舞台裏の匠たち第4回「夢の中にも照明が出てくる」劇団炎舞投光橘みつおさん
大衆演劇の舞台を支えるスゴ腕の方がたを紹介するシリーズ、第4回は劇団炎舞の投光(照明担当)橘みつおさんです。
劇団炎舞に裏方として入団して32年になるというみつおさんは、人呼んで「光の職人」。役者の動きにピタリ!と呼応する正確無比な照明は、お客様のみならず同業の間でも定評があり、劇団の魅力を引き出す大きな力になっています。
2月公演のオーエス劇場にて、終演後の休憩時間を拝借し、みつおさんならではの照明の工夫について伺いました。
1. 大衆演劇と劇団との出会い
きっかけは姫路のスナック
まずは入団のきっかけから教えていただけますか。以前SPICEのインタビューで、スナックのママさんに勧められてと言っておられましたね。
そう。その時、トンネル工事で、姫路の飯場に寝泊りしとって、たまの休みに行ったんです。姫路の駅前のね。そこのママさんに『今、健康ランドに可愛い男の子の女形がいるから観に行ったら』って教えてもらって…橘炎鷹座長のことなんやけどね。
それが劇団との出会いだったのですね。
大衆演劇なんて全然知らなかったし、観たこともなかったんやけど。その月に何度か観に行って、劇団のみんなと喋るようになって、当時座長やったボス(橘魅乃瑠・炎鷹座長の父)から良かったらやってみんかーって誘われて。役者は無理だけど裏方やったらやってみたいですって。
では初観劇から翌月にもう入団されたという
うん。面白そう、やってみたいなあって、特に気負いはなかったね。独り身だし、これまでも住み込みで働いたこともあったし、旅にも慣れていたから。
初めて大衆演劇お芝居やショーを観て、どういうところに惹かれましたか
やっぱりボスがね。あーかっこいいなあって。
2. 全くの独学。試行錯誤で機材もカスタム
照明担当になる
裏方の仕事は、具体的にどんなことから始められたのですか
はじめは幕引きとかいろいろ。着付けまではしてないけど、着物をたたんだりとかは、やってたね。それからすぐに照明担当になった。ボスのお母さんがやってたのを、引き継いでね。
昔の投光機は手元で操作出来るから、座ってでも出来たんだけど、今のは操作レバーが機械の上にあるでしょう。だから座っては出来ないんよ。
引継ぎの時、操作について教えてもらったりは
ううん、全然。最初から任されて、自分で考えてやってる。
では全く独学で!
このスポットライトはいつから使っておられるのですか
これはね、10年くらいかな?4台め。使いやすいよ。
色のフィルターがたくさんありますね
これだけ大きいと本当は1台に1人ずつ付くの。でも1人で2台ともやらないかんから、こう、スポットの真ん中に立ってね。操作するのにこっち(左側のスポットのフィルターの操作部)を内側に向けてる。外側にあったら手が届かないから。
よく見ると、フィルターの表面の形状が違います。
えっ? では、これはもともとこういう形ではなくて、みつおさんが入れ替えたのですか?
そう。だからこうして紐で縛っておかないとグラグラするの。こっち(右側)のやつはちゃんとレールに入ってるけど、こっち(左側)のは入ってない。
あとね、照明を外さず出来るのは『これ』があるから。これがあったら人間を外さない。これがなかったら、できない。
「これ」とは、操作レバーに延長線のようにくっつけられた針金のこと。
自分で勝手につけた(笑)
2台同時に動かすと、どちらか絶対外す。こっちを動かしてると、片方がグラグラするでしょ。でも、これ(針金)を持つと安定させられるから、絶対外さない。これがあるからちょっとはマシなのが見せられるかな。だからこれは俺の命(笑)。
このレバーにぶら下げられているのは
これは『重り』ね。機械がぬくもったら勝手にレバーが降りる時があるから、こうして重りをつけてるの。劇団の道具箱に入ってたのを適当に付けただけ(笑)。
本当はもう1本LEDのスポットがあるんやけど、ここでは電圧が足りないので2本だけ。いつもは3本でやってる。
次ページはさらに照明の工夫に迫ります!