KANGEKI2021年5月号Vol.58

特別インタビュー特別インタビュー「紅蓮の雪」遠田潤子さん~大衆演劇が小説の舞台に!~

取材日:2021年4月6日
特別インタビュー 「紅蓮の雪」 遠田潤子さん ~大衆演劇が小説の舞台に!~

亡き姉の足取りを追って訪ねた大衆演劇の劇場。そこで誘われるまま役者になった主人公・牧原伊吹。彼が知り得た衝撃の事実とは…ミステリータッチの小説「紅蓮の雪」が話題を呼んでいます。

大衆演劇が舞台とあればぜひお話を伺いたい!カンゲキスタッフのオファーに作者の遠田潤子さんが快く応じてくださいました。

小説のテーマに大衆演劇を選んだのは?初観劇はいつ? 創作エピソードの根掘り葉掘りインタビューです!

遠田潤子とおだ じゅんこさん

専業主婦から小説家に

 

初めまして、この度は誠にありがとうございます。 まずは小説家になったきっかけから伺ってよろしいでしょうか。プロフィールを拝見すると専業主婦からの転身と…

遠田潤子(以下 遠田)

はい。結婚する時に会社を辞めて、母の介護と2人の子育てが重なって本当に大変で。母を看取った後、しばらく燃え尽き症候群でぼんやりしていたんですが、パソコンを買って小説を書いてみようと思い立ちまして。

 

それまで小説を書かれたことは…

遠田

一度もありません(笑)。とにかく小説家になろうと決め、
手当たり次第新人賞に応募しまくって(笑)、5年目の2009年にやっとデビューが決まりました。 でも最初は全然売れなくて…1年に1冊声をかけてもらうのがやっと。7、8年経って少しずつ仕事をいただけるようになりました。

 

遠田さんの作品のカラーは暗くて重いと言われていますが…すみません!でもそこが良いと。何か感銘を受けた小説はありますか

遠田

はい(笑)。ベタですがドストエフスキーの「罪と罰」です。古典の名作と言われているものは本当に面白いのだと知らされました。大衆演劇の演目でも、昔から残ってきたものはベタでも強いですよね。

「紅蓮の雪」 集英社
ISBN:978-4-08-771738-9

テレビの梅沢富美男を見てひらめき初観劇

 

「紅蓮の雪」で大衆演劇をテーマに選ばれたのは

遠田

編集さんから「バディものを書いて欲しい」と言われて(バディー. buddy. 男性同士の友人・仲間・相棒のこと)、編集さんは爽やかな男2人を想像したと思うのですが、たまたまテレビで梅沢富美男さんを見て、この人「夢芝居」の人だな、女形綺麗だったな、そうだ大衆演劇で書いてみようと、思いつきからのスタートでした。

 

それはいつでしょう

遠田

連載が2020年の春からなので、今から3年くらい前ですね。

 

そこから大衆演劇の劇場に行かれたのですね

遠田

はい。まず大阪の新世界にある劇場2軒に行きました。その後、梅田と京橋と…ビルの中にもあるんだと驚きましたね。

 

初めてご覧になっていかがでしたか

遠田

もう衝撃でした。それまで劇団四季や歌舞伎の舞台しか見たことがなかったので、こんな世界があったのかと。

お芝居は「一本刀土俵入り」で、最後の見得をきるところで、歌謡曲がかかったのにもビックリ。 帰ってから家族に「一度は見に行かないと!」と強く宣伝したのを覚えています(笑)。

大衆演劇で小説が書けるかどうか不安だったんですけど、この衝撃をそのまま本にしたらいけるのではと、手応えがありました。

 

観劇する中で、好きになった劇団、役者さんはいらっしゃいますか

遠田

実はいないんです。そういう見方をしてなかったというか、その時は取材目線で見ていたんでしょうね。

私はどちらかと言うと芝居より舞踊ショーの方が好きみたいで、ここまで工夫するのかと感動してしまって。
衣装がすごいですよね。パーカーみたいにフードがついたり、羽の生えた着物とか。

高校生くらいの子が、たった1人で堂々と踊っているのにも、年配の役者さんが白塗りで渋い演歌で踊るのにも、驚きっぱなしで。

女形は至近距離でも美しくて、見惚れてしまいました。

 

小説では鉢木座(はちのきざ)という劇団や、準主役である若座長の鉢木慈丹(はちのきじたん)など、魅力的なキャラクターが登場しますが、モデルはあるのでしょうか

遠田

モデルはないんです。編集さんとも相談して、理想の劇団という設定にしています。超綺麗な女形が2人いて、みんな仲が良くて…。現実は良いことばかりじゃないと思いますが、小説ではあえて触れずに、とにかく楽しんで読んでもらえるように。

 

なるほど、大衆演劇が舞台ですが一番のテーマは「バディ」ですから…

遠田

連載を始めるにあたり「KANGEKI」も、コミックエッセイ「私の舞台は舞台裏」(木丸みさき著/KADOKAWA/メディアファクトリー )も面白く読みました。
ルポライター橋本正樹さんの著書には圧倒されましたね。

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