旅芝居ささえびと第8回橘劇団マネージャー・鈴木優子さん(4/4)
もっと大衆演劇が知られるには
お客さんの間でも、敏腕マネのイメージで通っています。
どうでしょう、怖いマネージャーというイメージもあると思います(笑)。たとえば三代目のお見送りが長引いていると、私からお客さんに声を掛けて、切り上げていただくこともあります。役者さんはどうしても、お客さんには言いにくいですから、私がそこを引き受けて、悪者になるしかないです。
長く応援されているお客さんは、鈴木さんの気持ちも理解しているのでは。
そうですね、わかってくれていると思います。私のすることは、良くても悪くても、全部劇団の評価になるじゃないですか。橘劇団のマネージャーが、って言われることになります。だから、いつも恥ずかしくないように心掛けています。橘の名前を汚さないように。若手にもよく言うんですよ、『あなたたちが何かすると、あなたの名前じゃなくて、『橘は』って言われる、橘が上に付くんだよ』って。
皆さん、神妙に聞いてくれますか?
神妙に聞いてるかどうかは分からないですけど、うるさいですからね、私は(笑)。
今後の夢は。
大衆演劇って、まだまだ知られていないじゃないですか。もっと知られる方法はないかなと考えています。それと、やはり公演の費用が色々な面でかかっていますから、もう少し料金を上げた形になったほうがいいのかな、とも思います。
太一くんとの共演は、新しい方に知っていただくという狙いも、私の中にはあったんです。実際、昨年の共演をきっかけに、橘劇団面白いなと思って、来てくださる方もかなり増えました。
劇団、劇場からもそれぞれ、鈴木さんへのコメントを伺いました!
橘大五郎座長
「うちの自慢です」
表方と裏方、両方できるマネージャーって、そうそういないと思うんです。お客さん一人一人のことをよくわかっていて、このお客さんはどこの席が好きというのも把握しています。
楽屋では着付けもするし、炊事の手が足りないと炊事もやるし、もともと美容師さんだから頭のカットもするし。うちのスーパーマンです。自慢ですね。
膝の調子が悪くて、休んでいた時期があったんですが、手術して戻ってきてくれました。マネージャーがいない間は、他のメンバーが対応していたんですが、なかなか、鈴木さんがやっているところまでは到達できないです。
僕がゲストに行くときも、全部来てくれます。横浜の三吉演芸場は毎週月曜が休演日ですが、月4回の休演日のうち、3回が大阪へのゲストだった月があって。
僕ら演者は舞台を終えてから、ぎりぎりに新幹線で行きますけど、マネージャーは前日の昼くらいに車で出発して、横浜と大阪を往復して荷物を運んでくれました。それを月3回!すごくないですか?この人、マジで鉄人なんじゃないかと思いました。すごすぎるって(笑)。
池田呉服座 代表取締役社長・山﨑理史(りひと)さん
「心強い存在です」
鈴木さんは、お世辞抜きに業界一のマネージャーだと思います。どんなに細かいことでも、劇団について把握していないことは、ほぼなくて、何を聞いてもすぐ返ってきます。
また、鈴木さんがいてくれると、劇場側の仕事も非常にスムーズになるんです。たとえばゲストさんが決まっている日には、事前に「この日は何席取っておいて」とか、必要な席をきれいに整理してくれています。この業界が長いので、心強い存在です。
難しいこと、ダメなことを、曖昧にせず、はっきり言ってくれるのも助かりますね。「こうしたほうがいいですよ」とか、うちのスタッフに対しても提案をしてくれます。鈴木さんには、どの劇場さんも、すごく助かっていると思います。
鈴木さんの手元が可愛い!と思い、見せていただきました。
取材協力
池田呉服座
大阪府池田市栄本町6-15
取材後記
芝居の時間が押し、舞踊ショーは曲を大幅カット。着付けや小物の準備で、楽屋がにわかに慌ただしくなりました。終演後「ショーの時間は大変でしたね」と鈴木さんに声をかけると、「全然、平和でしたよ!今日ぐらいの状況はトラブルに入りません(笑)」。頼もしい~!!
劇団情報
橘劇団
劇団設立は昭和38年ごろ。総座長が父・初代橘菊太郎より受け継ぐ。 明るい人情劇、豪華なオリジナルショーで人気を集めている。 平成23年3月に三代目橘大五郎座長が襲名。 座員一同が結束し、お客様とともに盛り上げる舞台づくりを目指している。