KANGEKI2021年5月号Vol.58
木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第5回咲之阿国編~劇団あやめ貴妃~(4/5)
Ⅲ
ここから、阿国のとんでもない試練が始まる。
まずは、阿国の実家である。 阿国が、おっしょさん(母親)に大衆演劇に入りたいというと、開口一番「そんなつもりで、育てたんじゃない。」 世の中の親にしてみれば、その通りである。
「家族で夢みた3代にわたっての踊りのおっしょさん(先生)。それが目の前で消えようとしている。家族だから言えるけど、今まで阿国に使っていたお金にしても、とんでもない金額である、それをどぶに捨てるようなものである。許せるはずがない。だめだ。誰がなんと言ってもだめだ」 家人が考えても、無理もない。
阿国自身、おっしょさんに報告する前から見えていた。
そんな中、猿之助座長は1年間の準備期間を経て「劇団あやめ」を旗揚げをする。 阿国もそれに続く。
この連載シリーズで、素人が劇団に入って苦労するのは、慣れない『着物、鬘、化粧』であると、美月凛についても颯天蓮についても書いてきた。
しかし、阿国についてはすでに幼いことから何気に習得している。つまり大衆演劇の「3種の神器」は、比較的身近にあったし、器用に使える状況にもあった。 まさに即戦力である。
では、なぜ猿之助座長は即戦力ではないといったのか?