KANGEKI2021年9月号Vol.61
木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第8回澤宗小春~劇団澤宗~(2/5)
Ⅰ
5月というのに五月晴れの日差しはなく、雨の日が続いていると感じていたら、梅雨入りしていると気象予報士が連呼している。
雨になると、あがりゃんせのお客さんは多くなる。あがりゃんせ劇場の受け付けにいると、いろんなお客さんと会える。 先日は、そんなうっとうしい雰囲気を吹っ飛ばすような、にぎやかなグループがやってきた。 女性ばかり4人である。たぶん、家族であろう。みんな、どこのなく似ている。
「劇団関係のものですが……」
「なるほど……澤宗小春さんのご家族の方ですか?」
「え~。よくわかりましたね」
「だって、よく似ていますものね」
「あら~。そうですか。わっわわ……」
今回ご紹介したいのは、劇団澤宗の澤宗小春とその母親である。 ただし、今回は、役者の苦労話や奮闘記ではない。
澤宗小春は、入団してからまだ3年目である。役者として、特筆すべきものは見当たらない。ただ、小春自身の大衆演劇の役者になりたいという思いと、それを容認できない親の思いがぶつかって、軋轢をおこした顛末をご紹介したい。