KANGEKI2022年7月号Vol.70
木戸番のエッセイ・天職先は大衆演劇!第17回染弥あかり~劇団紫吹~後編
大衆演劇の劇団の多くは座長とその家族で構成されている。 役者の家系に生まれた、いわゆる幕内の人間が過半数を占める中、一般家庭から役者になった人もいる。
何がきっかけでこの世界と出会い、日々過ごしているのだろうか?
劇場オープンから6年、木戸番兼劇団のお世話係を務めてきた著者が綴る実録エッセイ。 第17回は劇団紫吹 染弥あかり(そめや あかり)編・後編です!
非常に楽しい体験入団ではあったが、夏休みから中学を卒業までには、かなり時間があって、全国の劇場やセンターを回っているK劇団とは、連絡を怠ってしまった。
そこで、あかりは、結局入団をするチャンスを逃し、中学を卒業するとスーパーのレジ担当で働いた。 そこには、家庭の事情もあったわけだが…。
しかし、大衆演劇に対する気持ちは変わることはなく、その後もいろんな劇団を観て回った。 そして、あかりの運命の振り子は、彼女をK劇団と再会をさせることに振りきったのである。劇団が青森で公演をしたのである。
すでに、18歳になったあかりは、ついにK劇団に入る決断をする。 劇団にしても、あかりが体験入団の時は、やはりどこかお客様扱いであったが、入団するとなると、劇団に貢献できる劇団員になるように、厳しい指導が始まった。
その雰囲気があかりには心地よかったのである。下働き時代ではあったが、すでに芸名ももらっていた。これで、頑張ろう!と心に決めていた。
しかし、世に中は、自分の思い通りにはいかないもので、今度は母親の持病が悪化した。 その看病に追われてしまって、劇団にいることが出来なくなった。入団してからたった 1ヵ月目の事である。 山梨のスパーランドホテル内藤で、やむなく退団を決意する。この不幸をあかりは呪った。