木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第18回あつし~花柳願竜劇団~前編(3/3)
Ⅱ
まずは、あつしのプロフィールからご紹介しよう。
あつしは、本名を、伊東篤(いとう・あつし)という。平成6年(1994年)3月8日生まれで、現在28歳、うお座のA型である。
ちなみに、うお座で3月8日生まれは、働き者で、実用主義。 親しみやすく、想像力が豊かで、魅力あふれる個性の持ち主である。強いて弱点を言えば、「優しすぎるのが、玉にキズ」であるそうだ。
篤の生まれは関東で、神奈川県の横浜市鶴見区である。おしゃれな街の生まれである。
地元の小学校から中学をでて、隣県にある工業高校に進学。電気科で電気に関する勉強を始めたが……篤の夢は電気とは何の関係もない、「声優」であった。 確かに、筆者は、あつしに初めて会った時に、「いい声をしている」とおもったほどである。
高校を卒業すると東京は八王子にある専門学校の扉をたたいた。 そこには声優科と俳優科とあったが、もちろん篤の専攻は声優科であった。 専門学校は2年コースである。
1年目は、声優科も俳優科も同じ様な基礎を学ぶのであるが、授業では声優科は、原稿を手にマイクに向かっていた。また違う日の授業には、舞台に立って芝居の稽古もあった。
マイクに向かう日々と、舞台で身体全体を使って表現する事を体験すると、妙な感覚にとらわれた。篤は正直に自分に問いかけてみた。そして重大な判断をすることになる。
「自分は、やっぱり大きな声を出し、身体を動かすことのほうが性に合っている」
2年目からは、声優科をやめて、俳優科にはいった。
初めて実家をでて一人暮らしで夢も広がったが、常にお金の心配もつきまとった。 考えられるアルバイトを片っ端からした。 コンビニのレジ打ち、引っ越し業者、居酒屋のスタッフ……など。
なかでも、楽しかったものに、映画やテレビのエキストラがあった。 顔が出るわけでもない、もちろんセリフなんかはない。しかし、映像に参加している充実感は、不思議とあったのである。
エキストラは楽しいが金にはならない。このままいくとプータローになる。 危機感を感じていたが、そんなある日、フリーの役者をやっている女性が、妙な話を持ってきた。
その女優はこんな話を始めたのである。
『自分は今、ある劇団で大衆演劇の役者をしている。その劇団は「花柳願竜劇団」という。歴史のある立派な劇団ではあるが、現在は人材不足、役者不足で困っている。座長は「花柳願竜」。
(9月号に続く)
プロフィール
小野直人
生年月日 | 1953年 |
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1953年 滋賀県大津市生まれ。日本大学・農獣医学部卒業。
小野牧場オーナー、総合学習塾 啓数塾塾長、構成作家(テレビ、ラジオ)を経て、現在は、あがりゃんせ劇場の木戸番として、多くの大衆演劇の劇団や幅白い大衆演劇のファンと交流をもつ。「KANGEKI」で「木戸番のエッセイ」を連載中。