KANGEKI2021年4月号Vol.57

木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第4回颯天蓮(正舞座)後編(5/5)

木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇! 第4回 颯天蓮(正舞座)後編(5/5)


旗揚げから1年

左より颯天蓮、要正大2019.6.12@庄内天満座

2020年(令和2年)11月あがりゃんせ劇場。 コロナ騒ぎの中、どこの劇団も大入りを出すのが容易ではない中、正舞座は33という、驚異的な大入りを出した。

正舞座を観ていたお客さんは異口同音に言う。
「ここの劇団は芝居の一生懸命さ、綺麗なショーにも、はじはじに努力の後はみえるのよね。それだけ稽古しているのでしょうね」

蓮は言う。
「私たちは素人の集まりでスタートしました。経験者は数名。老舗の劇団には衣装も化粧もかないません。でも、稽古の量はどこにも負けません。」

27歳で大衆演劇に出合い、31歳で女優になっている。43歳で劇団の座長夫人、おかみさん。 蓮には目の回るような人生だったであろう。

筆者は思う。 強く思えば必ず実現する。いくつではじめてもいい。遅いことはない。 もし誰かが役者になりたいとか、旗揚げしたいとかという話を聞いたら、私はあの人のことばを贈りたい「やってみなはれ」。

正舞座2020.7.11@池田呉服座

そんなことを考えながら木戸番をしていると、最近よく目にする170㎝ぐらいある可愛い女の子が、席を選んでいる。

「最近よく見るね。IC番号とお名前教えてもらえる?今は何してるの?」
「はい。あゆみといいます。大学生で20歳です」
「正舞座が好きなの?」
「はい。先月は17回、今月は12回見てます。はまってます」
「女優になりたいの?」
「半々です。でもわたしなんか女優になれないもの」
「そうかな。スター誕生の予感がするよ」

10年後にあゆみレポートを書きたいと思うが、いいかな。
あゆみはまさに女優の面持ちでこちらを向き「ご自由に!」

プロフィール

小野直人

小野直人おの なおと

生年月日 1953年

1953年 滋賀県大津市生まれ。日本大学・農獣医学部卒業。
小野牧場オーナー、総合学習塾 啓数塾塾長、構成作家(テレビ、ラジオ)を経て、現在は、あがりゃんせ劇場の木戸番として、多くの大衆演劇の劇団や幅白い大衆演劇のファンと交流をもつ。「KANGEKI」で「木戸番のエッセイ」を連載中。