KANGEKI2021年10月号Vol.62
木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第9回美川宇宙~劇団美川~(3/4)
Ⅱ
宇宙は、現在はデビューから13年が経っている。 宇宙は、その後いろんな場数を踏んでいたが、今回のあがりゃんせ劇場で、合同公演をしてみて、同い年である三代目の千代丸には、自分にないものが見えた。 芝居やおどりのセンスの良さ、その姿に、あこがれすらおぼえた。
確かに、今回の合同公演については、いろんな問題はあったが、劇団の総座長同士が、仲がよかったこともあって、順調にスタートした。 はじめは、各劇団が順番にお互いの芝居を見せていこうとしたが…。
逆に、難しいかもしれないが、劇団が協力したほうがもっといいものができる のではないかと考えるようになった。それが、図に当たった。 素晴らしい芝居の誕生をみたのである。
筆者自身も木戸番であるので、諸般の仕事があって、劇場の芝居や舞踊をしっかりとは みられない。
しかし、麗士と紀久二郎の芝居については、まさに目を奪われたのである。 まずは「浅草の灯」「仇付き兄弟鏡」そして「奴っ子鏡山」である。 確かに以前に観たことはあったが、いままでのそれとは、まったく違うものであった。
大衆演劇の業界では、芝居は劇場で、舞踊ショーはセンターで観るのがいいと言われている。確かに、あがりゃんせ劇場も、セットもわずかで棟梁もいない。
しかし、その芝居を見たときは、主人公の、また相手役の迫力と気迫で、セットのないことなども凌駕するほどの素晴らしさを感じた。
紀久二郎は、笑いながら言う。「究極のわるふざけをしてみたよ。」
紀久二郎の相手役になった麗士は「ここのあがりゃんせ劇場では、いい思い出を作ったよ」としみじみと言った。
筆者は、ふたりとも、実にカッコイイと思った。