旅芝居女優名鑑第8回座長藤間美香~花組むらさき~(5/6)
第5章
大衆演劇の女座長として。 いつか自分の力で客席をいっぱいに
男に生まれたらよかった
プレッシャーを乗り越え、この仕事しかないと思って歩んできた美香。 大衆演劇の世界では男性が前に出て、女性は裏方に回ることが多く、苦労すると言われています。そんな世界に生きてきて、男になりたいと思ったことは…
「基本、好きなようにさせてもらっているので、特に苦労したとは思わないですね。裏方仕事も、うちは人数が少ないのでみんなでやらないと回りませんし(笑)。
ただ、舞台に出ると『あなたは男?女?』と聞かれる。『女です』と答えると『じゃあいいわ』って言われたことは何度もありました。
女がこの仕事をしたらダメなん?って。
もちろん『女やから出せる魅力がある』と言ってくださる方もあります。
でもやっぱり、男だったら違う世界が見えたんじゃないかな。 例えば『弁天小僧』は男が演るから良いって、私の感覚では思ってしまうんです。だから本音を言えば男に生まれたかったですね」
演じる上で大切にしていることは立ち姿。
「もともと落ち着きがないんですよ、私(笑)。セリフを言う時に動いちゃって『立ち姿が大事なんだよ』と注意されました。 それからは立ち姿には気をつけてます。
気の抜けた立ち方をしないように。立役でも股旅の時は外向きガニ股で、丁稚の時はそこまで大袈裟にしない」
26歳、まだまだ続く役者道。独自の世界観のものから昔ながらのお芝居にも挑戦!
2020年の美香祭りで上演されたお芝居「喧嘩屋お藤」が、ファンの間で話題に。 「喧嘩屋五郎兵衛」の女性版で、顔に火傷のあとを持つ女侠客の苦悩を描いたオリジナルストーリーです。
「兄がアイデアをくれて、面白いかもって考えました。五郎兵衛が自分の顔のあざを刀に照らして見る場面があるでしょう。お藤は女なので化粧道具で、どうやっても消せないという仕草で見せました。
大衆演劇のお客様は女の人が多いので、お藤の気持ちに入りやすいと言っていただけました」
今後演ってみたいお芝居は?
「『沓掛時次郎』です。時次郎もお絹、どっちも演りたい(笑)。今の劇団の人数では出来ないんですけど、いつかやってみたい。誰にでもわかりやすくてとっつきやすい、昔ながらのお芝居が好きなんです。
昔のお芝居を守りつつ、若い人に伝える努力をしたい、と言う美香。
「座長になると教える立場になる。お弟子さん志望があれば、ぜひ来てもらいたいです。
教えるのは好きなんです。妹のことも兄が私に任せてくれてます。でも、彩姫は龍魔裟斗(南條隆とスーパー兄弟花形)様一筋(笑)。うちの兄妹、全然キャラがかぶらないんですよね」
26歳、役者としてまだまだ長い道のりが待っている美香。最後に、これからの夢を聞いてみました。
「いつか自分の力で、自分だけのお客様で客席いっぱいにしたいというのが夢ですね。『この劇団は美香ちゃんがいないとやっていけないね』って言われるくらいになりたいです(笑)」
次ページ:最終ページは藤間美香フォトコレクションです!