宝海劇団密着取材!座長ロングインタビュー
劇団結成20周年・今が正念場!
今年2022年10月で劇団結成20周年を迎える宝海劇団。大きな節目を前に、劇団の「今」を中心に、座長の思いを伺いました。
(目次)
- お芝居「やくざ心中乱れ花」~愛しすぎて狂っていく男
- 毎月テーマを決める!
- 大人も嫉妬?!子役の成長を促す秘訣とは
- 子役も自分のお金で道具を揃える
- 劇団20周年を迎えて
- 最近の悩みとは
- 劇団美山との親交
- 「稽古」ではない
- 客席に「火」をつける!
1.お芝居「やくざ心中乱れ花」~愛しすぎて狂ってしまう男
お芝居「やくざ心中乱れ花」についてお聞かせください。
うちの劇団で昔からやっているお芝居で、初めて主役を演じたのは、中学1年の誕生日公演です。すごく好きなお芝居で、よくやっていますね。
中学1年でこんな激しい役を演じられたのですか!
でももう27歳ですからね~。あと3年で30歳ですよ。気持ち的には20歳になったあたりで止まってるんですけど(笑)。
このお芝居のどんなところが魅力と思われますか?
やはり最後の場面ですね。愛しすぎたために狂ってしまうところ。立ち回りの途中でふと我に返って…となるところが、好きですね。
その時の精神状態というか、役に没頭してしまうのでしょうか?
僕は昔からそうなんですが、なかなか入りきれないんです。演じながらも周りの音が気になったり、こんな時どう言えばいいかとか、常に考えてしまいます。考えているうちは入り込めてないんですよね。
それは逆に自身をコントロールできているということでは…
大衆演劇の役者さんも色々なタイプの方がおられますよね。ぐわっと役に入り込むタイプの役者さんを尊敬します。(入り込んでしまうと)すごく疲れますが、最近は月に何度かそうなる時がありますね。
最近ではどのお芝居で?
『地獄の花嫁』を演った時かな。入り込みやすい役です。
狂気をはらんだ男臭い役で、座長の新たな面を見せてもらったように思います。政次役の大心さんとの立ち回りはかなり複雑ですが、相当稽古されたのでしょうか。
うちの園長(宝海竜也大夫元)が若手の時にこの役を演っていて、手順は園長から教えてもらいましたが、立ち回りは自分たちで決めろと言われて。結構長いこと合わせましたね。
2.毎月テーマを決める!
続いて舞踊についてお聞かせください。今回は新開地劇場と羅い舞座堺駅前店と2カ所で取材させていただきましたが、群舞が豊富ですよね。
うちでは毎月テーマを決めてまして、今月は『群舞の月』なんです。とにかく群舞を作る。稽古しただけでお蔵入りになるのもしょっちゅう。今月はもう5、6本作ったかな。
たった1週間で!ハイペースですね。
3人舞踊など色々ですが、みんな出ても5人なので…5人でなんとか上手く見せられたらいいなあと。
最近作られたというラスト舞踊「浦島」を拝見しましたが、とても幻想的で不思議な世界でした。
『浦島太郎』をやりたいなって思って作った舞踊です。浦島太郎のイメージと『大きな古時計』と被ったんですよ。僕も好きな舞踊ですね。
今、舞踊でおすすめのものは
まだ1回しかやってないですけど『大空舞い散らかし』。思いついたことを全部新作でやるというものです。思いつかないと出来ないので、しょっちゅうはやれないんですけど、楽しかったですね。先月は『ちびっ子の月』で、ちびっ子たちに『明治一代女』を教えました。
3.大人も嫉妬?!子役の成長を促す秘策とは
子役さんがどんどん成長されていて驚かされます。
ありがとうございます。本当に、大人より客席が盛り上がった時は、嫉妬しちゃいますもんね。「この野郎」って(笑)。
お客様との一体感まで作っておられて、素晴らしいなあと思いましたが、ここまで出来るようになるのには、どんな秘策があるのでしょう。
もともと舞台に興味があったわけではないんです。まず、僕と一緒に踊らせました。今日、三代目ボーイ豆タンクが踊った『アジアの海賊』も、はじめは僕との相舞踊だったんです。
棒を持たせて、とにかく一緒に踊る。するとお客さんがワッと拍手してくれて、そっからですね『こんなに楽しいんやね』って。
なるほど、一緒に舞台に立つのがポイントなんですね。
稽古も大事ですが、やっぱり舞台に出るのが一番。あの空気は舞台袖ではわからないんですよね。
4.子役も自分のお金で道具を揃える
ちび丸が女形で頑張って、三代目が立役が好きで、バランスも取れてます。ちび丸は性格的に引っ込み思案なところもあるんですが、舞台はやる気満々で、欲しいものがどんどん増えるんですよ。
「これが欲しい」と、子供たちから言われるのですか。
うちは親は買いません。全部自分たちで買ってます。
え!そうなんですか!
これはぜひ書いていただきたいんですけど(笑)、2人とも自分のご祝儀で買っているんです!この間の三代目の誕生日に僕があげたのは扇子1本だけ。道具は自分で買った方が大切にするし、また頑張ろうって思えるし、絶対いいと思います。
すごいことですね。
そうなんです。うちのちびっ子舐めないでくださいって(笑)。
5.劇団20周年を迎えて
10月で劇団結成20周年です。大きな節目を迎えるにあたり、振り返って、どんな20年でしたか。辛かった時期は。
しんどいのは今が一番しんどいですね。劇団って5年周期で何かあるんですよ。10年前は、長くいてくれた座員さんたちが辞めて、5年前は兄の早乙女紫虎座長が抜けて、今年、姉の城津果沙が退団しました。5年前ももちろん大変でしたが、あの頃はただがむしゃらにやるだけだったので…。
気持ち的には今が一番厳しいと。
はい。なんとか立て直しをしているところです。今まで劇団維持のために一番苦労していたのは母上(宝海真紀)です。もう波瀾万丈(笑)。母が一番大変で、それをちょっとずつ背負うようになったのは、座長になった5年前からですから。
20周年の記念公演の日は
羅い舞座京橋劇場で、10月9日と23日の2日間、行う予定です!(メモ!)
6.最近の悩みは
最近悩んでいることがありましたら教えていただけますか
仕事のことですねえ。例えば、こんなんどうかな?ってひらめいて、誰もやってないやろなーって思って、Twitterとか見たら、もう誰かにやられてる(笑)。
先輩も、同世代も、下の世代も、みんな素晴らしい役者さんばかりで、焦ります。
座長でも他の方と比べられることがあるのですか?!
バリバリ比べますよー(笑)。
大衆演劇の公演の流れって、大体決まっているじゃないですか。2時間45分の公演の中で、どうしたら楽しませられるか、無駄な時間を省くにはどんな工夫をしたらいいか。常に悩んでますね。
7.劇団美山との親交
先月号の劇団美山の里美こうた座長にお話を伺った時「大空さんはネタの宝庫」とおっしゃっておられました。
美山さんに絶対合うだろうなとか、自分達では出来ないけど、美山さんだったら出来るだろうって思うものは『こんなのどう?』って言いますね。また、里美たかし総座長からもお芝居をいただくこともあります。
劇団さん同士でアイデアを持ち寄られるお話を伺うと、なんだかワクワクします。
美山さんには勝手に親近感を持っていて、評判を聞くと自分のことのように嬉しくなります(笑)。美山さんがいてくださるから、うちも少しは劇団として大きくなれていると思います。
8.「稽古」ではない
今回は長時間取材に応じていただきありがとうございました。最後になりますが、それにしても座長の舞踊での技の多さにはいつも驚かされますが、どうしたらそんなに出来るようになるのか、やはり稽古あるのみなのでしょうか。
確かに稽古はめちゃめちゃしてましたけど。でも、うちの長男がまさにそうなんですが、稽古しなさいと言われてもやらないです。
僕は扇子で遊ぶのが好きだったんです。刀で遊ぶのも好きで、それは『三国無双』というゲームで、必殺技で刀を回して敵を倒すのが好きだったから、そのためにやってたんですよね。
稽古が好きかと言われたら そんなに好きじゃない。稽古だと思ったら、僕もやってなかったと思います。稽古の虫みたいに思われてますが。
なるほど、稽古ではなく、扇子や刀を回すのが好きだから…
好きなことをやっている間、夢中になって『これどうやったらできるんやろなー』って考えてるのが好き、ただそれだけですね。
9.客席に「火」をつける
バック転や、舞台を滑るように移動する技なども、好きで習得されたのでしょうか。
「今ここで飛んだら喜んでくれるかな」って、考えてやるのが好きなんです。
花道に行くと見せかけて、急に逆方向にビューンって飛んで、『うわーこっちに来るの?』って、そのお客さんが驚いたら客席に火がつくと思うので。
1人の驚きから客席全体の興奮になるということですね。
そういうきっかけを毎日作れたらいいですけどね。「火」がつくところはまた変わるので。
お客様の方もだんだん分かってこられるので、大変なのでは。
大変は大変です。でも、それが楽しいんですよね(笑)。
取材メモ
今回の密着は2ヶ所で取材させていただきました。ご紹介したい場面がありすぎて悩みに悩みながらピックアップ。インタビューも欲張って長めになっておりますので、時間を分けてじっくりお読みいただければ幸いです^^
宝海劇団さんといえば「紙吹雪」。紙吹雪が降らない日はなく、量もハンパではありません。
最後の幕が閉まる前、座長が最後にひと踊り。決めポーズで紙吹雪パーン!この瞬間を撮るのもまた楽しい^^
「お客さまを1回でも多くワクワクしてもらいたい」そのために道具も手間も惜しまない宝海劇団の皆さん。大量の紙も「毎日のことなので」とあっという間に片づけられました。
2日間ありがとうございました!
プロフィール
宝海劇団座長宝海大空
生年月日 | 1995年5月9日 |
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出身地 | 岡山県 |
サイト・SNS |
1歳5ヶ月で初舞台を踏む。幼いことからスーパーちび玉として各メディアでも活躍し、
巧みな扇子さばきや刀さばきは多くの観客を魅了し続けている。
現在も「美3BOYS」のメンバーとして大衆演劇の枠を超えて、活動。
平成24(2012)年8月に「美3BOYS 華の舞」を上映。
劇団情報
宝海劇団
平成15(2003)年2月、宝海竜也座長が茂木健康温泉(栃木県)で旗揚げ。 座長の宝海大空は幼き頃からスーパーちび玉として各メディアで活躍し、 現在は「美3BOYS」のメンバーとして大衆演劇にとどまらず、活躍の幅を広げている。