣道の強い人は「かっこいい」のである。

凛は、入部以来、剣道の練習に精を出した。 凛の得意技は、なんと「ひき胴」である。対戦相手と組む。軽く竹刀を合わせ間合いをとる、そして、一気に近づく、つばとつばが合わるまで接近、力技で威嚇、いわゆる「つばぜりあい」である、そして、ここというところで、凛が離れる、相手の竹刀が浮く、胴ががら空きになる、「うつべし!」 面白いように1本がとれる。これはかっこいい。

そして、中学生活最後の試合に臨んだ。
最後の相手は、地元で一番の猛者、背の高いチャンピオンである。得意技は、大上段からの『面』である。

試合はもつれて、時間だけが過ぎてゆく。審判の「わかれ」のこえ。 その時、凛の頭の中のスイッチが入る。つぎだ。 審判の「はじめ」のこえ。凛はすばやく飛び込んだ!、 竹刀と竹刀が激しくこすれ合う、つばとつばがぶつかる。 ここで、「つばぜりあい」にもっていく。長身の相手の目が真上に見える、そしてここで、瞬間離れる。近すぎて、相手は得意の面を打てないはずだ。

その時、わき腹に鈍い痛みがはしった。 「1本」審判の声。 凛は、くだけ落ちた。相手が、『ひき胴』を仕掛けてきたのだ。

頭の中に信長の舞う「敦盛」の一節が流れる。 ―人間、50年、下天のうちをくらぶれば、夢幻の如くなり。― そして、凛は竹刀を静かにおいた。

 

凛のお気に入りのスポーツ(趣味)が剣道であったが、あがりゃんせ劇場にのる役者にもいろんな趣味をもっている。

特に、琵琶湖に面しているあがりゃんせ劇場には、スポーツフィシングであるバス釣りを経験することができて、役者のなかにもファンが多い。

ある日、あがりゃんせの敷地をTシャツ・半パン、ロット(釣り竿)片手にウロウロしている不審者がいる、あがりゃんせの敷地内に釣り客は入れない規則がある。注意したら、なんと沢村千代丸(千代丸劇団)であった。
彼はほとんど、毎日琵琶湖にでる。朝が無理なときは、夜釣りである。腕前の大したもので、すでに琵琶湖に潜むランカー(40㎝オーバー)を釣っている。

腕前といえば、小学生ではあるが大日方小とら(満劇団)は実にうまい。彼はブラックバスだけでなく海釣りも得意で、一家の夕食を支えたこともある。
「役者がだめだったら、漁師でも食べていけるよ。」とは、ママの大日方皐扇のことば。
私自身は、小とらの朝比奈藤兵衛(「喧嘩屋五郎兵衛」の登場人物)が好きである。小学生とは思えない貫禄だ。「君は天才かもね」というと…否定せず、微笑みで返す。

業界で、釣り好きで有名な澤村丞弥(劇団丞弥)も、琵琶湖に挑戦している。私の見る限りでは、丞弥は琵琶湖とは相性が悪いようである。「今日はどうやった?」と尋ねてみると、「今日も小野さん、でした。へへ」
あなたもあがりゃんせ劇場にきてみれば、その答えがわかります。

琵琶湖は絶好の釣りスポット
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