清水の次郎長の配下だった侠客で、隻眼ながらもめっぽう喧嘩に強い。けれどもどこか抜けているという愛嬌ある人物です。石松ものでよく描かれるのは、次郎長から金比羅参りの代参を命じられ、清水湊から四国の高松の間を旅するという物語です。特に大坂から船に乗った石松が、旅人と話をする「石松三十石船」のくだりは有名です。「江戸っ子だってねえ、食いねえ、寿司を食いねえ」というセリフはどこかで聞かれた方も多いのではないでしょうか。ちなみにこの寿司は、事前に石松が大坂で寿司を買っていることから、押し寿司であるというのが有力だと見られています。
実際には存在した人物かどうかはよくわかっていません。豚松という人物も子分にいたと言う話も混乱に拍車をかけます。そんなわけなので、石松のどちらの目が見えなくなっているのか、ということすら実はよく分かっていません。劇団によって違っていたりするのも見所かも知れません。