旅芝居女優名鑑第3回藤乃かな(2/5)
第2章
2011年座長襲名。劇団を牽引する立場に
まさか座長になるとは思っていなかった
2011年4月、当時夫であった都京弥(みやこ きょうや)とともに座長に昇格することになった藤乃。
ある時兄から「お姉ちゃん(愛京花)も座長になったんだから、あんたもなったら」と言われたんです。まさか自分が座長になるなんて思っていなかったので、その時は全然実感が湧きませんでしたね。
博多新劇座で2日間、都京弥座長と2人で襲名披露公演をさせてもらいました。1日目は私が主役でお芝居「日本橋」を。2日目の京弥座長の日には、20人以上の座長さんに集まっていただいて、盛大にパーティーを開きました。今からちょうど10年前です。そんなこともあったっけ…(笑)
女座長・藤乃かなの
「考えさせる指導」
座長襲名から3年目、雑誌の取材を受けて「うちの劇団は女の子が多いので、この世界ではリスクもある」と、集客面での不安を語っていた藤乃(2014年7月号「花舞台」掲載)。当時の劇団座長としての思いは。
天乃ゆき、光乃みな、華乃せりな、星乃ななみ、京乃そら。
みんな、私を慕って入団してくれた子たちです。
ありがたいことですよね。あかの他人があれだけ私についてきてくれたのですから。 私もみんなのことが大好きでした。 可愛いですよ。わがままな私に何も言わずについてきてくれるんですから、感謝しかないです。
彼女たちには自由にさせてました。
お芝居でも必ず「あなたはどう思う?」って聞くようにしたんです。
「私はこういう性格だからこのようにやってる。あなたと私は性格も違うでしょ? あなただったらどうしたいと思う?」
考えて演じると、これまでと違うやり方になることもあります。
するとお客様から「なんでああしたの?」と聞かれます。その時に、ちゃんと答えられなきゃダメなんです。
考えてやるのと、なんとなくやるのは違いますよね。逆に言えば、答えられないことをやっちゃダメって。
そういう風に教えていたので、メンバーの長所を生かせたかな…と思います。
お芝居を考える時、この役だったらななみ、これならせりなに、とか。
みんなが考えて演じてくれるようになったので、本当に楽しかったですね。
メンバーを大事にしていると、楽屋の雰囲気もよくなるし、座員も増えてきます。柔らかい雰囲気…お客様が「また見たい」と思える雰囲気は、楽屋から醸し出されると思います。
女性ならではのお芝居を
藤乃のレパートリーには、大衆演劇の定番のお芝居の主人公を、男性から女性に設定を変えている演目があります。
「男十三夜」の主人公・新助をお新という女性に、「喧嘩屋五郎兵衛」では、主人公・五郎兵衛の兄である朝比奈を、姉として演じています。それはいつ、どんなきっかけから?
「男十三夜」は、舞台でひらめいたんです。
ぎふ葵劇場に乗った時、 遠方から来てくださったお客様のために、昼と夜同じじゃ申し訳ないなーって考えて、舞台挨拶をしている時にふと「女に変えても出来るじゃん?」と思いついて「夜は(主人公を)女でやりまーす」って言ったら、楽屋がざわつきましたね~(笑)。
「どうやって?」と言われましたが、人助けの動機は恋心だけじゃないですよね。
「喧嘩屋五郎兵衛」の兄を姉にする設定は、姉(愛京花)が演っていたので、それを真似させてもらいました。
女性のお客様が多いので、感情移入してもらいやすいみたいです。女性の気持ちはやっぱり女性が一番よくわかる。それでキュンとしてもらえたらいいなって。
実はほとんど思いつき!?
こういうアイデアは考えて出てくるのではなく、突然ひらめくんですよ。テンションが上がっている時に、どんどん湧いてくるんです。あとは周りが付き合ってくださるかどうかで(笑)
これからも藤乃かなが出る時は何かやらかすって思ってもらえると嬉しいですね~ふふふ。
(共演者は大変?!)
2017年7月末、劇団を退団。フリーの役者の道へ
2017年5月30日。尼崎遊楽館の千穐楽の舞台で、7月末で劇団都を退団すると発表した藤乃。
ファンの間で衝撃が走りました。
「信じられない」「辞めないで」ーーそんな声が上がるのを十分わかった上での決断だったと言います。
裏切られたと思った方もいるでしょう。もう謝るしかないです。私自身も本当に辛かった…それでも意志は変わりませんでした。
ただ、これだけは言わせてください。役者は死ぬまで辞めません!
求めていただく場所がある限り、どこまでも突っ走っていきます!