旅芝居女優名鑑第9回中村美嘉~劇団美山~(4/6)
第4章 叱る人がいないと劇団はまとまらない
舞台裏の司令塔
女優・中村美嘉にはもう1つ、重要な顔があります。それは劇団美山の楽屋の司令塔。司令塔と言っても、指示を出すわけではなく、率先して動くだけ。美嘉が動けば、それが全体の動きになっている…そんなイメージです。
私が総座長と副座長の着付け、葵ちゃん(中村葵)が座長の着付けを主に担当しています。
楽屋で怒る回数は私が一番多いかな。
楽屋では怒る人がいないとダメなんですよ。「はいはい」って言われるままにやってたら劇団はまとまりません。「出番やのにまだ?」「早しいや」「片付けて」とか言う役。以前は㐂代子先生がやっていた役を、今は私がやっているのかもしれません。
とにかく毎日が目まぐるしく、忙しい。特に劇団美山では新作狂言や凝った演出の公演が続きます。
うちでは毎月みんなが主役になる「○○祭り」が入るようになって、めちゃ忙しいんですけど、だいぶ慣れました。みんなも同じで、何とかやれるようになってます。
肩書きは要らない
やりたいようにやらせてもらえている今が一番楽しいと言う美嘉。
うちの劇団には過去を見ても女性が役職をやる文化がないんです。かと言って、女性が男性より下という訳ではないです。
これまでも女の子何人も入ってきてますけど、出られるなって判断されたら、個人舞踊も出ます。女性だから損だと思ったことは、うちの劇団にいる限りではないですね。
お風呂も1つしかなかったら男の子が先に入ったりしますけど、稽古の都合で女の子が先に入りますし、その辺りは臨機応変に。女だから我慢するというのはないです。
劇団を見て、入団したいと思ったら入れるものでしょうか。
はい。美山の場合は、㐂代子先生と総座長が面接します。最初は研修生として受け入れますが、最近はすぐ入団が多いですね。
女性の場合、主に女性座員、私や葵ちゃんが面倒を見ることになります。
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