かんげき2023年11月号Vol.83

旅芝居ささえびと第6回金沢おぐら座社長鷹箸直樹さん(2/5)

劇場:おぐら座取材日:2023年9月3日
旅芝居ささえびと 第6回 金沢おぐら座 社長 鷹箸直樹さん(2/5)

地域とつながることがテーマ

がっつり食事、軽食、ドリンクまで充実の売店
 

飲食が非常に充実しています。観劇のお客さんだけでなく、地域の方が食事目的で来られたりするのでは?

鷹箸

来てくれています。駅前なので、近所で工事してる人が、昼休みにご飯を食べに来たり。地元の高校生がたこ焼きを買って、外のテラスで食べてくれたり。たこ焼きは劇場の外からでも買えるようにしています。地域とつながるっていうのは一つのテーマですね。

名物のたこ焼きは劇場外からでも買えます。観劇の習慣のない人も劇場に来るきっかけに
 

もしかしたら、飲食目的の方も、そのうち観劇されるかもしれません。

鷹箸

それも狙っています。たとえば、たこ焼きの焼き時間が15分くらいあるので、焼けるまで芝居観て良いよーって言うときが時々あるんです。すると、けっこう初めての人でも『面白い』って言いますね。とにかく接点をつくりたいです。大衆演劇は、観てみたら面白いと思う人がたくさんいると思うので。

 

地元への宣伝はどのように?

鷹箸

ポスターは毎月400枚くらい作っていて、劇団が替わるたびに、100 店舗くらいは自分で貼りに行ってます。金沢市中に。残りはお客さんがいっぱい貼ってくれます。ありがたいですね。

観光客の集まる近江町市場の市姫神社近くでもポスターを発見!
 

お客さんが劇場に入って来ると、スタッフの皆さんが「〇〇さん、お帰り」と迎えていますね。

鷹箸

僕たちスタッフは、お客さんの名前は、ほぼほぼ覚えています。名前を呼ぶと、高齢のお客さんは特に嬉しく思ってくれるみたいですね。この地域は高齢化が進んでいて、一人暮らしの人も多いですから。お客さんに対し、人として、家族として接する、そういう劇場にしたいです。

おぐら座スタッフは現在4名。11年目のベテランスタッフ・湊茂さんは、受付担当です。大入り袋に「月・日」の判子を押しているところ

命日に故人と一緒に観劇

 

2022年6月21日、おぐら座では「あの世この世祭り」をやっていました。お客さんが亡くなられたご家族などの遺影を持ってきて、故人と一緒に観劇するというイベントに、衝撃を受けました。

鷹箸

あの日は、めっちゃ盛り上がったんですよ。遺影持ってきたら千円にしますって言ったら、75人も来てくれました。そして遺影が87。

 

あの世のお客さんのほうが多かったのですね!

鷹箸

そうです(笑)。遺影を並べてみんなで観ているんだけど、すごく温かい、良い空気になりました。この人はうちのおじいちゃんで、とか、普段話さないことをみんな話してくれて。愛犬の遺影を持ってきてくれた人もいました。遺影の分も大入りにカウントしました!

当時のおぐら座公式ツイッターより。「この世の方75名、あの世の方87名で大入り~!」
 

第2回の予定はあるのでしょうか。

鷹箸

あれはやりたいですわ~。うちのお客さんは、イベントじゃない日でも、身内の命日になると、遺影を持って来る人がけっこういるんです。『今日は一緒に観させてください』って。ちゃんと、遺影の分の席も予約して。お母さんの分、って。日本文化は、もともとそういう心を大事にしてきたはずだし、いまはその心があまりにも無くなりすぎているから、おぐら座では大事にしたいですね。

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