旅芝居女優名鑑第8回座長藤間美香~花組むらさき~(4/6)
第4章
ピンチと転機~自分には無理だ!を乗り越えるまで
「花組むらさき」の歩みは平坦ではありませんでした。2007年、二代目南條のぼるの急逝は劇団の柱を失ったも同然で、悲しみの中でもなんとか立ち上がらなければなりませんでした。
「のぼる先生が亡くなった時、どうして良いかわからなくなりました。のぼる先生が演っていた役を他の人が演じるのを見て、どうしても違うと思ってしまう自分がいました。でも、ある時から思ったんです、自分がのぼる先生みたいなお芝居を、出来るようになればいいんだって」
父亡き後、祖父である二代目南條すゝむ(現・音羽寿三郎)が「組長」として加入。座長には元座員である雪之丞が就任し、何とか危機を脱しました。
しかし2019年、劇団の頭・光はじめが急病のため入院することに…。
「はじめ兄さんが入院して、残ったメンバーでなんとか続けないといけない。そこで兄が考えたのは私を座長にすることでした。私が主役をやれば兄が敵役に回れるからと」
ピンチからの突然の座長就任に美香の心境は。
「絶対無理!って最初は思いました。でもやるしかない。
うまく出来なくて落ち込んだこともありました。
それまでは、どんなにしんどくても役者を辞めたいと思ったことはなかったのですが、出来ない自分が嫌で、初めて辞めたいと思いましたね」
そのプレッシャーを、どうやって乗り越えたのでしょうか。
「やっていくうちに開き直りました(笑)。出来なくてもやるしかないと思えるようになったんです。
座長という肩書をいただきましたが、披露公演はしてなくて。やろうかと言われましたが断りました(笑)。今もしたいとは思わないですね。
最初の3ヶ月くらいは『座長!』とハンチョウをかけられたら、笑っちゃうほど実感がなくて。はじめ兄さんが帰って来るまでの辛抱って思いながらやっていたんですけど(笑)、気づいたら二枚看板が定着して…」
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