舞台裏の匠たち第6回難波の舞台化粧品専門店「美壽屋(みすや)」「お客様に見えないところでも常に動いています」
役者の大切な顔を作る、化粧。「うちの化粧品は、ずっと美壽屋さんで買っています」。そんな風に、KANGEKIで取材をした役者さんの口から、よく名前が出てくるお店がありました。
舞台化粧品の専門店「美壽屋」は、大阪・難波の老舗です。
お店は御堂筋線「なんば」駅から徒歩6分。なんばグランド花月にほど近い、大阪市中央区難波にあります。
飲食店が並ぶ細い路を入っていくと…。
「美壽屋」と白文字で書かれた、小さな看板がかかっています。
看板商品の羽二重は1枚1枚手作り
この中で長く扱っている看板商品と言うと?
鬢付け油と羽二重でしょうか。
美壽屋の鬢付け油を愛用しているという役者さんの声も多く聞きます。
はい、長いこと作っている商品です。全国の取引しているお店や歌舞伎座にも、置いてもらっています。それから羽二重は生地の段階から、うちで作っているんですよ。
大きな布を私たちのところで、寸法に合わせて裁断して、縫ってくださるところに送ります。縫われたものが送られてきたものに、また私たちで油を塗ったりして、一つの商品が出来上がります。
家内製手工業ですね(笑)。私と家内と息子の3人で作っています。
羽二重にも種類があるのですね。
白い羽二重と青天(あおてん)が並んでいますが、この二つは、形は一緒です。
鬢付け油を付けて、青い色を付けると青天になります。色を付けるのは月代(さかやき)の部分。
役どころによって、青い色をもう少し濃くしたり、色を変えたりもします。
たとえばお客様が、老け役とかで青の色は要らない、だけど肌色が要るんだとおっしゃられたら、ザーッと全部肌色にしたり。
うちの店は、今は大衆演劇のお客様に、本当にたくさんご利用いただいていますが、もっとずーっとさかのぼると、歌舞伎関係のお客様が多かったんです。
美壽屋はどんな風に大衆演劇と関わるようになったのか?お店の歴史、そして大衆演劇とのご縁を伺いました。
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