木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第35回葉山花凛編後編~嵐瞳劇~(4/4)

あがりゃんせ劇場の受付の横には掲示板がある。そこに「来月の劇団」として、「嵐瞳劇」のポスターが貼られると、常連のお客さんが……。
「(森川)竜馬の弟が来月乗るの。楽しみやわ」
森川龍馬劇団は2023年10月に「あがりゃんせ劇場」に乗っている。大衆演劇のファンは役者の家庭の事情に詳しい。
「嵐瞳劇」の舞台がはじまる。「あがりゃんせ劇場」には初めての登場となる劇団で、連日お客様がつめかけた。 お客様の評判は「一生懸命さがいい」と上々である。
舞台を終え忙しく走って来る座長が「お疲れさまで~す」と筆者の前を通る。 背中に生まれたばかりの長女澪を背負い、長男・想蘭をあやしている花凛に、筆者は言った。 「ここの座長は、本当に出番が多いね。毎日が瞳太郎まつりやね」
「はい。まだまだ役者が足りません、今、頑張ってもらわないと……」と長男を抱き上げる。 花凛には想蘭が「若」と言われ、座長と芝居をする未来予想図がはっきりと見えているのであろう。
座長が着替えを終えて走って来る。想蘭がパパにしがみつく。 そんな瞳太郎の姿に、蝉の鳴き声がした。
P.S.
私が、初めて花凛にあったのは、乗り込みの時であったと記憶している。 花凛は、若い女優に指示を出して、自分は何倍も動いていた。 創設して7年をむかえる「嵐瞳劇」を一日でも早く軌道にのせ、目標を、夢を達成したいのであろう。
実業家であった「稲盛和夫」(京セラ創業者)は、こんなことを言っている。
「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」ことが、物事を成就させ、思いを現実に変えるのに必要なのです。
私はこの言葉を花凛にこのように説明したい。
「将来については、勝手に好きな様に夢見なさい。でも甘い計画はだめです。常にきつめにチェックしましょう。でもその計画で動き出したら、人にはニコニコ、計画を、人生を楽しみましょう。」
―終わりー
プロフィール

小野直人
生年月日 | 1953年 |
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1953年 滋賀県大津市生まれ。日本大学・農獣医学部卒業。
小野牧場オーナー、総合学習塾 啓数塾塾長、構成作家(テレビ、ラジオ)を経て、現在は、あがりゃんせ劇場の木戸番として、多くの大衆演劇の劇団や幅白い大衆演劇のファンと交流をもつ。「KANGEKI」で「木戸番のエッセイ」を連載中。
劇団情報
嵐瞳劇
2017年3月、和歌山県の南紀勝浦天満座で「嵐山瞳太郎劇団」として旗揚げした気鋭の劇団。師匠二代目森川長二郎(現・二代目梅澤秀峰)から学んだ技芸を大切にしながら、一から立ち上げた劇団ならではのチャレンジ精神で、創意工夫を凝らし、楽しい舞台づくりに奮闘。座長のもとに集まった新人座員の成長も著しい。2021年12月より「嵐瞳劇」に改名。
劇場情報
スパリゾート雄琴 あがりゃんせ
滋賀県大津市苗鹿3丁目9-5