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かんげき2023年9月号Vol.81

木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第26回愛染菊也~劇団紫吹~前編

劇場:スパリゾート雄琴 あがりゃんせ
木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇! 第26回 愛染菊也 ~劇団紫吹~ 前編

大衆演劇の劇団の多くは座長とその家族で構成されている。 役者の家系に生まれた、いわゆる幕内の人間が過半数を占める中、一般家庭から役者になった人もいる。 何がきっかけでこの世界と出会い、日々過ごしているのだろうか? 劇場オープンから6年、木戸番兼劇団のお世話係を務めてきた著者が綴る実録エッセイ。 第26回は愛染菊也(あいぞめ きくや)(劇団紫吹)編・前編です!

愛染菊也(あいぞめ きくや)

はじめに

大衆演劇の芝居には、台本がない。

そんなことを言うと、たいがいの人は一様に不思議がる。

これは、私自身の「芝居」に対する先入観であるが、『芝居というものは、前提として、まずは演出家がいて、台本があって、その台本を読み込んだ役者達たちが一堂に会し、演出家の演出をうけて、演技を身に着けた役者達で、芝居を作り上げていくものである』 これが芝居の作り方である、と思っている。

長く台本を書くことを生業(テレビ局で30年以上台本を書いてきた)にしてきた私には、大衆演劇の芝居に台本がないということが、にわかに信じられなかった。

あの長い芝居を、台本なしでできるわけがないと思ってきた。

話はちょっと古くなるが、5年前にこんなことがあった。

舞踊ショーもはねて、午後8時も過ぎたころである。 私が客席の掃除をしていると、食事を済ました役者がぞくぞくと舞台に集まってきた。

座長が、あいさつをする。

どうも、新しい芝居をするようである。

役者達は、真剣な表情で落ち着きもない。

登場人物と場面設定の紹介があって、座長がいきなり一気呵成に登場人物のセリフを言い続ける。

それを聞いていた役者たちは、録音をしたり、メモを取る。

その間、話している座長の頭脳には、膨大なセリフが完全に存在している。

確かに、一気呵成にセルフを言っているが、手元には、台本どころかメモの存在すらない。

全ては、頭の中にある。

また、からみのシーンのセリフは、座長が一人二役で芝居をする。

からみ役の役者が、必死で覚える。

そして、大きな動きを座長が説明。 役者はめいめいの動きを確認して、分からないところを座長と相談。

チャンバラのシーンは、入念に座長が役者に教える。座長が納得するまで立ち回る。

そして、本日のシーンの説明がおわる。およそ1時間ぐらいであった。

日を分けて、いろんなシーンの稽古があって、数日後には本番である。

宿舎でどんな稽古が行われているか、私は知らないが、役者に聞いてみると、どうも役者は録音してきたセリフをノートに書いているようだ。

大方の役者は、セリフを書いたノートを持っているが、座長には、台本はないのである座長の頭にあるセリフ、それを教え込まれた役者は、そのセリフが長くても、短くても、頭に入れなければならない。 大した記憶力である。

あがりゃんせ劇場
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