KANGEKI2021年9月号Vol.61

舞台裏の匠たち第2回その人を「日本一」と思って映しています橘劇団照明担当岡本健一さん(2/2)

取材日:2021年8月7日
舞台裏の匠たち 第2回 その人を「日本一」と思って映しています 橘劇団 照明担当 岡本健一さん(2/2)

表情だけで指示がわかる?!

 

役者さんが「気持ちよかった」とおっしゃる照明って、どんな当て方なのでしょうか。

岡本

役者さんって、その人独特の溜めがあるんです。ずっと暗い状態で踊ってて、溜めて溜めて、一気にドーンと前へ出てくる。お客さんもそこで歓声が上がる。その溜めから外れる瞬間に、寸分違わず当てるんです。
これも色々やり方があってですね、たとえば、花魁のときはちょっと影を作ってから当てるとか。フードを被ったままのときは当てないとか。お客さんも、そういうのを好んでいると思いますね。

 

橘劇団で使う曲を熟知しているから、できるんでしょうか?

岡本

いや、曲と言うより、その演者さんの癖じゃないですか?同じ曲でも違う踊り方をしているときもありますから。

 

役者さんの癖と、照明が合う。

岡本

そうです、そうです。

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橘良二副座長が右手をスーッと上げるタイミングで、スーッとピンスポがつく。

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橘大五郎座長が舞台に歩み寄った瞬間に入るピンスポ。舞台と照明席の息が合っているからこそできる。

岡本

座長は、舞台上からいきなり表情だけで、消して~みたいな指示が来たときがあります。踊り中にですよ。

 

えっ?! むしろそれ、わかるんですか?

岡本

わかるんですよ。ねえ、座長。

橘大五郎座長

同じ釜の飯を食ってますから(笑)。(化粧中だった橘大五郎座長がクルッと振り向いてくれました)

岡本

舞台からこっち見ながら、消して~みたいな顔してるから、スーッと消す。本当に事前の指示はないの?って言われるけど、無いんです。消し方も踊りによって変えます。
ふわーっと演者が回っているときは、ふわーっと消す。
最後の消し方も、ゆっくり袖に行ってくれるときはシューッと消したり、幕を持ってバサッといなくなるときはスパッと消します。感性です。曲に合わせるんです。

座長 橘大五郎

お客さんが大好き

 

お客さんに照明の意見を聞いたり、岡本さんは劇団メンバーはもちろん、橘劇団のファンが本当にお好きでいらっしゃるんですね。

岡本

もちろん!お客さんに来てもらっての商売です。来てくれるお客さんはすごく大好きです。照明って客席側にいるから、お客さんと接点も多いし、話しかけてもらうことも多いので、やっぱりそこはニコニコできないといけない。だから、色んな意見も聞けるんです。今日の芝居の照明良かったー、とか言ってもらえたり。

でも僕は、悪いところを言ってくれるお客さんも好きです。良い所だけ言われても、伸びないですもん。

今はコロナの状況もあるので、お客さんと話すときがあれば、そこはちゃんとマスクして、距離を保ってやっています。それと極力、お客さんの名前を覚えるようにしてますね。名前で呼んだ方がお客さんも喜んでくれますから。

 

インタビューを通して、ずっとこの仕事をやっていきたいという気持ちが伝わってきました。

岡本

はい!自分以外の人が橘劇団の照明をやってるのは考えられないです。

岡本健一さん。
取材中はマスク着用を徹底し、写真撮影時のみ顔を見せていただきました。

橘大五郎座長 コメント
「小さなかんざしにピンスポが瞬時に!」

 

座長から見た、岡本さんの仕事ぶりを教えてください。

座長

こだわりの職人技。フィーリングがすごいよね。舞台人が気持ちいいように当ててくれるんです。舞台の自分と、照明席の岡ちゃんとの、息がスパッと合ったときが気持ちいい。

 

今日の照明はどうでしたか?

座長

今日の芝居(『下北の弥太郎』)は自分が舞台に出てない場面も多かったけど、雪のシーンとか、照明を切るべきところは切ってくれる。それができる照明さんはなかなかいないと思います。

別の芝居ですけど、女のかんざしがポロッと落ちて、僕が落ちたかんざしを見る場面があるんです。僕がかんざしを見た瞬間に、パッとかんざしをピンスポで照らすんです。

かんざしって、これくらい(スマホを指して)の大きさしかないのに、そこにパッとピンスポが来る。すごくないですか?

座長 橘大五郎

ファンの声
「集中して観られる環境を作ってくれる」

岡本さんを取材していると、たくさんのファンの方が岡本さんのここがすごいんです!と語ってくれました。ファンコメントからは、岡本さんの工夫が観る人にしっかり伝わっていることがわかります。

  • 指先まで全部映してくれるので、きれいに全身が見えるんです。絞るときの“間”が、また良い。

  • 明かりの大小の絞りとか、ピンスポの動かし方が、観劇のノイズになりません。ピンスポが動くってすごく目立ちますけど、岡本さんは余計なことをしない。お客さんが舞台に集中して観られる環境を作ってくれています。

  • つけ方、消し方、絞り方が天才的です。役者さんの魅力が照明で何倍にも膨らみます。

  • ピンスポで見せるべき部分を的確に照らしてくれます。無意識でなく、ピンスポで今何を照らすか、その範囲を意識しています。だから照明が演出の一部になっていますね。役者さんが見せたいもの、お客さんが見たいものを分かっていて、着物の裾や小道具まで照らしてくれます。

  • 透明なシートを使って芝居のときは照明をぼかしているので、芝居の背景が強くなりすぎないんです。舞台の人の動きに合わせて、ピンスポを動かすのも上手ですね。健ちゃんのさばけた人柄も良いです!

立ち回りの速い動きでも、ピンスポが主役にぴったりついていく。

インスタも要チェック!

岡本さんのインスタのストーリーには、照明席からの舞台の様子がたくさん上がっているので要チェックです!

取材:お萩

劇団情報

橘劇団

劇団設立は昭和38年ごろ。総座長が父・初代橘菊太郎より受け継ぐ。 明るい人情劇、豪華なオリジナルショーで人気を集めている。 平成23年3月に三代目橘大五郎座長が襲名。 座員一同が結束し、お客様とともに盛り上げる舞台づくりを目指している。

 

橘劇団公演予定

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