旅芝居ささえびと第6回金沢おぐら座社長鷹箸直樹さん(5/5)
おぐら座ならでは② 森本商店街一座
商店街一座公演は、森本商店街の店主たちと、劇団で作り上げる舞台。鷹箸さんは出演者ではなく、企画全体の裏方として奔走しています。
鷹箸さん「昔は、森本商店街って120 店舗 ぐらいあったそうですが、時代の流れでシャッターを閉める店が増えて、いまは 40店舗ぐらいです。何かできないかなと思って、思いついたのが、店主さんたちがメイクして舞台に上がって、地元のお客さんに店主の個性を知ってもらったら、もっとお店に入りやすくなるんじゃないかなと。
人が魅力になるっていうのは、誰にも覆せないじゃないですか。第一回公演は、もうお客さん大爆笑。それでみんな、味をしめました(笑)」
9/3夜の、初稽古の様子です。
上の写真の右から2番目が、一座太夫元の村田貴人さんです(『ムラタ時計めがね店』店主)。
村田さん「初めは鷹箸さんと僕で金沢市役所に行って、地域のモデル事業としてプレゼンしました。それから10年、長いですねえ(笑)。プロである劇団さんが、僕ら店主の人柄を地域の人に見てもらうという主旨を理解してくれて、僕らを活かしてくれるからこそ、成り立っています。劇団さんも、大衆演劇を初めて観るお客さんにアピールしてもらい、win-winな関係性を目指しています」
毎回、大盛況となる商店街一座公演。かつての地芝居の風習の復活でもあります。
鷹箸さん「第一回公演のとき、90歳ぐらいのおばあちゃんが声をかけてくれました。昔は神社で、町ごとの青年部が、毎年代わりばんこでお芝居やってたんだよ、それが復活したね、って。この土地の文化が、縦にも繋がったんだと思って、すごく感動しました。店主たちが下手なのも含めて魅力なので、上手くなったら解散だなと思っています(笑)」。
とはいえ、既に素人の台詞回しではありません!
おぐら座ならでは③ たこ焼き、ネギトロ丼
充実のフードの中でも、名物のたこ焼き。特徴は、野菜がいっぱい入っていること!
編集後記
「また、おぐら座に帰りたいなぁ」と訪問後に誰もが思うような劇場。初めての人も、気づけば常連さんと一緒に、ロビーでビールを一杯やっています。まるでお祭りのとき、隣り合った人みんなを好きになるように。
その芯にあるのは、鷹箸さんの太陽のような魅力と、お客さんに寄り添う姿勢です。取材中も、鷹箸さんのスマホは、お客さんからの着信で鳴っていました。ZOOM配信を初めて購入し、視聴方法が不安というお客さんに「まずアプリを入れて…」と説明します。「毎回、その人がちゃんと見られるまで、電話で一緒にやっています」。日々の絶え間ない努力が、場を紡いでいるのだと思いました。